vol.23 協奏の家
「無印良品の家」で暮らしている方を訪ねて奈良県生駒市へ。
イラストレーターの大塚いちおさんが、職住一体の「窓の家」に会いに行きました。

施工例 | 2017.10.17

ダイアログ1

だから、ここに建てました

02_img01

「窓の家」
H邸|奈良県、2016年3月竣工
延べ床面積: 125.08m²(37.83坪)
家族構成: 夫婦・息子

大塚いちおさんが会いにいった家

以前、Hさん夫妻は横浜の集合住宅で暮らしていて、そこで二人はウェブデザインとイラストの仕事をしていました。
暮らすこと=仕事することだった多忙な時間が数年続き、やがて、結婚して長男が誕生。規則正しい生活になった頃、震災後、子育ての環境を考え、ご主人の実家の奈良県へ転居。
部屋を借りて家族で暮らし始めると、インターネットがあれば奥様のデザインの仕事は継続できることがわかりました。
ソフビ人形のコレクターだったご主人は、仕事部屋の一角にソフビ人形制作の作業場を設け、製作者に。
この街を二人の仕事の拠点とする家づくりがスタートします。
敷地はHさんの亡祖父が手間暇かけた畑があった場所。
今も庭と畑をつくり、仕事の合間に二人で手入れしています。

「おじゃまします」
「どうぞおあがりください」

02_img02

02_img03

大塚さん
僕もかつては家で絵を描いていましたが、途中から住まいと仕事場を分けて、今に至っています。でも、この家はあらかじめ夫婦二人の仕事場を組み入れて計画されている。 自分にも、こういう選択肢もあったのかなと思うと興味深いですよ。

真っ白なキャンバスの家

大塚さん
これは僕の勝手な印象なんですが、無印良品の家で暮らす人は「デザイン好き」というイメージがあるんですよね。
「窓の家」は真っ白な家なので、暮らしながら家族の色に染めることができる。 家具が好きなら家具中心の暮らしができるし、好きな絵画を中心とした生活をつくることもできる。 暮らしの個性を出しやすいんだと思います。 だから住まい手に「デザイン好き」のイメージも感じられるのかもしれないですね。
大塚さん
まっさらのキャンバスを買った感じなんでしょうね。 もしかしたら10年後は、その時の、今とは違う想いや趣味が白い壁に投影される可能性もあるわけですよね。
そう。 そんな感じですね。大手ハウスメーカーの住宅は、既にキャンバスに絵がびっしり描かれていて、それを丸ごと買う感じでした。もっとシンプルでいいのにと……。
大塚さん
お仕着せでも、与えられたほうがラクチンな人もいますからね。
僕は、ハウスメーカーのモデルハウスは、どれもあまりに立派すぎて。 「家!」っていう威容に違和感を感じたんです。
ここも「家」ですけどね(笑)。 ただ、義父のアトリエのシンプルな建物が向かいにあって、その並びを想像すると、確かに、いわゆる「家!」的な家はないかな、と私も思いましたね。
あのアトリエは英国のマナーハウスのデザインを踏まえて建てたもので、「窓の家」も英国コッツウォルズの家がコンセプトと聞き、お互いの建物にも庭にもマッチすると思ったんですよ。

02_img04

仕事の気分転換は庭仕事で解決!

大塚さん
家族が過ごす時間が多いのはダイニングテーブルなのかな。 大きな窓が印象的ですね。
窓からの見える景色は一年半かけてつくりましたね。 ウッドフェンスを立てて、トネリコの木の隣には蔓バラがあったらいいよねーとか、二人で話し合いながら少しずつつくり込みました。
大塚さん
家全体もキャンバスのようだと思ったけど、窓もキャンバスなんだね。 ここが仕事場への扉かな。中を見せていただけますか。

02_img05

どうぞ。 扉を開けて正面は妻の仕事場で、右奥の土間は僕の仕事場です。ここでソフビ人形の原型をつくる粘土をこねてます。
大塚さん
おおおお、これは!! ソフビ人形のすごいコレクションが。 あー、この扉の敷居をまたぐ瞬間が二人の通勤時間なんですね。
確かにここを越えると気持ちは切り替わります。
そうですね。子どももここには入らないですしね。 二人の仕事場は間に壁はあるけど、扉は設けていないんですよ。 扉はなくても土間と床の高低差があるので、視界が少しずれていて、お互いが気にならず集中できます。 でも会話はできる。

02_img06

02_img07

大塚さん
家で仕事していて気分転換したいときはどうしているんですか。
だいたい庭か畑ですね。
僕はイライラしたときは雑草抜きで発散できるんですよ。
大塚さん
全部家で解決できちゃう。 うまくできたシステムだなぁ(笑)。
作付け面積はもっと増やせるけど、今くらいが仕事の合間に手入れするのにちょうどいい規模なんですよね。
大塚さん
バランスがいいですよね。 空間的にも、仕事のスペースを広くすると暮らしづらいし、かと言って、キッチンの片隅が仕事場ですというのは嫌ですよね。ここは、普通ならお風呂やバックヤードに使われそうな空間が、個々の確立されたワークプレイスにぴったりハマってる。
お風呂が2階になったことも結果的に良かったですね。 夜9時頃には1階の照明を消して、2階だけで入浴から就寝までの時間を過ごせますから。
大塚さん
1階を消灯すると、ここにシャッターはないけど、シャッターをガラガラー、本日閉店!って感じなのかな。
夫・妻
そう、そんな感じ(笑)。

02_img08

02_img09