vol.22 シェアする家
「無印良品の家」で暮らしている方を訪ねて冬の福岡県大野城市へ。
建築家の末光弘和さんが、
4世代7人が暮らす「木の家」に会いに行きました。

施工例 | 2017.1.31

ダイアログ1

だから、ここに建てました

「木の家」
W邸|福岡県、2016年6月竣工
延べ床面積: 124.21m²(37.56坪)
家族構成: 夫婦・両親・祖母・息子・娘・猫5匹

末光弘和さんが会いにいった家

賃貸住宅に暮らすWさん家族は、フィナンシャルプランナーの試算で、戸建住宅の新築が十分可能であることを知り、その資金計画をもとに、土地探しと家づくりが始まりました。二人が理想の敷地探しに苦心する中、お母さまから、古くなった実家の土地に新築しては、という提案があり祖母、両親、Wさん家族の多世代住宅の計画が始まります。
南面が開けた高台の敷地は、Wさん夫婦の馴染みの土地。
奥様とご両親には、卒寿を過ぎた祖母に、老後を温かい家で快適に暮らしてほしいという想いもありました。
お花が好きな祖母のために、ウェルカムガーデンが設えられ4世代7人が集合した家では、3世帯5匹のネコの同居もスタート。
時間と場所を使いこなし、限られた空間を豊かに暮らしています。

「こんにちは」
「どうぞお上がりください」

末光さん
二世帯住宅はお互いいろいろ大変、という話を聞くことが多いのですが、この家では4世代7人が普通に暮らしているんですよね。興味深いです。

暮らしが調和する一室空間

末光さん
外は寒いけれどリビングは快適ですね。
昼間は暖房使っていないんですよ。早朝でも気温18度以下には下がらないので、朝、1階の小さなオイルヒーターを点けるだけで家全体が温かくなります。
末光さん
高台なので前後に建物がなくて、南側の日当たりも確保されてますし、視線の抜けもいいですよね。
ここは、お隣に一軒あるだけなので、南側の大開口は道路に面しても、人目をほとんど気にすることがなくて。
末光さん
1階の仕切りは引き戸なので、開放すればぱっと空間が明るく広がる感じは、ご家族の雰囲気にも合っていますよね。
以前の実家は、両親と祖母の部屋が廊下で二分されたレイアウトでした。今はゆるやかにつながって、みんなの気配も感じられます。同じ空気を共有すると、自然に同じリズムで暮らすようになるので、それぞれの生活音も気にならなくなるんですよ。
末光さん
わかります。お互いが気遣わなくて済む状況をつくると、逆に無神経になって、他の家族に対して鈍感になりがちですから。

家族だけどシェアハウス

末光さん
中学生の長男は、学校から帰宅するとどこにいるんですか。
私が家にいる時間は、妻は自分のギャザリング(グリーン寄植え)のお店や講師の仕事で外出していることが多くて、必ずどこかは空いてますから、そこにいることが多いみたいです。家のどこかに必ず誰かがいる感じですよ。
末光さん
なるほど、時間帯で場をうまくシェアできているんだ。
ええ、私は物流の仕事で、勤務時間が夕方から2時頃までで、その関係で平日は1時間ほどずれて食事することが多く、例えば、ダイニングの椅子は、時間差で全員分なくても十分なんですよ。
末光さん
面白いですねー。家族だけどシェアハウスの感覚に近いですね。

最初から禁止事項ばかり決めるとダメだったと思うんですよ。個々のプライオリティは伝え、それを理解し合うことで、自然にルールができたのだと思います。例えば、私は深夜帰宅でもお風呂は入りたいので、そのへんは大目に見てもらったりとか。
末光さん
二世帯住宅は世帯を完全に分けると、些細な音が気に障ることもあるようですが、同じ空間を共有すると、お互いの気遣いも分かり合えるので、意外にうまくいくのかもしれませんね。
両親は、傷みが酷い実家を建て替えたくても、年齢を考えると難しかった。祖母は娘(ひ孫)が来ると嬉しそうで、できればその時間を増やしてあげたい。私たちは夫婦それぞれ仕事があり、子どもをどうケアするかが課題でした。そうしたそれぞれの状況が集まって、ひとつの「家」でうまく解決された感じですね。無印良品の家はあこがれでしたが、まさか今そこに暮らしてるとは。10年前の自分に「今はムジの家に住んでるよー」って教えてあげたいです(笑)

収納より居住空間を大切に

末光さん
持ち物は引っ越しのときに整理したんですか。
私たちはもともとあまりモノを持たないタイプでしたね。仕事をしているとモノの多さもストレスになりますからね。多少散らかっても、片付けが気にならないくらいの量が基本でした。この家ならその暮らしを続けられると思いました。
末光さん
うまく住まう人は収納量の大きさにこだわらないんですよね。洋服も上質でお気に入りのものを必要なだけ持っている。それが暮らし方の上手さにもつながってるように思います。

家を建てるときは普通は収納を重視しますが、私たちはそれに場所を割くより、居住空間を豊かにしたいと思ったんです。収納スペースは2階に集約し、全員の必要十分な量を決め、そこから溢れた時は、何が不要かを考えることは最初に話し合いました。
末光さん
高い家賃をモノのために払ってるような方もいますからね。モノ=人生みたいになって、執着しちゃう方も多いんですよ。
子どもの思い出の品は増えがちなので、箱を決めて、そこに収まるように厳選してますね。捨てなければならないモノは撮影して画像で保存したり。いろんな方法があると思いますよ。
末光さん
なるほど。やっぱり暮らし方上手なんですね。