café vivement dimanche 店主の堀内隆志さんが、静かな住宅街の真っ白な「木の家」に会いに行きました。
家に会いに | 2023.1.18
プロローグ
自分の家に暮らすということ
明確に暮らすということを意識したのは、住宅を購入してからだった。それまでは借家暮らしが長く、何となく家に対する想いは薄かったように思える。床のキズや壁の穴など、退居する時の後々のことを考えてしまい、自分たちの理想の家にするのには、躊躇してしまうことのほうが多かったからだ。趣味で集めていたコーヒーミルは増える一方で、収納スペースにも限界があり、部屋に溢れはじめたころに、今住んでいる家と出合ったのだ。
悩みに悩み大きな決断で購入を決めた。そして、一番はじめに手をつけたのがコーヒーミルを収納する大きな棚づくりだった。引っ越しが終わり、一台ずつ棚に納めた。気に入った道具を眺めながら飲むコーヒーは美味しいにきまっている。家で過ごす時間が、こんなにも豊かなものだと思わなかった。早く仕事を切り上げて帰宅したい。そう、ぼくは大好きな家に暮らしているのだから。
ダイアログ1
だから、ここに建てました
堀内隆志さんが会いにいった家
関西出身のご主人と千葉生まれの奥様は、千葉市内にある大手通信販売サイトでマーケティングと管理の仕事をしています。
以前は会社に近い賃貸住宅で暮らしていて、契約更新の時期を控え、二人が選んだ選択肢は、「次は持ち家で暮らす」ことでした。
当初は建売住宅を考えていましたが、ある街との出合いがきっかけになり、戸建て住宅の計画がスタートします。
郊外の美術館の帰りに偶然通りかかった住宅街は、緑が多く閑静で、しかも通勤にも便利。幼稚園から高校まですぐ近所に揃っていて、大きな公園もあり、将来の子育ての環境としても理想的でした。
北側が道路に面した宅地は、北側に建物を寄せて建てると、南側に広めの庭をとることができます。南面に大きな開口部がある、開放的な「木の家」は、二人が探した土地に理想的な家でした。
「おじゃましますね」
「どうぞ~」
「ニャ~ォ」
- 堀内さん
- 写真を拝見すると、若いご夫婦二人で「無印良品の家」の暮らしを楽しんでいる感じがしますよね。コーヒー好きだとうかがってたので、家でどんなふうにコーヒーを楽しんでいるのか気になりますね。
収納家具は目的に合わせて自作!
- 堀内さん
- あ、ネコ……。
- ネコ
- ニャ、ニャ~オン……フガーーーッ!!
- 夫
- すみません。お客さんに厳しいネコなんで。もう一匹は2階に隠れて出てこないんですけどね。
- ネコ
- ニャ~オン
- 堀内さん
- かわいいね。それにしても、庭が気持ちいいですね。
- 夫
- 庭の設いは、妻のあこがれのアンティークショップ&ガーディナーにお願いしたんですよ。隅っこに小屋も一緒につくってもらいました。
- 妻
- 「木の家」に合う物置小屋ってないですからね。外壁は「木の家」のメタルのイメージで、アンティーク好きなので扉だけは古いものを付けてもらいました。自転車や庭道具を入れてます。
- 堀内さん
- キッチンは同じサイズの容器がキレイに並んでますねー。
- 妻
- 食器や鍋を後ろの棚にしまう方が多いと思うんですが、私はカウンター下の収納に入れて、その代わり、調味料や材料を瓶に移し替えて後ろに並べ、ひと目で残りの量が分かるようにしてるんです。特に乾物は、引き出しにしまうと埋もれちゃいますよね。
- 堀内さん
- あー、そうですよね。忘れて同じもの買ったりして。
- 妻
- それで自分なりの工夫でこんなふうに……。ちなみにお皿は無印良品のファイルボックスを利用して、深めの引き出しに立てて収納してます。重ねると下のお皿、取り出しづらいですからね。
- 堀内さん
- 収納上手ですね~。この上のボックスは、ガラス容器の高さにピッタリ合うサイズを探したの?
- 妻
- これは彼がつくってくれました。さらに、ボックスの上にバンカーズボックスがぴったり入るように寸法を考えてもらって。
- 堀内さん
- ホントにピッタリ。既成品はそういうわけにいかないからね。
- 夫
- 建築学科卒業なんで、注文の寸法で図面を引いて、木材を発注して組み立てるだけです。ダイニングテーブルの天板やテレビのローボードも自作ですよ。休日に庭でつくってます。
- 妻
- 私はどちらかというと刺繍や編み物。このアンティークの扉の奥が私のアトリエです。収集癖があるのでいろいろと……(笑)。
- 夫
- 僕は必要以上にモノは持たないタイプですから正反対かな。
- 堀内さん
- 家の中に木工部と手芸部があって、奥様のコレクションの棚をご主人がつくる。なんかいいですね~。
コレクター派と持たない派
- 堀内さん
- 2階も明るくて広々として良い空間ですね。
- 夫
- このスペースは、将来は仕切って子供部屋にもできますから。僕はここから吹き抜け越しに眺める庭が好きなんですよ。
- 堀内さん
- いいですね。ところで、これはネコ用?(ニャ~オン)
- 夫
- 動画サイトでダンボール箱でネコの遊び場をつくった人の動画を見て自分でつくってみました。けっこう遊んでくれますよ。
- 堀内さん
- すごい。ホントに何でもつくっちゃうんですね。あ、データDJシステムもありますね。音楽はどんなジャンルが好きなの?
- 夫
- テックハウスです。堀内さんはブラジル音楽ですよね。僕はCDはデータ保存したら処分するので手元には残っていませんが。
- 堀内さん
- 確かにモノは少ないですもんね。ところで「無印良品の家」は前からご存知だったんですか?
- 夫
- はい。無印良品の愛用者ですからね~。
- 妻
- 私はインテリアが好きで、彼は建築や建物に興味があり、その接点に「無印良品の家」があった感じでしょうか。だから、家の配置や方角や建築は彼任せで、私はインテリア担当でした。
- 堀内さん
- ここでも、うまく住み分けできてたんだね(笑)。
- 妻
- はい! あの~、堀内さん、お願いが……。できればコーヒーを淹れているところを見せていただきたいのですが……。
- 堀内さん
- いいですよ! じゃあ準備しますか。
- 妻
- わーい!!!
- ネコ
- ニャオ~ン!!
ダイアログ2
趣味の部屋と土地のお話
奥様の趣味の部屋へ
- 堀内さん
- この扉はアンティークですか?
- 奥様
- はい。WEBで見つけたアンティークの扉でイギリス製です。サイズに合わせて枠だけつくってもらい、そこに自分たちではめ込みました。
- 堀内さん
- ここは奥様の趣味部屋なんですね。
- 奥様・ご主人
- そうです。
- 堀内さん
- じゃあ、この部屋には奥様のコレクション遍歴が……。
- ご主人
- ……あるんですか?
- 奥様
- はい。あります。
- 堀内さん
- ええええ、ご主人は関知してないんだ。中に入ってもいいですか?
- 奥様
- どうぞどうぞ。
- 堀内さん
- ああ、雰囲気ありますね。インテリアに木箱をうまく使ってますね。
- 奥様
- 昔は甘~い感じのデザインが好きだったけど、最近は大人っぽいデザインにシフトしていて、少しずつ切り替えたいんですが、今は過渡期なのでいろんなテイストがごちゃまぜです。
- 堀内さん
- 切り替えるタイミングは難しいよね。
- ご主人
- この収納も私がつくりました。
- 堀内さん
- このチェストをですか?
- ご主人
- はい。
- 堀内さん
- こんなのつくれちゃうんですね~。ひょっとしてこの棚も?
- 奥様
- そうです。マスキングテープも集めているので、テープの高さに合わせてもらって。
- ご主人
- はい、言われたサイズで図面を引いて……。
- 奥様
- あと下は、小さなサイズの本が入るように……。
- ご主人
- サイズが決まっているとつくりやすいんですよ。そのサイズを基準にして全体のバランスを考えて。
- 堀内さん
- ホントにスゴイとしか言えないです。ところで、ご夫婦で集めるモノとか違うんですか。
- ご主人
- 僕は収集癖はないんですよ。あまりモノを置かないタイプです。
- 堀内さん
- ああ、そういえば、そうおっしゃってましたね。
- ご主人
- ええ、そのせめぎ合いが……。最初はこの部屋の中は自由にしていいことにしていたのですが、少しず~つリビングのほうにも……。
- 奥様
- ……。
- 堀内さん
- あ、じゃあ話題を変えて……今、製作中の棚は?
- ご主人
- 今はないですね。調味料入れの棚をつくって一段落です。何か新しい発注はありますか?
- 奥様
- 今のところ大丈夫です!
- 堀内さん
- この窓から見えるリビングの景色もいいですね。奥様はここでどんなふうに過ごすんですか?
- 奥様
- たいてい何かつくってます。刺繍をしたり、編み物したり、アクセサリーをつくったり。手先を動かすのが好きなんですよ。
- 堀内さん
- ご夫婦で手が動くのスゴいですね。
- ご主人
- 僕は木工くらいしかできないですけど。
- 堀内さん
- いやいや、相当なもんですよ。
ここに家を建てるまで
- 堀内さん
- 家にはお友だちもたくさん来るんじゃないですか?
- ご主人
- 多いですね。この季節は月に2回くらい、休日は昼からバーベキューで、夜まで飲んで、ってパターンが多いです。
- 堀内さん
- そうですか。同僚で30代で家を建てる方って多いんですか?
- 奥様
- ええ、いますね、最近……。
- 堀内さん
- でも、家を建てるって、けっこうな決断だったでしょ。
- ご主人
- 勢いでしたね。賃貸の契約更新が迫っていて、同じところに住むか、引っ越すか、というときに、じゃあ家を買おう、と。最初は建売で探していたんですが、長く暮らすなら納得のいく家にしようと、結果的に家づくりを選びました。
- 堀内さん
- 無印良品の家はもともとご存知だったんですよね。
- ご主人
- はい。「木の家」の原型になった住宅シリーズにも興味がありましたから。
- 堀内さん
- この土地は……?
- ご主人
- まず、道路が北側の土地を探しました。建物を北側にできるだけ寄せて建てて、南側に庭のスペースを確保する建物配置が良いと思ったので。今は南側に建物がないから開放感がありますが、仮に家が建っても、これだけセットバックさせていれば十分、日差しは入ると思うんですよ。「木の家」には理想的な土地だと思います。道路は南側が良いと考えたこともありましたが、やっぱり、前面道路に面して大開口は抵抗がありました。
この住宅街は、近所にある美術館の帰りにたまたま散策していたときに見つけて、大きな公園があって気持ちよくて、静かで、会社からもほどよい距離で、駅も近いし……。 - 奥様
- 新しい住宅街なので、外から来て、ここに家を建てる若い家族が多いと思ったんですよ。地域のしがらみみたいなものもなくて、私たちも共働きですからしっかりご近所付き合いできる自信もなかったので、それぞれ適度な距離感があっても、自分の家だけ浮かない環境を求めていたので、まさにピッタリでした。都心まで電車で一本ですし。
- 堀内さん
- 家づくりは二人がそれぞれ建築担当とインテリア担当だったんですよね。
- ご主人
- 土地の方角や配置は、彼女の意見を聞きながら僕なりにアドバイスして決めましたね。
- 堀内さん
- 家具は奥様が決めたんですか?
- ご主人
- 妻は情報収集が好きなので、彼女が持ってきた家具や照明器具の情報を見て二人で相談する感じでしたね。以前は賃貸だったので、家具をつくっても置く場所がなかったけど、今は置く場所があるし、庭で木工もできますから。それはホントに良かったと思います。やっぱり自分がつくったものは手放し難いですよ。
- 堀内さん
- 家はいいですよね。僕の家は嫁さんがほとんど管理をしている状態なので、僕は家で焙煎しているだけなんですが、それでも今の家を入手してから「暮らし」を意識するようになりました。以前はお店が自分の時間の大部分を過ごす場所で、それに疑問は感じなかったけど、引っ越してから、今では家がずっといたい場所になった。人も暮らしも、環境や家によって変わっていくんだなーと実感しています。賃貸で暮らしていたころはそこまで考えなかったですからね。当時は、家は寝に帰る感じでしたが、今は早く帰りたいと思うようになりましたよ。
- ご主人・奥様・ネコ
- わかります!
ダイアログ3
キッチンへ
午後のコーヒーブレイク
- 堀内さん
- ではお湯を……。キッチンはIHなんですね。
- 奥様
- IHクッキングヒーターは料理した後さっと掃除できるし、キッチンクロスを敷いて大物の鍋を乾かしたり。カウンターの延長として使えるので便利です。
- 堀内さん
- うん、清潔に保てそう。スッキリしてていいですよね。
- 奥様
- 火力も十分ですよ。
- 堀内さん
- こちらがコーヒー関係のコーナーかな。けっこう揃えてますね。
- 奥様
- ええ、収集癖が……。
- 堀内さん
- あ、僕のお店のオリジナルカラーのポットもありますね~。
- 奥様
- はい、愛用しています。
- 堀内さん
- あ、ドリッパーセットもそうですね~。ご愛用ありがとうございます(笑) いや、うれしいですよ。メジャーは友人がつくっているコーヒーメジャーハウスですね。プジョーのミルはかなりレアモノ!
- 奥様
- これはオークションで買いました! ずっと探していたんですよ。
- 堀内さん
- いいですね~。1952年から56年の間しか生産されなかったディアブロというモデルです。
- 奥様
- 観賞用です(笑)
- 堀内さん
- ミルのコレクションは止まらないんですよ。普段、眺めてるだけでいいですもんね。ケメックスのコーヒーメーカーもフォルムがキレイですよね。あ、そうそう。コーヒーが好きだとうかがってたので、プレゼントに本を持ってきました。ちょっと待ってくださいね。
- 奥様
- え?
- 堀内さん
- はい! フランスのミルのコレクターがつくった本です。パリの友人がコレクターの家を訪ねて買ってきてくれたんですよ。お時間あるときに開いてみてください。
- 奥様
- あ、ありがとうございます!!
- ご主人
- ああ、また収集癖が……。
- 堀内さん
- ご主人に新しい棚の発注があるかもしれないですね(笑)
- 奥様
- そろそろ怒られちゃいますよ~。
- 堀内さん
- はははは。
- 奥様
- コーヒー飲むようになったのは結婚してからなんですよ。ちょっとミーハーなところがあって、コーヒーブームのときに何となく気になって、いろいろ調べてみたら、道具も淹れ方もさまざまで、どんどん楽しくなってきちゃって、それで今に至ってる感じです。
今では、家で飲み物と言えばコーヒーですね。一日3回くらいドリップしてます。 - ご主人
- 食後やおやつのときにコーヒーを出してくれますよ。
- 奥様
- まだ初心者なので、実は淹れ方も正しいのかどうか自信がなくて……。堀内さんはお店でどれくらいドリップするんですか?
- 堀内さん
- お店ではだいたい100回くらいかな。最近は、何か気配を感じると、隠れて携帯で動画を撮影している人がいたり……。
- 奥様・ご主人
- ええええええええ。
- 堀内さん
- ラテアートの撮影ならわかるんですが、ドリップを撮影してもね~。あ、お湯が沸きましたね。器具は何で落としますか?
- 奥様
- じゃあいつものドリッパーセットで。コーヒーはどれくらい用意しましょうか。
- 堀内さん
- 30グラムにしましょう。ああ、ちゃんと計量してるんですね。ボクは家では目分量なんで。
- ウィ~ン
- ご主人
- 一回ごとに計量なんて、そこまでこだわってるの、今初めて知りましたよ。いつもは、ここに座ってると出てくるので……。
- 堀内さん
- ね。ちゃんとしてますよ。あー、やっぱりもう少し多めにしましょうか。あと5グラム追加で。
- 奥様
- はい。
- ウィ~ン
- 奥様
- けっこうモリモリになりましたが。
- 堀内さん
- 大丈夫ですよ。準備できましたね~。では……。
- 奥様・ご主人
- ……。
- 奥様
- 動画撮る人の気持がわかりますね。買ってきたばかりの豆なのでけっこう膨らむと思います。
- 堀内さん
- そうですか。あーいいですね。
- 奥様
- ……。
- ご主人
- ……。
- ネコ
- ……。
- 奥様
- うわ~、こんな距離で観ることができるなんて……。やっぱり違います。自分はけっこうドボドボ入れちゃってたかも。
- 堀内さん
- はい!
- 奥様・ご主人
- ありがとうございます!
- (コーヒーブレイク)
- 奥様・ご主人
- うわ~、おいしい!!!
キッチン収納のコツ
- 堀内さん
- うん、このドリッパーセットを使うなら35グラムが良いかもしれないですね。
- 奥様・ご主人
- ごちそうさまでした!
- 堀内さん
- ご主人はいつもはどこにいることが多いんですか。
- ご主人
- いつもはソファかダイニングですね。堀内さんは家でキッチンに立つことありますか?
- 堀内さん
- 私は家では料理は嫁さん任せなんで。
- ご主人
- 僕もほぼお任せですね~。
- 堀内さん
- キッチンは奥様のお城みたいなもんですもんね。
それにしても見事な収納ですよね。ボックスに並んでいるガラス容器は……。
- 奥様
- お料理とお菓子用の材料です。薄力粉、強力粉、それにお砂糖も何種類か。
- 堀内さん
- ボックスはガラス容器のサイズに合わせて、ご主人がつくったとうかがいましたが、他には?
- 奥様
- 左の調味料やスパイスを並べてる棚もそうですね。下はジャーサラダ用の容器のストックで、奥行きは隙間にピッタリ入るサイズでお願いして、棚位置は上下できるようにしてもらい、瓶や容器のサイズに合わせて調節してます。
- 堀内さん
- ホントにキレイに収まっていて気持ちいいですよ。
- 奥様
- とにかく奥にしまい込むことがないように心がけています。普段使いの食材や調理器具はすぐに手が届く場所に。たまにしか使わないオーブンの天板はその裏側に。引き出しの中の食材も、開いて上から見たときにすぐわかるように蓋にテプラのラベルを貼って整理しているんです。
- 堀内さん
- お皿も重ねずに、深い引き出しに書類ボックスを並べて、取り出しやすいように立てて収納しているって言ってましたもんね。
- 奥様
- いろいろ工夫してます!
エピローグ(編集後記)
美味しいコーヒーをいただきながら
梅雨真っ只中の6月末。この時期の取材は常に天気予報をチェックしながら、やきもきして当日を迎えるのですが、この日は快晴とはいかないまでも雨には降られず、時折本格的な夏の到来を感じるような日差しが覗く中での取材となりました。
今回訪問していただいた堀内さんは、多くのファンを持つ有名なカフェのオーナー。コーヒー・カフェ好きの皆さんならよくご存じなのではないでしょうか。
ロケハンにお伺いした際に、コーヒーがお好きなOさんから、ぜひ堀内さんとお話ししてみたいというリクエストがあり実現したものです。
実は私も堀内さんのカフェには、鎌倉に訪れた際にはよく立ち寄っていましたので、何か不思議な縁を感じる取材となりました。
これまでさまざまな「暮らしのかたち」をご紹介してきましたが、今回のOさんのお宅もまた少しテイストの違う素敵な暮らしぶりだったように思います。
建築を学んでいたご主人が制作した収納家具は、プロ顔負けの完成度。ピカピカの新品ではなく、少し使い込んで程よくこなれた感じの仕上がりが、Oさんのお宅の心地よさを創り出しているように思います。
ちょっとヴィンテージ感漂うOさんの「木の家」。無印良品の家も、時代を越えて価値のあるものでありたいと考えています。
「木の家」は発売されて10年が経過していますが、その基本デザインを変えることなく今に至ります。人の暮らしのかたちはそれぞれであり、時代とともに変化していくものですが、家はその暮らしのかたちを受け入れるシンプルな器であるという発想が、さまざまなライフスタイルを包容することを可能にしているのだと思います。
Oさんのお宅もまた、こういう暮らしがしたいという意思がひしひしと伝わってきます。でもそれを受け止めているのは「木の家」の基本形に変わりはないということに、懐の深さを感じるのです。
取材の最後に、堀内さんにドリップしていただいたコーヒーをいただくことができたのですが、本当に美味しかったです。きれいに整えられた庭を眺めてくつろぐひとときは、何とも贅沢な時間でした。
Oさんも取材後、鎌倉の堀内さんのお店に何度か足を運ばれたとか。こうして新しいつながりがまた一つできたことにも感謝です。(E,K)
「無印良品の家」に寄せて | café vivement dimanche 店主 堀内隆志さん
リラックスできる家
ぼくはカフェというお客さんを迎える仕事をしているせいか、あまり迎えられるという逆の立場に馴れていません。実は伺うまで、かなり緊張していたのです。千葉の閑静な住宅街のなかに、白い外観のOさんのお宅がありました。シンプルなのだけど、さりげない主張がある家。玄関からリビングに入って、南側の大きな窓と吹き抜けの「木の家」特有の気持ちよさが、まずぼくの緊張感を解きほぐしてくれました。そして何よりニコニコしているOさんご夫妻と、時折現れるネコちゃんの存在が、和ませてくれました。奥さまの好きなモノへのこだわりと収集、そうして集められたものを収納する家具をヴィンテージ風に作ってしまうご主人の器用さ。お二人の役割分担が完璧で、本当に素敵な暮らしぶりでした。庭先でコーヒーを淹れながら感じたのは、わが家にいるときのようなリラックスした気持ち。好きなモノに囲まれて暮らしているという空気感が、自分の家のような居心地の良さを感じさせてくれたのでしょうね。[2015.10]