「無印良品の家」に寄せて | 落語家 柳家花緑さん

夫婦の挑戦とエネルギー

まるで天下でも取ったかの様な景色! 岡山県倉敷市の山間に、今回のお宅はありました。天守閣にお住まいの様だなぁと、外観と景観を眺めました。「夜景もいいんですよ!」と奥方と殿様…いや奥様と旦那様にお声を掛けて頂き家の中へ。

床の木と白い壁が気持ち良く調和した無印良品の家に、僕は一発で惚れ込みました。
でも、どんなに素敵な家でも住む人が素敵に暮らさなくては、その輝きはキープ出来ない。
先月から住んでいるのかと思う程 綺麗に暮らしている、そして殆ど物が無い。
伺えば2年お住まいで、奥様が出来るだけ物を増やさない「引き算」の達人であることが解りました。普通に暮らしていれば、物はどんどん増えてしまう。頂き物や、買いたい洋服に本もある、インテリアにこんな物を置きたいと「足し算」をしたくなる。そう思って生きてきた私でも、この頃は断捨離は大事な事だと掃除を良くやっている方ですが、いやいや自分なんてまだまだ前座レベル。暮らしの真打ち!を目の当たりにして心の底から感心しました。

「引き算」が出来るとは、家の中にある“ 物たち ”に対して ちゃんと想いを寄せていることが解る。「これはちゃんといる物だ、とっておこう、ここに置いておこう。」と決めて、そこに置く。なんとなくそこにいる物たちが一つもない状態。家の中で“ 物たちの家 ”が決まっていて、全てにご自分達の気が届いている感じ。これはやはり物が多くては中々コントロール出来ないと思います。いやそれが、一部屋なら兎も角 家一軒丸ごとですから!

インテリアは全て奥様が担当していると言っても過言じゃない。勿論、旦那様も口を出す。でも話し合った結果 却下されることも多いとか。例えば、壁に水槽を埋め込んで金魚を眺めたいと。サッパリとしたイケメン顔のご主人からは想像もつかない独創的な提案だ。出来れば家の壁360度全てに水槽を入れて欲しい。と言ったそうです。しかも真顔で。
今、水槽が一つも無いところを見ると、奥様が勝者であることが解ります。僕もなぜか安堵しました。

ご結婚10年近くになるお二人、とても仲良く暮らしているご様子は、一つのベットに二つの枕があることで解りますが、互いの趣味を尊重しているところにも現れます。旦那様のご趣味の部屋には長渕剛グッズ&クワガタ&カブトムシがびっしり壁一面に飾られております。これは旦那様の生きる力。まさにその一部屋はエネルギーに満ち溢れておりました。奥様の方のエネルギーは家のインテリア全般です。久し振りに弾くピアノも聞かせて頂きました!

そんなふうに愉しく暮らすご夫婦の心の裏に僕は「挑戦」という言葉も浮かびました。理想な暮らしへの探究心があればこそ、ご夫婦にとってのお城が輝きを増すのでしょう。[2014.11]