エピローグ(編集後記)

足し算は得意、引き算は苦手

倉敷の市街地から車で15分ほど走ると、小高い山を造成して区画されたと思われる住宅地が見えてきます。その一番南側の眺めの良い場所にFさんの「窓の家」はあります。
Fさんの家に向かう途中の幹線道路からは、白い三角屋根の家が一団となった住宅の中にスッと建っているのがわかります。
Fさんは仕事帰りの車の中から、遠くに見える我が家に灯りが点いているのを確認してお互いが帰宅しているかどうかを確かめるのだとか。

そんな素晴らしいロケーションに建つ「窓の家」でのシンプルな暮らしを皆様はどうご覧になっていただいたでしょうか。
柳家花緑さんは建築やデザインの分野とのコラボレーションも多く、お客様との軽妙なトークから色々と話題を引き出していただきました。

今回のタイトルは「引き算の家」。
対話の中で花緑さんはスッキリとした暮らしを愛でていくためには「引き算」が必要なんですねとお話しされていました。

家の中にあるモノとの関係を考えるときに、これまでおうかがいしたお宅で暮らす方々に共通していることは、ご自身の中でこれ以上モノを増やしてしまうと心地良くなくなるという基準値のようなものを持っていらっしゃるということです。

だから暮らしの中でその値を超えたときの「引き算」の仕方がとても重要になるのでしょう。
モノは生活している以上自然に増えていくことが普通だと思います。だからこそ積極的に「引き算」していくことが心地よい空間を創り出すためのコツなのかもしれません。
ただFさんの場合は「引き算」と言ってもストイックさのようなものはなく、むしろ自分が心地良いと思う空間を仕上げるための過程を楽しんでいるという感じでしょうか。

取材のたびにこんなにスッキリとした暮らしが実現できたら素敵なんだけどと強く思うのですが、かく言う私もモノ減らしが大の苦手。足し算は得意でも引き算はどうも上手くできない(笑)。
取材のたびに身軽に暮らすためのヒントをたくさんもらっているはずなのですが……。
Fさんのようにそのモノとの繋がりが自分にとってどの程度濃いものなのか、一度しっかりと見直すということができれば、意外とモノは減らせるのかもしれませんね。(E.K)