ダイアログ3

アンティークと児童書と社交ダンス

本棚を眺めながら

穂村さん
蔵書の趣味もオシャレだね。児童書と絵本が多いのかな。江戸川乱歩に松本大洋にタンタンの冒険。本はどちらの趣味なんですか?
これは夫の趣味ですね。私は絵本と荒俣宏とナショナルジオグラフィック派です。

穂村さん
そっか、絵本持ってくればよかった。ぼくも絵本の仕事してるんで。
私、穂村さんの本持ってます。読みましたよ~。
穂村さん
あ、ありがとうございます。棚にディスプレイされているアンティークはどちらの趣味なの?
これは二人の趣味です。二人ともアンティークのお店や蚤の市が好きなんですよ。
穂村さん
やっぱり夫婦で趣味が同じなんだ。厳選されてる感じが伝わってきます。しかし、家の中がキレイだなー。いつもこんな感じなの?
まわりから見られても平気なように片付けてます。というか、ちゃんと片付けてから出かけるようになりました。
穂村さん
普通の家にごちゃごちゃあるはずのモノはどこにあるんですか。
納戸にしまってます。(ガラガラ~)ここには洋服と季節ものを収納していまして……。
ここにあるのは私の筋トレ用具ですね。
穂村さん
筋トレ! ぼくも学生の頃やってたんですよ。ベンチプレスばっかりでしたが。
おお、いいですよね~ベンチプレス。私もベンチプレスばかりです。何キロ上げました?
穂村さん
108キロかな。
ええええ、それスゴい。私は70キロくらいですよ。静かな雰囲気な方なのでベンチプレスやってるところ想像できないですよ。
穂村さん
そういう人がわりとハマるんですね。自分を変えたい人。例えば、これを上げれば「もっと外交的な人間に変われる妄想」みたいなものがあったりして。修行僧みたいに黙々とね。でも、この床でベンチプレスは無理でしょ。
いやいや、ぜんぜん大丈夫ですよ。

穂村さん
この部屋の雰囲気にベンチプレスのベンチがあると、そこだけマッチョな感じになるじゃないですか。かわいいアンティークが並ぶ部屋で、児童書やタンタンを読みながらひたすらウエイト上げてるなんて、面白いけど、ちょっと危険なイメージですよ~(笑)
ハードボイルドですね(笑)
穂村さん
ところでご主人はいま、何歳なんですか?
私は31歳です。
穂村さん
まだ若いですよね。わりとそれくらいの年齢で家建てる人って多いですか?
うーん、確かに早いねとは言われましたが、同僚の中では20代で建てる人は増えてますよ。

夜の家で社交ダンスを踊る

穂村さん
新築から1年半でしたっけ。
そうです。最初に比べると柱の色が少し濃くなってきたかな。
穂村さん
この床も年月を経て味わいが増すんでしょうね。インテリアはいまの状態でほぼ完成形に見えますけど、これから何かプランはあるんですか?
庭ですね。もう少し面白くしたいです。
人生長いので庭は時間をかけてつくっていこうかなって思ってます。
あとは壁面緑化してみたいんですよね~。壁一面に植物が植えられてるのありますよね。
穂村さん
あれって意図してやったわけじゃなくて、自然にそうなったんじゃないの。ツタの呪いみたいな……。
夫・妻
あははははは。
外壁じゃなくて室内でもできるみたいなので、ここでも不可能じゃないはず。インテリアの雑誌で特集もやってました。えーと、どの本だっけな~。
穂村さん
うーん、平成のカップルは違うなー。情報にたどり着くまで速いよね。
あ、これこれ。これがパリのパトリック・ブランさんという作家の家ですね。
穂村さん
うわー、この写真だけ見ると家だかなんだかわからないですねー。たしかにカッコいいなと思うけど、これは日本でやるのは危険じゃない? 湿気もスゴいし虫だらけになるよ。今度は家の中でいろんな鳴き声が聞こえるようになっちゃうよ~。
でもできたら面白そうですよー
穂村さん
そっか、壮大な夢ですね。えーと、ご主人の夢がまあとりあえず壁面緑化ということで、奥様はどんなプランがあるんですか。
そこにアンティークの作業台がありますが、これはミシンを置くことを考えて買ったんですよ。いつかはアトリエっぽくしたいなと思っています。以前は縫い物や編み物で自分の洋服なんかもつくってましたから。ただ最近は新しい趣味が忙しくて時間がないんですよね。
穂村さん
え、どんな趣味なんですか?
妻・夫
社交ダンスです!
穂村さん
一緒にやってるの?
妻・夫
はいっ。
穂村さん
家の中でも踊るんですか? もう完全に映画の世界じゃないですか。夜の家で社交ダンスを踊る二人が、外から……。
まあ、練習はしますけれど、スペースが足りないんで、温かくなったら公園の芝生とか。
穂村さん
公園で社交ダンスってちょっと勇気が必要ですね。太極拳ならともかく。
いやいや、ほんのちょっとの勇気ですよ。
社交ダンスを習ってみたら、スゴく楽しくて、今ではいちばんの趣味になってしまって、縫い物の暇もなくなってしまいました。
穂村さん
そんなに楽しいんですか。
夫・妻
楽しいですよ!
始める以前に比べると初対面の方と話をすることもスムーズになりました。
穂村さん
え、関係あるの?
ありますね。レッスンは男性と女性が並んでローテーションで踊るのですが、初対面の人とも踊るので、恥ずかしがっていられないんですよね。
穂村さん
そうなんだ……。で、どちらが始めたんですか?
ええ、私が。まえからやってみたかったんですよ。
アメリカのダンスオーディション番組を観てて、彼が「ダンスを始めようかな」って言うので、それなら私もやる! と。でも今さらヒップホップでもないし、それで初心者でもできそうなのが社交ダンスで。
穂村さん
うーん、やっぱり仲が良いね。一緒に過ごして15年だもんな。波長が合うんだね。お互い「これだけは無理」ってのはないんだね。ぜんぜん違う世界で生きる夫婦もいますけどね。
そうなんですか?
穂村さん
ええ。おなじ家に住んでて、連絡はメールとか。
何かお互いの不満とかないんですか? いや別に無理に答えなくてもいいんですけど。
不満というわけじゃないんですが、夫の祖母と私はとても仲が良いので、H家の男はこういうところがダメよね~とか、よく家事をしながら話してましたけどね。
穂村さん
ああ、もう遺伝子のせいになっちゃうのね。
うふふ。でも似てるんですよ~。祖父、父、夫……。
穂村さん
じゃあ、もう未来がだいたい予測できちゃうじゃない。
そうなんですー(笑)。
……。
穂村さん
えーと、話題を変えて……、家の中の二人の定位置ってどこなんですか?
私はソファやダイニングテーブルです。
私はダイニングの椅子に座ってることが多いです。
穂村さん
やっぱり一緒なんだな~。