vol.15 練糸の家
「無印良品の家」で暮らしている方を訪ねて群馬の織都桐生へ。
テキスタイルデザイナーの須藤玲子さんが、
英国と日本をつなぐ「窓の家」に会いに行きました。

施工例 | 2014.3.4

ダイアログ3

3歳の長女がお家をご案内

須藤さん
Lちゃん、はい、プレゼント。ハッピークリスマス!!(取材は12月でした)。
長女(3歳)
ありがとうございます。
須藤さん
どういたしまして。

須藤さんに、Lのお家をご紹介してくれる?
須藤さん
じゃあまずお二階から行こうか。
長女
階段を上がって……。
この階段の途中に座ると窓の外が眺められるんだよね。
須藤さん
うわーステキね、ここは誰の部屋?
長女
わたしの部屋~。わたしのお洋服も見て~。
須藤さん
あ、それは開けなくても平気よ~。どうもありがとう。
あらバルコニーがあるのね。
ここに洗濯物を干しています。
長女
ここはパパとママの部屋。窓から保育園が見えるの。
須藤さん
あら、Lちゃんが通っている保育園なのね。お向かいのお家の屋根の色が現代美術の平面構成の絵画みたいに見えるわね。
そんなステキすぎる言葉、初めてですよ。
確かに窓をフレームにしていろんなパターンが見えてきますね。
長女
次は下に行きま~す(ぱたぱた)
須藤さん
はい、じゃあ降りましょうね。
長女
こっち~!!!
須藤さん
あら、ピアノの上にあるこれな~んだ(ハワイのマリッジライセンスです)。
長女
ん~わからない。
須藤さん
ハワイって書いてあるわよ。これはパパとママの結婚証明書よ。今度、何かの記念に連れて行ってもらわないとね。
長女
でも、お金かかるでしょ……。
夫・妻
うわ~現実的。
須藤さん
毎日少しずつお手伝いしてお小遣いを貯金するっていうのはどう?
長女
う~ん

須藤さん
はい(笑)。じゃあLちゃんが家の中でいちばん好きな場所はどこ? いっちばん好きなところよ。
長女
わたしはキッチンが好きなの。ここで卵割ったりするの。
須藤さん
あら、お手伝いするんだ。ステキなキッチンよね。私もね、このパパがデザインしたカーテンの、布と光が響き合っているところが好きよ。窓の光もキレイだけれどカウンターにも新しい光が映って、二回も楽しめるでしょ。どう思う?
長女
いいですね~。
須藤さん
あら、共感してもらったわ(笑)。
じゃあ次はパパとママが好きな場所を聞いてみようか。
長女
じゃあママから。ママどこが好き?
全部好きよ。
長女
だめ~、一つだけです。
うーん、明るいベッドルームかな。
長女
じゃあ次はパパ。
休日に庭を眺めるピアノの前の椅子と、あとはダイニングテーブル。
須藤さん
どう、Lちゃんも納得? 家族3人それぞれで好きな場所があるのね。お家っていいわね。
長女
うん。うふふ。
須藤さん
明るいベッドルームがいいって言ってましたけど、遮光の設えがなかったですよね。
それがですね~ないんですよね~
須藤さん
太陽とともに目覚める感じなのね。
原始的な目覚め方ですね。
須藤さん
それがいいと思うの。閉ざされた感じがしなくて。
本当は長女の部屋が私たちの寝室で、今のベッドルームが子ども部屋として計画したんですよ。将来、二部屋に仕切ることができるように、入り口は両方から引戸で閉められるようになっていて、そのための柱もあらかじめつくってもらいました。
須藤さん
寝室には天井から洋服を掛けるレールが吊られていましたね。
あれは最初から取り付ける位置を決めて天井裏に補強が入っています。将来を考えて長女が寝ている部屋にも取り付けられるように、あそこ以外にも何ヶ所か補強が入っています。

家と家のまわりの景観も大切なデザインです

須藤さん
Lちゃんもお気に入りのこのキッチン、デザインは特注ですか?
いえ、「窓の家」の標準仕様のキッチンですよ。
須藤さん
食器はどこにしまってるの。
シンク下の引出し収納の中です(がらがら~)。
あ~、白い食器が多いですね。
須藤さん
鍋はステンレスで統一しているのね。こういうキッチン用品も二人で選ぶのかしら。
勝手に買うということはほとんどないですね。私が買い求める場合も、彼の好みは分かっているので……。
須藤さん
好みも似ているのよね、きっと。
自然に似たのだと思います。私は彼ほどこだわりはないほうなので、それでバランスがうまくとれているのかも。
須藤さん
う~ん。どうすればここまでシンプルにキレイに暮らせるのかしら。やっぱり毎日の積み重ねが大事で、身の回りのことに気を配って暮らさないと、こんな生活は実現できないと思うの。
ぼくの職場はいろいろなテキスタイルの質感や色が溢れていているので、家は何もない空間にしたいと思ったんですね。スイッチのオン・オフが欲しかったのかな。
須藤さん
でも、お家で使っているクッションカバーやカーテンはディテールが凝っていて、静かだけどとても表情豊かな雰囲気をつくりあげていると思いますよ。
このクッションは会社の技術で新しい製品開発を企画した時に、まず正直に自分が欲しいモノをつくりたいと思い、試作したプロトタイプを実際に家で使って確かめる目的もありました。
須藤さん
テクスチュアが引き立つセレクションで、一つ一つが装飾的なのにそれを感じさせないところがこの家のインテリアの魅力だと思います。こういう、素材を選ぶKさんの視点は一般の方々の暮らしの参考になるんじゃないかしら。
使ってストレスにならい触り心地や使いやすさは第一のポイントだと思うんですが、クッションは気持ち良く座ることだけを考えるのではなくて、ソファに置いた時に空間が引き締まるような緊張感も求めます。そのバランスには気をつけていますね。
須藤さん
なるほど……。
インテリアは月日が経つ中で少しずつ変えていければいいかなと思っています。そのための箱として家があって、この家がインテリアと暮らしを引き立ててくれると思うんですよ。
白い壁には「汚れが目立たないかな~」って不安になる人はいると思うんですが、そのへんは意外に無頓着でも平気でしたね。それに、汚れるのではなくて、全体的に経年で少しずつくすんでいくのは良いと思うんですよ。いつまでも新品の真っ白なままよりも、そのほうが良いかなと思います。
須藤さん
エントランスの外構では地面のコンクリート板もレイアウトされて、フチとキメが完璧に構成されていましたね。ちゃんとパターンデザインされていた。
窓の配置を含め外観はいろいろ考えました。
須藤さん
窓から見える針葉樹の植栽もステキね。庭と道路の仕切りに植えられているのね。
もともとは通りからリビングの窓への目隠しを考えて植えたんですが、昼間は外のほうが明るいので、窓ガラスに反射して家の中はあまり見えないんですよね。
須藤さん
家を囲む環境までデザインしているのが伝わってきますね。家の周囲にも塀や金網のフェンスはなくて、隣地の境界につくられた支柱とロープの仕切りもいいわね。そのうちこれを真似する人がでてくるんじゃないかしら。
セキュリティ的には良くないのかもしれませんが、無骨な金網のフェンスなどは極力立てたくなかったんですよ。ぼくはロンドンで暮らしていた頃に改めて知ったのは、自分の敷地内だから何をやっても許されるわけではないということ。例えば家に取り付けるアンテナの位置が規制されていたり、通りから見えるところに洗濯物を干してはいけないとか、暮らすためのいろいろなルールがありました。庭の芝もキレイに整えられていて、個々が街への作法を守るよう務めることで街並全体が美しくなる。それが今も習慣化しているのだと思います。
この家も屋根にはテレビのアンテナが付いていますが、あの野暮ったいデザインが、この家のデザインや景観をスポイルしてるんじゃないかと気になりますよ。無印良品にはテレビのアンテナもつくってほしいです(笑)
須藤さん
そういうところをちゃんと気遣っていくと、日本の街並ももっとキレイになるのにね。
夫・妻
そうですね~。
須藤さん
ところで、あのロープの仕切りのアイデアはどこから?
ステンレスの支柱にチェーンが架かっているバリアは、街中では駐車場や店舗でよく見かけると思うんですが、素材を変えると住宅にも合うかも、と思ったのが最初でしたね。
須藤さん
そういう工夫がいいですね。庭の芝も自分で刈っているの?
夏はあっという間に伸びるので、朝早く起きて芝刈りをやってます。人の家の芝を刈るのは作業になるけど、自分の家の芝なら楽しみながらできますよ。
好きなのよね。
住宅のケアは自分のできる範囲でいろいろ楽しんでますよ。愛情込めて……。
須藤さん
ああ、家に帰ったら掃除しなきゃって気持ちになってきました(笑)。