vol.14 創る家
「無印良品の家」で暮らしている方を訪ねて京都・宇治へ。
トラフ建築設計事務所の二人が、プチ幸せを楽しむ「木の家」に会いに行きました。

施工例 | 2013.12.13

「無印良品の家」に寄せて | トラフ建築設計事務所 鈴野浩一さん 禿真 哉さん

生活の一部になった家づくり

無印良品の家を訪問するのは今回が初めてでした。この適度に規格化された家は、標準化住宅の分野でとても理想的な解答を与えていると感じました。建築は未だにというか、自動車生産のように効率優先の完全なファブリケーションで完結するわけではなく、現場での人的な作業が大半を占めます。無印良品の家は両者のあいだの、少し緩めの標準化商品だと言えるのだと思います。それが今回の訪問で感じた、肩肘を張らない箱としての構造体の中立性と、住まい方を適度に自由にするバランスの良さに通じていると思いました。

「木の家」のコンセプト・デザインの元となっている住宅シリーズに、学生のころから興味を持っていました。興味というより、現代の住宅の目指すべき指標として理想的なプロジェクトだと思っていました。構造や設備を合理的に追及し、無駄なものをそぎ落としたシンプルな箱の空間で、「住宅として最低限の性能を最小限の物質で達成すること」という命題を進化、蓄積させていくコンセプトと、今回の訪問を照らし合わせながら、両者の共通性を再認識することになりました。

まず箱があって、と考え始めると、中はすごく自由に考えることができます。居間、寝室、玄関など、すでに分類済みの項目の編成から始めるのではなく、もっと用途的には無分類の、高さのある場所、地面に近い場所、寝転がれる場所、などが、大体のゾーンは決まっていても、具体的な使い方はむしろ後付け的に決まっていく。それは住まい方を見ていてよりはっきりと認識できました。たとえば、夜に夫婦二人でテラスでコーヒーを飲むのが日課になったそうです。そのわずかな時間のために小さなテラスの周りには自前の照明や、置物が設えられていました。そういった特定の場所で発見的に見出された日課の話を聞いていると、建築はそのきっかけになっているのだと分かりました。無分類でなんとなく想定だけできている、余白のある場所の集積でこの家はできていたのです。

だからといって、けっして無計画だったというわけではないのですが、そういった決めつけ過ぎない計画の末にできたこの家はもはや、週末の趣味のための遊び道具にもなっています。聞けば生活がまるっきり変わったといい、暇さえあれば、ホームセンターや家具屋さんに出向き、リビングでとんかちを叩いているそうです。図らずも、週末の”家いじり”みたいなものが定着した家族を見ていると、良い意味で未完成の状態で明け渡すような計画、というのもあるのではないかと思いました。[2013.12]