vol.13 春秋の家
「無印良品の家」で暮らしている方を訪ねて奈良?平群谷へ。
映画監督の河瀨直美さんが、大きな桜の樹に寄り添う「窓の家」に会いに行きました。

施工例 | 2013.7.9

ダイアログ1

だから、ここに建てました

「窓の家」
I 邸|奈良県、2012年5月竣工
延べ床面積: 90.50m²(27.37坪)
家族構成: 夫婦・娘

河瀨直美さんが会いにいった家

長女の誕生をきっかけに「新居」を考えるようになったIさん。
当初は戸建住宅だけではなく、古い集合住宅のリノベーションも選択肢に。
でも大事だったのは「住まい方」の形ではなく、自分たちが「暮らしたい」のはどんな場所なのか、でした。
Iさん夫婦は夢に怯むことなく、自分たちが根差す大地を求めさまざまな景色に身を置き、場を吟味し続けたのです。
やがてインターネットの情報で、大きな桜の木がある川沿いの土地に辿りつきます。
眼下には万葉歌人が詠んだ紅葉の川。
40年以上前に造成された古い住宅地は、地域の人々の手で閑静で、落ち着いた環境が保たれていました。
この街の一員になろう。季節に移ろう風景と暮らしたい。
選ばれた景色と暮らす「窓の家」が、静かに根を下ろしました。

「こんにちは~」
「お待ちしてました」

河瀨さん
私もよく無印良品は使っているので、そのシンプルさやセンスで、どんな住まいを提案しているのか興味がありました。若い夫婦のシンプルな暮らしぶりを拝見するのも楽しみです。

豊かな土地に最小限の家を置く

河瀨さん
家づくりにはどのくらいの時間をかけたんですか。
土地探しからだと2年くらいですね。当時は新築だけではなくいろんなカタチを考えていました。でも、やがて土地のほうが大事だと思うようになって、自分たちが共感できる「雰囲気」を求めて家族でクルマで巡りました。
だからまず風景ありきで土地を探しましたね。どんな素敵な家でも、周囲の環境が悪くてカーテンを閉めて暮らすのはちょっと違うかなって。
河瀨さん
多くの人は家への憧れはあるけど、理想を求めて探し歩くってなかなかできないですよ。
そうかもしれないですね。

河瀨さん
実際に家を建ててみて、Iさんの人生にとっての家の役割って何だと思いました?
ぼくは大学で建築を学び、これからも建築を勉強しながら生きていくつもりなので、家について自分の答えを一つは欲しかった。だから、今の私たちにとっての最小限の住まいをつくってみたかったんです。家は土地に根差すものだと思うので、土地が良ければ上の器は最小限でいいという考え方でした。
河瀨さん
その最小限の家として「無印良品の家」に出会った……。
ええ、外観から細部までプレーンで清廉なイメージが自分たちが思い描く家に近かったんです。住宅展示場の住宅は私たちには過剰な印象が否めませんでした。
こだわりがなくて、さらっと「いいね」と思える家ですし、「こう暮らしなさい」と強要されないのも気に入ったところです。

手づくりが楽しくなる住まい

河瀨さん
ここに並んでるのがKちゃん(長女)のお洋服。かわいいですね~。手づくりなんですか。
この子が春から幼稚園に行くようになって、その時に幼稚園グッズをつくり始めてから針仕事に火が着いた感じです。
ホントにつくりまくってるもんなぁ。最近は。
河瀨さん
女の子だとつくりがいがありますよね。シンプルでかわいくて、既製品より愛着がわいていいですよね。ね、Kちゃん
長女
うふふ
河瀨さん
さっきいただいたお菓子も手づくりでしたよね。
この家で暮らしてから手づくりの才能が開花した感じですかね。
そういう気分にさせてくれる家なんですよね。何かつくりたいな~って。マンション暮らしの頃はこんな気分にならなかったですし。
河瀨さん
奥さんをやる気にさせる家なんだ。これはスゴイことです。
開放感と環境は重要ですね。

河瀨さん
今日、お家を拝見して感心したのは、とてもシンプルな暮らしぶりですね。生活していると余計なモノがどんどん家に増えてきて、使わないのについしまいこみがちですが、でもこんなふうに簡素で丁寧な生活を送ると、本当に大事なものをまっすぐ、見つけやすくなるんじゃないかと思いました。
ぼくと妻が出会ったのは大学時代の京都の町家の調査だったんですよ。町家って柱と梁だけで余計なものがないんですね。その簡素な空間を、毎日キレイに掃除して季節ごとに必要なモノだけで暮らしている。そんな潔い暮らしに出会った体験が今も二人に息づいてるんだと思います。妻が整理整頓して、モノの居場所を決めてくれるので、自分は出したモノを戻すだけでいい。
河瀨さん
毎日の積み重ねって大事。昔の人たちが暮らしの中でちゃんとやっていたことなんですけどね。高度経済成長に育った私たちの世代は、モノをたくさん持つことが豊かさでしたが、モノに溢れガチャガチャした暮らしは、大人は何とか冷静さを保てても、子どもには耐え難いものだと思うんですよ。若い二人がこんなシンプルな暮らしを実践していることにちょっと感動しました。