vol.12 丘の家
「無印良品の家」で暮らしている方を訪ねて多摩丘陵の文教都市へ。
アーティストの鈴木康広さんが、眺めの良い「木の家」に会いに行きました。

施工例 | 2013.5.7

ダイアログ2

第一条件は立地

先ずはサプライズから

鈴木さん
今日は風が強いのかな。風が吹き抜ける音が聞こえますね。
この街はいつも風が吹いていて、地元の作家が地域のために描いた風の絵本があるくらいですからね。

鈴木さん
この風の音はぼくには懐かしい音なんです。育ったのは浜松なので、秋から春まで遠州のからっ風が吹いていて、家の中ではいつもこの風の音がしていたんですよ。懐かしいなぁ。
窓を少し開けると、開き加減でぴゅ~ぴゅ~笛のような音が鳴りますよね。その音で子どもも遊んでます。
鈴木さん
いいですね、それ……。って大人がこっちで子どもの話してるのに、彼はDVDに夢中ですよ。何を観てるの?
長男
(6歳)
007 「カジノ・ロワイヤル。」
鈴木さん
おー、大人だな。
映画館でも一緒に観たんだよね。
長男
……(集中)。
鈴木さん
え、えーと、今日は「木の家」を訪ねるということでサプライズのお土産があります。ぼくは名前が鈴木なので半分くらい木かなと自分のこと思ってて……。
夫・妻
半分くらい木って……(笑)
鈴木さん
で、最近ますますそう思うようになっていて。これ「木のコマ」なんですが……。
夫・妻
あ……。
鈴木さん
実はこのコマ、持ってるんですよ。
鈴木さん
え。
持ってます。
鈴木さん
え。
鈴木さんの作品とは知らずにネットで見て買っていたんですよ。
鈴木さん
ひ~、びっくりしました。こっちがサプライズ(笑)
作家本人からいただけるのはスゴくうれしいです。ありがとうございます。
鈴木さん
これ、回すと逆さに立って、葉が茂った木のように見える三個セットの逆立ちゴマで、コマ一個は「木」で、二つで「林」、三つで「森」なんです。
夫・妻
なるほど。
鈴木さん
2セットだとモリモリになっちゃいますね。
夫・妻
モリモリ(笑)
鈴木さん
一人で一個ずつ回しながら、3本同時に「木」を立てるのは難しいんですよ。上手に三つ回せても油断するとすぐに止まってしまう。「森」を維持するにはコマを回し続けなければならない。ぼくたちの時間感覚で捉えると木は動かずに立っているだけのように見えますが、地球の時間のスケールで見ると、木の一生はこのコマが回転して止まる束の間のこと。回し続けないと森は維持できないんです。
夫・妻
なるほどね。そういう意味があったんだ。
鈴木さん
まあ、今言ったことは後付なんですけどね。ふふふ……。
夫・妻
ええええええええ、そんな……。
鈴木さん
後付なのに最初からそう考えていたように、何かきっかけが掴めると、いろんな物事が地球の仕組みとつながっていくんですよ。コマって昔からの遊びの道具ですが、それはぼくたちが理解できる範囲のさまざまな意味につながっていく。コマってスゴイね~。
やっぱり深いじゃないですか。
鈴木さん
この木のコマの延長に「木の家」もあるのかな。
夫・妻
おお、なんだかそんな気がしてきました。
鈴木さん
ここはいわば丘の頂上ですよね。最寄り駅から坂道を10分くらい歩いて、これだけの丘の上まで辿り着けるのは新鮮でした。これ以上、坂道が長いと疲れちゃうし絶妙な距離感です。
そうそう。ああ、帰ってきたな~というくらいの道程ですね。家を建てるときは誰もが夢を描くと思うんですよ。私は「大草原の小さな家」のような、何もしばられるものがない自由に建っている家を目指していたんですね。大草原じゃないけれどそんな家は建てられたかな。
近所を散歩している方からも「ここは眺めがいいでしょう」って声をかけられます。

この土地に出会ったときのこと

鈴木さん
最初にこの敷地に来たのはどんな日だったんですか。
ちょうど、よく晴れた日でやっぱり風が吹いていました。
鈴木さん
季節はいつ頃でしたか。
う~ん、今頃かな。土地を探してこのへんを歩いていたんですよ。起伏がある土地なので自分がどこを歩いていのかわからなくなって、迷い込んだような感じでしたね。
販売前の宅地がこのへんにあるという漠然とした情報があって、家族で探索に来たんですよね。たぶんこのへんじゃないかな~と。
もともとは大きなお屋敷があった土地で、それが三つに分筆されて更地になっていたんです。ここに決める前にいくつか見ていた土地があるんですが、いずれも日当たりと景色が良くて、公園が近くにあることを条件に探していたんですよね。
鈴木さん
なるほど。
実は新婚旅行でスイスに行ったときに、レマン湖のほとりのル・コルビュジエの「小さな家」に、旅の途中でたまたまたどり着いて、そこで建築家志望の若者とたまたまお会いしまして……。
鈴木さん
ぼくもル・コルビュジエのサヴォア邸を探してさまよったことありました。
ええ、その方はサヴォア邸も訪ねていて、感想を尋ねると「いや~建物もいいけど、どこも良い場所を選んで建ててるんですよね~」と。ああ、家は建物だけじゃなくて立地も大きなポイントなんだなと、そのときに思ったんですよ。だから「こんな家を建てたいな」というより「どういうところに建てたいか」が大切でした。
鈴木さん
なるほど。いろいろあって、ここにたどり着いたわけですね。ところで最初にこの敷地を見たのは何時頃でしたか。なんだか細かくてすみません(笑)。
いえいえ。たしか昼過ぎだったと思います。
長男が一段下の敷地のほうで石ころで遊んでいました。晴天で暖かくて。
あとはこの土地一面に日が当たっていて日陰がなかったんです。土地の形もほぼ真四角で、ここなら「大草原の小さな家」が建てられるかも、ってそのときに思ったんですよ。
鈴木さん
ホントに丘の上にいる感じですよね。玄関を入ると窓の外に普段とは違う風景が広がって、稜線にぐるりと囲まれて眼下にぽっかりと大きな器がハマっている感じです。見下ろすだけの視点じゃない。
玄関を開けると景色がパッと広がることは狙いましたね。普通は玄関ホールでワンクッションあると思うんですが。
渡辺篤史さんなら「いやいやいや、ヌケがいいですね~」ってコメントするところかもね。
鈴木さん
ひょっとして、ぼくもそういうリアクション求められてました?(笑)
夫・妻
あははははは。