vol.10 桜の家
「無印良品の家」で暮らす人を訪ねて愛知県西尾市へ。
フードディレクターの野村友里さんが、
笑顔とごちそうの「窓の家」に会いに行きました。

施工例 | 2012.9.4

「無印良品の家」に寄せて | フードディレクター 野村友里さん

気づきのある暮らし。

そもそも家の定義とは、自然の中に壁や屋根を用いて場を囲う事で、外敵から身を守り、安心して、眠り、集う場所、というものである。
同じ屋根の下で寝食を共にする事により、絆を固め、生涯の大半を過ごすのが家というもの。
たとえ都会にあったとしても、出来る限り、自然を感じながら、自然の中で暮らしていると意識したいものである。
空の表情、木々の変化、時間を追うごとに変わる光の流れ。?窓からの景色は、そこに暮らす人々に人間らしさを毎日そっと気づかせてくれるだろう。
今回訪問させていただいたKさんの家の中を流れる空気は、開放的だった。
リビングに置かれたソファーに腰をかける。少し上に目線を上げると、高い吹き抜けの白壁に切り抜かれた、美しい四角形の大きな窓枠が視界に飛びこんできた。ゆっくりと雲が流れていく。少しだけ開かれた窓からは、外の喧噪と一緒に家の中へ風が吹き込まれてくる。
「静止することのない、命ある完璧な絵画」そう私には思えた。

ご主人は言う
「毎日、何かが変化する」
大きな窓から見える景色に勝るものはなく、テレビを観る事はもちろん置く事さえもやめ、星空には明るすぎる照明も外してしまった、という。

心よりのおもてなしで迎え入れてくださった、Kさんご夫婦。
たくさんのご馳走がテーブルに並び、窓からサンサンと入る太陽の光に料理もグラスも気持ちよさそうに光っている。

オープンキッチンに立ち、料理をする奥様の背景は、壁一面の窓越しに見える緑の庭と木々。
“キッチンが毎日の舞台”と言いたくなる程に、活き活きと楽しげに料理をする、奥様。

私は、いつの間にか時間を忘れ、ゆっくりと流れる景色を楽しんでいる。

壁に収まった奥様特注のワインセラーから、選りすぐりのワインが取りだされる。
参った。
ここはもう、ご夫妻のおもてなしに
甘えてしまおうではないか。
お子さんを交え、さらに夫婦の絆と笑いは増える。
人との交わりを大切に、自然を感じながら楽しんでいる暮らしぶりはとても豊かで、人間らしい。

家の作りはシンプルに。
そこでの過ごし方、暮し方は、味わい深く濃く楽しむ。
帰り際に「よかったら泊まっていってください。」
とおっしゃってくださった。

帰りたくなるような家。
そこに暮す人によって、住まいは、ますます生きてくる。
神社の前に、白く浮かび上がり凛と佇むその家で、今日もきっと同じ空の下、Kさん一家は楽しく暮らしているに違いない。[2012.9]