ダイアログ1

だから、ここに建てました

「窓の家」
O邸|栃木県、 2010年6月竣工
延べ床面積: 85.00m²(25.71坪)
家族構成: 夫婦・息子2人

長谷川豪さんが会いにいった家

賃貸住宅で暮らしていたOさん家族が、 近所で売り出された宅地を見にいって、購入したのは7年前。 南面に開けた角地で、敷地の隅にはピラカンサの小さな木が 赤い実をつけていました。 ここで、建築家に家を設計してもらうことが夢だったという奥様。 家づくりを焦ることなく、6年が過ぎた頃、 「無印良品」に買い物に行った時、「窓の家」のポスターを見て、 余計なものがなく、スッキリとした外観にピンとくるものが。 それは奥様が理想とするライフスタイルと共鳴した瞬間でした。 必要以上のモノを持たず、身軽に暮らす家の実現へ。 長く快適に暮らせる、長期優良住宅の認定も受けています。

「こんにちは~」
「遠くまで、ありがとうございます」

長谷川さん
住宅の設計で、収納スペースの見きわめは難問のひとつです。
今の暮らしから想定できるモノの量に、さらにどれくらいプラスするか、施主とは打ち合せを重ねるのですが、どうしても多めになりがちです。Oさんのライフスタイルは、モノも収納もとても少ないと聞いていたので、その辺に興味がありますね。

最初は2階のクロゼットを拝見

長谷川さん
え、このスペース、普通なら女性一人分ですよ。そこに家族全員とはスゴい。で、こちらが……、えー、ここ、子供部屋ですか。あはははは。もう、笑っちゃうくらい片付いていますね。
奥様
私がこうだから、子供も整頓好きに育ったのかしら。
長谷川さん
うーん、ぼくが子供の頃なんて家のなかはぐちゃぐちゃでしたけどね。暮らしているとモノは増えるじゃないですか。ぼくが設計する住宅の施主は、だいたい同世代で子育て中の家族が多いんですが、子供が成長するにしたがって、どれくらいモノが増えるか、施主はなかなか想像できないんですよ。それにしても、このモノの量と収納量の少なさは驚きですよね。
奥様
子供がある程度大きくなってから建てたから、収納量を見きわめしやすかった面もありますけどね。
長谷川さん
なるほど。確かにリビングに子供のモノがあふれるような年齢じゃないですもんね。1年半暮らしてこのままなら、将来もずっとこのままなんでしょう。モノに溢れた生活は考えられないですよ。あの~、キッチンの収納も拝見していいですか?

では、1階のキッチンへどうぞ。

長谷川さん
え(絶句)、え……え、え、これだけ? スゴいですね。単身者の食器の量です。調理器具も少ないですね。キッチンのショールームみたいじゃないですか。素見しにきたカップルが「でもさ、実際はこうはいかないよね。暮らすとモノ増えちゃうし~」みたいな会話する、そんな雰囲気ですよ。
奥様
いやいや、わが家ではこれで十分。設計途中で「収納をもう少し広くしたほうがいいんじゃないですか」と提案されましたが、これで十分です、必要ありません、と。
長谷川さん
収納はとりあえず多めになるものですが、「必要ない」とキッパリ言えるのは、自分の暮らしのサイズが分かっているからですね。
奥様
収納を増やすとモノも自然に増えちゃうと思うんですよ。必要十分の収納で暮らすと、余計なモノは増えないです。
長谷川さん
説得力がありますね。ぼくは仕事柄、建築家が設計した新築の家を見る機会が多いのですが、二つのタイプがあるんですよ。一つは、建築家が考えた設計コンセプトが分からないくらいモノに凌駕された家。もう一つは建築家が考えたコンセプトに合わせてがんばって暮らしているようなタイプ。でも、この家は、生活が建築を抑え込むのではなく、その逆でもない。住む人と住宅が近い。共鳴しているというか、身の丈という言葉が思い出されますね。

奥様
私の場合、普通に暮らして自然にこうなったという感じです。例えば、住宅メーカーの標準プランを見ると、誰もが必要以上の収納を求めているように見えました。もともと、住宅メーカーの建てる家はあまり興味はなかったのですが。
長谷川さん
それはどうして?
奥様
ありきたりのプランが多いからつまらないですよ。
長谷川さん
なるほど。人とは違う家を求めていたんですね。
奥様
考え方が違うと求めるものも違ってきますよね。
長谷川さん
そうですね、家を建てるときこそ「自分らしさは何か」を、時間をかけて考えられるタイミングなのに、それをありきたりのプランに閉じ込めるのはもったいない。
奥様
家は建ててから何十年も暮らすわけですから、私は、その時の感覚や流行で決めるのではなく、自分が本当に求めているものを考えて、覚悟を決めて建てたいと思ったんです。
長谷川さん
この家にはそういう感じがありますね。私たちはこう暮らしていく、こう生きていくというカタチを決めなければならない時がある。家のプランを決めることはその覚悟を決めることでもあるんですよね。