プロローグ

家って誰のものだろう。

家って誰のものだろう?住人のものだと答えるかもしれない。でも家には、住人だけじゃなくて、多くのモノたちも住んでいる。家具、家電、食器、服、おもちゃ……数えているうちに、こうしたモノたちの家にも見えてくるではないか。いや、そうしたモノたちもまた住人の所有物だから、家もモノも住人のものだと答えるかもしれない。その通りかもしれないけど、「所有」ってそれほど確かなものなのだろうか。
家と住人とモノが対等な関係になっている家は、他の人から見ても、とても心地良い。住人の支配欲によって家やモノが凌駕されずに、家やモノに対する住人の美意識や謙虚さに支えられている家。そういう家を見ると、僕はハッとする。情報やモノに満たされた現代、もっともシンプルで、もっとも難しいのは、自分にとって本当に必要な家、本当に必要なモノと、等身大で暮らすということだと思う。

長谷川豪|はせがわごう
建築家。1977年埼玉県生まれ。東京工業大学大学院修了後、
西沢大良建築設計事務所を経て、2005年長谷川豪建築設計事務所設立。
現在同代表。東京工業大学ほか非常勤講師。
家の中心に大きなテーブルを設けた「桜台の住宅」、各住戸に個性的な
テラスを配した集合住宅「練馬のアパートメント」など、住み手の想像力を
刺激する仕掛けを住宅に取り入れたデザインで注目されている。
初の作品集「Go Hasegawa Works」(TOTO出版)を刊行。