プロローグ

ル・コルビュジエと、同時代の二人の建築家。

工業化が進んだ西欧では、20世紀に入ると、王侯貴族に代わり、中産階級や労働者が社会の中心を担うようになりました。都市の新しい生活者のため、当時の近代建築家たちは、歴史的な装飾や様式に縛られた建築ではなく、合理的な空間の豊かさに価値を見出した「住宅」を模索し始めます。その中心人物が建築家ル・コルビュジエでした。
東京・上野公園内の「国立西洋美術館」は、ル・コルビュジエが日本で手掛けた唯一の建築です。プロジェクトには彼のパリのアトリエで働いた経験がある、3人の日本人建築家が協力していました。その一人、坂倉準三の事務所でデザインされ、1960年にグッドデザイン賞を受賞した「低座イス」を、Mさん家族は1階リビングで愛用しています。デザインを担当したのは長大作氏でした。
一方、岡部憲明さんは、パリの「ポンピドゥ・センター」のプロジェクトに参加していた頃、建築家シャルロット・ペリアンと出会います。ペリアンはル・コルビュジエとの恊働でも知られ、彼の建築のオリジナル家具やキッチンの多くは、ペリアンが担当していたことで知られています。

*写真の座椅子は辻村久信さんがデザインした「KAN」です。 無印良品では「KAN」、文中の「低座イス」のお取り扱いはありません。
*岡部さんが語るペリアンの話は、後日談としてこのサイト内で公開いたしますので、お楽しみに。

[今回会いにいったひと]
岡部憲明|おかべのりあき

建築家、神戸芸術工科大学教授。
1947年生まれ。早稲田大学工学部卒業。73年フランス政府給費研修生として渡仏。「ポンピドゥ・センター」設計チームを経て、建築家レンゾ・ピアノと恊働。「関西国際空港旅客ターミナル」で日本建築学会作品賞を受賞。95年に岡部憲明アーキテクチャーネットワークを設立し代表を務める。