vol.3 季節を眺める家
「無印良品の家」で暮らす人を訪ねる長野への小旅行。
フードジャーナリスト、エッセイストの平松洋子さんが
イタリア料理店「トラットリア パパオルソ」シェフKさんの
「窓の家」に会いに行きました。

施工例 | 2010.7.20

ダイアログ2

この街に根をおろして

建て主の想いと設計者の考え方が……

Kさん
(1階をご案内中です)眺めの良い2階をメインの生活空間にして、1階はゲストルームとお風呂、洗面、それから書庫とワイン庫です。
平松さん
ゲストルームは2部屋もあるんですか!
Kさん
ワイン好きの友人を招いた時、ワインを飲んでそのまま泊まっていけるように考えていたので。それも家を建てた理由の一つでしたから。人をもてなすのが大好きなんですよ。書庫を設けたのは部屋のモノを整理してスッキリさせるためです。
平松さん
なるほど。
Kさん
お店(イタリア料理店)のほうはトスカーナの田舎の家をイメージして、アンティークを使い、密度の濃い空間になっているので、自分の家はスッキリ、シンプルにしたいと思っていたんです。本当は建築家に相談して、対話しながら家づくりができれば理想だったのですが、なかなか時間を割けないですし、それに建築家との相性もありますよね。自分の好みをちゃんと理解してくれるかどうか。
平松さん
家ができてから「やっぱり理解されていなかったのか」って、怖いですよね(笑)。だから最低3回建てないと理想の住まいを手に入れられないとか、よく言われています。
Kさん
そうですね~。でも現実にはお金が続かないですよね(笑)。
平松さん
そういう意味では工業化住宅でも「窓の家」のようにコンセプトが明快なら、建築家2回分の「下積み」をスキップできる可能性はありますね。
Kさん
確かにそうでしたね、私の場合は。

ここで暮そうと考えたそのわけは……

平松さん
毎日、お仕事には何時頃に家を出られるんですか。
Kさん
朝の8時頃にクルマで出かけて帰宅は11時くらいでしょうか。好きな仕事なので苦にならないんですよ。以前は家は寝に帰るだけでいいやってずっと思っていた。それよりもお店を大きくしたい想いが強かったですね。私はもともと京都の生まれで、こちらはたまたまお店の場所を見つけたという町でした。だから将来は蓼科か軽井沢辺りで一軒家のレストランを造りたい夢もあったのですが、今のお店を気に入ってくださるお客さまが増えて、人のつながりができるとこのままでいいんじゃないかという気持ちが芽生えて……。
平松さん
その気持ちを確かなものにするために……。
Kさん
ええ。この街に根をおろして生涯過ごそうということでしょうかね。
平松さん
自分の中で拠点としての確信がもてたんですね。そうした確信は、家を建てるとか、家との出合いとも深く関わってきますよね。
Kさん
そうですね。あとはタイミングでしょうか。良いタイミングで「窓の家」と出合えたので。
平松さん
そのタイミングも偶然とかではなくて、無意識のうちにご自分でそれをすごく求めてらしたから出会えたのではないでしょうか。
Kさん
そうかもしれないですね。