【インフラゼロハウス試泊レポート】電気の使い方はギガの使い方と同じ?中学生がインフラゼロハウスで感じたこと

ゼロ・プロジェクト | 2024.8.19

現在、試泊者を募集して実証実験を行なっている「インフラゼロハウス」。今回は実際に試泊してくださった泰史さんと、娘さんである百香さんに、MUJI HOUSEの開発責任者である川内が暮らし心地を伺いました。

川内 今回は親子で試泊していただいたということで、ありがとうございます。最初に、なぜお二人でご参加いただいたのかを聞かせてください。

泰史さん(以下敬称略) うちはそもそも4人家族でして、今回参加した百香の上に高校三年生の兄がいるのですが、受験勉強で忙しいと。妻は自然に近い場所に泊まるのがあまり好きではないということで、二人で参加させていただきました。

試泊会に応募した理由としては、このインフラゼロハウスのような暮らし方を考えていかなければならないと思っていたし、それを娘に体験して学んでほしいと感じたので、娘には声をかけずに勝手に応募しました(笑)。事前に「行ってみる?」ではなく、決定した段階で「行くよ」と伝えて連れてきたような形です。

百香さん(以下敬称略) はい、連れてこられました(笑)。

川内 中学校三年生の女子がお父さんと二人旅って、なかなかできないですよね。年頃ですし、嫌がられてしまうパターンが多い気がします。

泰史 そうですよね、ありがたいなと思います。

川内 もともとインフラゼロハウスはどこで知られたんですか?

泰史 昨年・一昨年と三重県の尾鷲市にあるキャンプ場を手伝っていたのですが、そこで別の会社が出しているインスタントハウスを体験しまして。どこにでもすぐに建てられるというコンセプトなのに、電気などのインフラは有線で引っ張ってこなければならないのが惜しいなと思っていたんです。電気や水をどうコントロールするか、ということを考えていたときに、インフラゼロハウスが完成したというニュースを見て。試泊者を募集しているという案内もあったので、ぜひ泊まってみたいということで応募させていただきました。

川内 ありがとうございます。キャンプ場に関わられていたということですが、ご自身でキャンプなどはされますか?

泰史 しないですね。火の起こし方もわからないし、そもそもみんななぜキャンプ場に泊まりたいんだろう、と思っていたほどだったのですが、関わっていくうちにキャンプやアウトドアの魅力がわかってきたという感じです。だから家族でキャンプなどに行ったこともないですね。

川内 ということは、百香さんはこういった自然に囲まれた場所に宿泊された経験がなかった?

百香 初めてでした。でも来る前にYouTubeでどんな感じなのかは見ていて、おもしろそうだなとは思っていました。

川内 なかなか学生さんに泊まっていただく機会もないので、我々も嬉しいです。昨日車で来られて、何時ごろ到着されましたか?

泰史 16時くらいですかね。チェックインしてから、ひとまず中も外もパトロールしなければということで、説明書を読みつつスイッチの場所などをひととおり操作しながら確認しました。せっかくなら火を焚きたいと思っていたので、食事はバーベキューを。近くのスーパーへ買い出しに行って、家から持ってきた焚き火台で食材を焼いて食べました。

川内 なるほど、満喫していただいていますね。最初にインフラゼロハウスに入ったときの印象はいかがでしたか?

泰史 インスタントハウスの宿泊は何度かあるのですが、それと比べてやはりすごいのはトイレがあることですよね。この広さが確保できることにも驚きましたし、快適だなと感じました。Wi-Fiも衛星で送受信するタイプのものを使われているから、災害時でも通信が途絶えないだろうな、かっこいいなぁと。

川内 ありがとうございます。ネット環境は今や電気と同じくらい大事なものになっていて、途切れてしまったら仕事どころか普通の暮らしもままならないと思うんです。だからWi-Fiをきちんと確保できることにはこだわりました。

リビング棟はトイレも合わせて7.5畳なのですが、百香さんはご自身のお部屋と比べてどう感じましたか?

百香 私の部屋は6畳なんですけど、物が少ないのでここより少し広く感じる気がします。布団を敷いて寝ているので、あげてしまえばわりとスペースがあるんです。ここは壁が木の板になっていたりして、おしゃれだなと思いました。トイレも普通に使えたし。

泰史 キャンプ場やグランピング施設だと、トイレへ行くのにわざわざ外に出なきゃいけないことも多いじゃないですか。オフグリッドの大事さを伝えたいとか、アウトドアな体験をしてほしいと親や運営側が思っても、実際に泊まる人が「不便だからもう来たくない」と思ってしまったらそこで終わってしまう。インフラゼロハウスはそういったバランスの面でもすごくいいですよね。

川内 そうですね、とにかく大前提が、大自然の中の普通の暮らし、なのでなるべく普段と変わらず過ごせる設備は整っていると思います。その分たくさん会話をしたり、ゆっくり映画を観たりといった時間ができる。それも自然の中での過ごし方のひとつだと思うんです。

泰史 百香は、もし連れてこられた先がテント泊だったらどう?

百香 もう絶対来ないと思う。でもここ(インフラゼロハウス)はまた来たいです!

クーラーのある学校でSDGsを学ぶ子世代と、クーラーのない学校で過ごした親世代

川内 我々親世代よりも、若い世代の方がSDGsなどの取り組みが身近にありそうですよね。百香さんは学校で環境問題やSDGsについて学んだりという機会はありますか?

百香 科学の授業でSDGsについての話を聞いたりします。あと私の学校では自分が興味のある分野について研究するフィロソフィーという授業があるので、私はそこでSDGsについて英語でディスカッションしています。英語で書かれたSDGsの教科書も配られているし、学校で触れる機会は多いです。

川内 すごい、想像以上に学ばれていますね。普段の生活で環境のために何か実践したり、気をつけることはありますか?

百香 水を出しっぱなしにしないとか、電気をつけたままにしないようにしています。お兄ちゃんがよく電気をつけっぱなしにするので「消してよ」と注意したり。でも出しっぱなしにしていても水は出続けるし、電気も勝手には消えないから、余裕があるというか、甘えられるなって。ここでは電気が何%残っていて、このぐらい減っていて、というのが数字でわかるから、危機感があるしずっと意識できたと思います。

川内 私が伝えたかったことを百香さんが全て言ってくれました(笑)。まさにそのとおりで、大事なのは普段の生活でもどれだけ意識できるかですよね。

泰史 昨日ここに着いた時点で電池は100%貯まっていたので、どのぐらい減るのか試してみようということになって、まずは電気をガンガン使ってみたんです。意外と減らないね、と話しつつ、電池が80%になったあたりで怖くなってきて止めたんですが。

川内 ここに何日か住んでみると、何がどのくらい電気を使っているというのが感覚として身についてくるんです。それが日常に戻っても持続すれば最高ですよね。

百香 家では気をつけるようになると思うけど、学校では気にしないかも……。学校だとクーラーをつけてもあまり涼しくならないんです。風があたるところだけすごく寒くて、ほかは暑かったり。

川内 そうか、今は教室にクーラーがついていますよね。学校だと建物が古いことが多いので、断熱性が低くて涼しくならないのだと思います。学校にクーラーがなかった世代からすると、なんとなく“エアコンをつけるのは悪いこと、エアコンをつけていないのは偉い”というような感覚があるけれど、現代の気候でエアコンを使わないのは難しい。だからインフラゼロハウスのように自分で発電していれば、いくらエアコンを使っても気にならないですよね。これからの暮らしは、インフラに頼らない自給自足の生活に近づいていくのではないかと考えているんです。

ギガを工夫する感覚で、電気の使い方をゲームのように学べたら

泰史 (百香さんに)ここで過ごして、気になったこともあったでしょ?

川内 ぜひ全部聞かせてください!

百香 えっと、まず良かったことは初めて自然の中に泊まれたことと、焚き火ができたことです。虫はたくさん寄ってくるけど、「ああ、いいなぁ」と思いました。あとはタブレットで電気の量を確認できること。数字で見られるし、限りがあることを意識しながら過ごせました。

百香 こうだったらいいのに、と思ったのは、リビング棟に手を洗える場所がないことです。ごはんを食べて手が汚れたときに、手を洗いたいけどわざわざ外に出て隣(ユーティリティ棟)まで行くのも面倒くさいし。手洗い場があればもちろん嬉しいけど、ウェットティッシュが置かれていたら便利だと思いました。

川内 それはすぐできることですね、実践させてもらいます!ちなみに百香さん、スマホは持ってますか?

百香 持ってます。今月使いすぎちゃってもうギガがあまりなくて……ここはWi-Fiが使えたので繋いでました。

川内 そのギガがまさに電池量と同じ感覚かも。ギガが減ってきたらなるべくWi-Fiを使おうって工夫するじゃないですか。だからギガを気にしたことのある若い世代の方が、感覚的に電気の使い方を理解しやすいのかもしれませんね。

百香 わかりやすい! マンガアプリが意外とギガ使っちゃう、動画は思ったより減らない、って毎月考えてます。

泰史 なるほど、確かにそうですね。あとはタブレットで数字が見えるのにプラスして、エアコンは今どのくらい電力を使ってる、トイレはこのくらい、お金に換算すると○○円くらい、というのまで表示されたらもっとおもしろいですよね。それを子どもに体験させたいという人は多いと思います。

百香 それ楽しそう。友達と一緒に泊まってゲーム感覚でできると思う。

川内 学生さんの林間学校なんかで活用してもらえたら最高ですね。実現したら、お友達と一緒にぜひ泊まりに来てください。

泰史 いいですね。そのときはお父さんは別のところで寝るから。

百香 え、お父さんも来るの?

一同 (笑)

川内 次回は百香さんとお友達だけになるかもしれませんね(笑)。貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました!