一ノ瀬メイさん対談 前編|「ここに住んでた?」と思うほどナチュラルに過ごせるインフラゼロハウス
ゼロ・プロジェクト | 2024.7.30
2024年4月に発表された、MUJI HOUSEの新プロジェクト「インフラゼロハウス」。その名のとおり既存のインフラに頼らず電気を自給し、水を循環させ、車で移動できる未来の家です。現在インフラゼロハウスは、試泊者を募集して実証実験を行っています。
今回のコラムにご登場いただくのは、元競泳選手でモデルの一ノ瀬メイさん。なんと一ノ瀬さんご自身からインフラゼロハウスに試泊したい、とオファーをいただき、実際に試泊してくださいました。一体どんな思いからインフラゼロハウスに興味を持ったのか、MUJI HOUSE商品開発責任者の川内が伺います。
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元競泳選手、モデル。一歳半から水泳を始め、史上最年少13歳でアジア大会に出場。2016年リオデジャネイロパラリンピックでは4泳法8種目に出場。2020年個人メドレー世界ランキング1位。現在も4泳法すべての日本記録を保持。2021年に現役を引退後はスピーカー、モデル、俳優、企業とのパートナーシップなど多方面で活躍。Well-being・Sustainability・Diversity&Inclusionを軸に国内外で活動している。
思わず昼寝したくなる、心地よいリビング棟
川内:今回は一ノ瀬メイさんにインフラゼロハウスに試泊していただいた感想を伺いたいと思います。今回は光栄にも、メイさんの方からインフラゼロハウスに泊まりたいとオファーをいただきまして。どういうきっかけだったのかを教えていただけますか。
一ノ瀬:私自身、環境問題などに関心があって、普段から色々と調べたり実践をしているんです。その中でもひとつオフグリッド、インフラゼロの家というものに憧れがあって。YouTubeでオーストラリアにあるオフグリッドの家を紹介する動画を観ていたんです。そこから無印良品さんのインフラゼロハウスの存在を知って、インフラゼロハウスに関するYouTubeも観させていただいて、ぜひ体験してみたいと思いオファーさせていただきました。
川内:ありがとうございます。YouTube動画、一生懸命撮った甲斐がありました。今日お話を伺う様子もYouTubeの動画になります。インフラゼロハウスでどういった暮らし方をされたのか、お聞かせいただきたいと思いますのでよろしくお願いします。
川内:まず、部屋の中に入った感想はどうでしたか?
一ノ瀬:可愛い! 室内のデザインが可愛くて、すごくテンションが上がりました。
川内:ありがとうございます。決して広くはないと思うのですが、ここで一晩過ごすことに不安はなかったですか?
一ノ瀬:全くなかったです。普段から荷物も少ないですし、なるべくミニマムに過ごしたいと思っているので、そういう意味でも無駄なものがないこの空間は嬉しいです。狭さもあまり感じないし、ドアとテラス側の窓を両方開けたら風通しもすごく良くて快適でした。
川内:では荷解きをされたりといったその後の過ごし方を教えてください。
一ノ瀬:まずスーツケースを床に広げて、必要なものを出したりすることから始めました。持ってきていた食材をユーティリティ棟に移したり、すぐに使うものはテーブルに置いたり。
その後はテラスに椅子と机を出して、持ってきていたスナックでいったんおやつタイムにしました。このテラス、すごく気持ちよかったです!タープでほどよく日陰になってくれたので、陰になる場所に合わせて机を動かしながらおやつを食べました(笑)。その後は昼寝をして。
川内:そうですか! 試泊してくださった方の話を伺うと、昼寝される方が多いんですよ。
一ノ瀬:昼寝をしたくなる空間なのかも! 普段あまり昼寝はしないんですけど、移動してきた疲れもあったし、すごく気持ちよく眠れましたね。30分くらい寝て、ゆっくり夕ご飯の支度を始めました。レトルトのカレーと、アルファ米というお湯で作れるご飯を持ってきたので。
川内:ちなみに、エアコンは使われましたか?
一ノ瀬:夕方以降に少しだけ使いました。
川内:今日も外は暑いですが、室内はエアコンがなくても涼しいですよね。この建物はMUJI HOUSEが普段作っている家と同じ構造で、屋根も壁も床も断熱材がしっかり入っているのですごく断熱性が高い。冬は日中に日が入るとすごく暖かくて、夜もエアコンなしで過ごせる状態だったんです。ただこれから夏を迎えるにあたって、日が入るとどのくらい暑くなって、どのくらいエアコンが必要かというのは検証中ですね。でも意外と今のところは、日中もそんなに暑くならないようで。
一ノ瀬:うん、今も涼しいですよね。
川内:夏になって湿気が出てくるとエアコンは必要になるとは思うのですが、今日のように電気がしっかり貯まっていればエアコンをつけても大丈夫です。
一ノ瀬:なるほど、すごい!
メインイベントのトイレは「窓」が地味にスゴい!
川内:リビング棟のメインイベントはトイレだと思うのですが、使われましたか?
一ノ瀬:はい! メインイベントのトイレは到着してすぐに使いました! なんの問題もなく使えたし、匂いもしなくて。
川内:ありがとうございます。あとは今音が聞こえていますが、おがくずを撹拌してより分解を早めるようになっていて。
一ノ瀬:攪拌もしてくれるんですね。普段コンポストするときは野菜などをできる限り細かく切って入れるんですけど、このトイレはそのまま入れても大丈夫なんですか?
川内:細かくするに越したことはないのですが、そのまま入れても撹拌して分解していきますよ。便座のふたを閉めると自動で撹拌するようになっています。今勝手に動き出したのはなぜかというと、微生物が活発に動くための温度や湿度をキープするためにヒーティングしているんです。これが意外と電気を使うんですが……今色々とデータをとっているところですが、エアコンよりむしろこちらの方が電気を使うくらい。
また、このおがくずは肥料としても使えるんですよ。こういう自然の多い環境だと野菜作りなどもしたくなると思うので、ちょうどいいですよね。
一ノ瀬:じゃあ外でファームとかやったら、そのまま利用できるんだ! そこでも循環が生まれるんですね。あと、ここの窓も地味にすごくいい! ここに住んでいると、できる限り電気を付けずに太陽の光で生活しようと思うじゃないですか。トイレにも太陽光が入るから、夜以外は電気を付けなくていいんですよね。
川内:素晴らしい発想ですね。この窓はガラス部分を開けると、網戸が横から引けるようになっているんですよ。
一ノ瀬:え、これ? (網戸を引いて)ほんまや!すごい!
川内:そうすると虫は入ってこないけど風が抜けますし、窓が屋根のような形に開くので雨が入って来づらいので、雨の日でも開けておける優れものの窓なんです。
一ノ瀬:すごくいいですね。開放的な土地にこの家を置いた際には、ここを開けっぱなしにして人目を気にせずトイレにいけますね。
川内:あと、ベッドの寝心地はいかがでしたか?
一ノ瀬:すごく寝心地よかったです! 昨日は窓側のベッドに寝たんですけど、朝になると太陽の光も入ってくるし。寝心地良くて爆睡できました! で、ごはんはこのテーブルで食べて。
川内:この場所だと外も見えるし、網戸にしておくと風が入ってきますよね。テラスもいいですが、暑いときは室内でも過ごせるようになっています。
川内:そしてこれがリビング棟の心臓部、蓄電池と、発電した電気をここで使えるように変換する装置です。先ほどメイさんがおっしゃっていたように、なるべく丸みのあるものを選んで、違和感のないようにしています。今どのくらい発電されて、充電されて、自分がどのくらい電気を使っているのかがタブレットで見られるようになっているのですが、使ってみられましたか?
一ノ瀬:はい、昨日着いてすぐに見ました。
川内:見方はすぐに分かりましたか?
一ノ瀬:大丈夫でした! 「相当する森林量」とか「CO2削減量」とかが表示されていて、すごくわかりやすかったです。いきなりパッと見ても、素人でもなんとなく効果がわかるというか。
川内:こういうのって子どもも喜びそうですよね。もっと節電するぞ!みたいになってくれたらいいなと思っています。
一ノ瀬:たしかに! 「今日太陽出たから数字が上がるかな?」とか楽しめそうですね。
川内:このデータは、タブレットではもちろん、スマホでも見られるんです。
一ノ瀬:ということは、もしインフラゼロハウスを別荘使いするとしたら、自分の家からどうなっているか確認できるんですね!すごい! 「今行ったら2〜3日は余裕があるな」とか。
川内:そのとおりです。電気が危ういから今日は2泊にしようか、といった計画が立てられるんです。
インフラゼロだけど、普段と変わらずナチュラルに生活できる
川内:では続いて、ユーティリティ棟の使い方も聞かせてください。すでに使ってくださった感がありますね。食器をきれいに洗っていただいて。少しシンクが狭かったと思うのですが、大丈夫でしたか?
一ノ瀬:はい、十分でした。シンクとIHがあるからここで全部完結するし、向かい側に給湯器とか炊飯器とか必要なものも全部あって、コンパクトでいいですよね。
川内:そうなんです。電子レンジまであるので、例えばキャンプに行って火を起こして鉄板で……というのもそれはそれで楽しいですが、家電があることで時短になるじゃないですか。これも試泊された方のお話ですが、調理にかける時間を短縮できる分、一緒に来た友達と話をしたり、楽しむ時間が増えるというメリットがあるんです。
一ノ瀬:うんうん。使い勝手も普段と全然変わらなくて、昨日一泊しただけなのに「あれ、ここに住んでたのかな?」と思うくらい、ナチュラルに生活してました。
川内:エコなんだけど特別に我慢をしたりとか、不便を感じたりということがない方がいいよね、ということで、必要な家電は全部置くことにしたんです。ここにある家電は全部同時に使っても電気が落ちないようにしています。
一ノ瀬:すごい! あとシャワーも昨日の夜浴びましたが、普通にお湯が出ることに感動しました。私の実家には母屋と離れがあって、母屋の方はここと同じようなシャワー室なんですよ。だから実家と同じ感じで違和感なく使えました。十分広いし、プールにある更衣室とも同じくらいのサイズ感ですね。
川内:水の勢いも、そんなに強くはないですがシャワーを浴びる分には十分な水圧ですよね。
一ノ瀬:十分でしたし、すぐ温かくなりますよね。ちなみにシャワーが2つあるのはこだわりなんですか?
川内:上はレインシャワーというもので、よくホテルの天井についているものですね。なんのためにあるかというと、浴槽に入ると体って温まるじゃないですか。でも流石に浴槽は付けられないので、上から身体全体にお湯を当てて温めるような作りになっています。
一ノ瀬:身体全体を温めるシャワーと、普段のシャワーと選べるようになっているんですね。たしかにちゃんと温まりました。
川内:よかったです。ユーティリティ棟は全体の大きさは先ほどのリビング棟と同じなのに、なぜこんなに狭いのかというと、奥に水循環システムがあります。わからずにスイッチを触ったり、異物が入ってしまうといけないので、普段試泊していただく方は入れないようになっているんですが、今日は特別に公開しますね。
一ノ瀬:実験室のような雰囲気ですね。
川内:そうなんです。実際まだまだ実験段階なので、もっとコンパクトにして生活スペースを広げたいと思っています。90cmでも広がったらだいぶ違いますよね。あとはこれだけ複雑な装置なので、メンテナンスもプロじゃないと難しい。それをもう少し簡略化・自動化してメンテナンスしやすくするとか、そのあたりをクリアしないと一般販売はできないということで、検証中です。
一ノ瀬:この水循環システムが個人の家にあるって考えたらすごいことですよね。ますます販売が楽しみです!
本対談の後編は近日公開予定です。お楽しみに。