無印良品のインテリアアドバイザーに聞く「クローゼットの整理収納術」 ①整理編

みんなでつくる住まいの手引き | 2025.9.29

「みんなでつくる住まいの手引き」では、快適な暮らしに役立つ知識や住まいを長持ちさせる適切なお手入れ方法をお伝えします。あなたも一緒に「賢い住まい手」を目指しましょう。

今回のテーマは「クローゼットの整理収納術①整理編」。クローゼットは住まいの中で主要な収納の一つですが、大きな収納だからこそ、物を詰め込み過ぎて使いにくい状態になっている方も多いようです。整理収納の基本を押さえれば、どなたでもクローゼットを機能的に使うことができます。今回は無印良品のインテリアアドバイザーのかよさんとまみさんに、整理収納術の前編として「クローゼットの整理」のポイントをお聞きしました。

【目次】
1.無印良品の家の住まい手に聞いた「クローゼット事情」
2.クローゼットが上手に使えないのはなぜ?
3.クローゼットの整理術①断捨離の基準
4.クローゼットの整理術②気持ちよく手放す方法
5.クローゼットの整理は「自分の好きなものを見つけること」

1.無印良品の家の住まい手に聞いた「クローゼット事情」

無印良品の家で暮らす方は、ご自宅のクローゼットについてどう考えているのでしょうか?「自宅のクローゼットをうまく使えていない」と回答した方は全体の約6割。お困りごとは整理に関する内容(物の分類ができない、物があふれてしまうなど)と、収納に関する内容(取り出しにくい、空間が上手く使えないなど)がそれぞれ寄せられました。
(アンケート:2025年9月インスタグラムにて実施)

Q.ご自宅のクローゼットの形状を教えてください

Q.クローゼットをうまく使えていますか?

Q.クローゼットの収納についてお困りごとを教えてください

・分類がうまくできません。着ない服が処分できなくて溜まる一方なのも一因。
・面積が狭い
・奥行きがあるのはいいのだが、置く側に収納した物が取り出しにくく使いにくい
・ごちゃついてしまって、いつのまにかパンパンになっている
・ホコリがたまる
・コートなどワンシーズン着る服を皆さんどこにしまっているのか知りたいです
・ユニットシェルフをうまく使いこなせない
・吊るすバーの下がデッドゾーン
・押入みたいな棚の部分がうまく使えない

2.クローゼットが上手に使えないのはなぜ?

家づくりの際にクローゼットを重視する方は多く、一般的なクローゼットのほか、大型のウォークインクローゼットを設置する方もいらっしゃいます。にもかかわらず「衣類があふれてしまう」「ごちゃごちゃして取り出しにくい」といった悩みが生まれるのはどうしてなのでしょうか?

クローゼットが上手に使えない2つの理由

洋服は手放すタイミングが難しい
家電や食器であれば、壊れたとき、使えなくなったときが買い替え時だといえますが、洋服はある程度の状態までは着ようと思えば着用できます。最初はおしゃれ着として着ていた洋服も、飽きたからといって捨てるのは気が引けるもの。いつか流行が来るかもとしまっておいたり、部屋着として使うということもあるのではないでしょうか。整理をしないまま収納している結果、どんどん洋服が溜まってしまうのです。

「 『整理収納』という言葉の順番どおり、まず整理をしてから収納に取り組むことが大切です。洋服は断捨離のタイミングが難しいかもしれませんが、使わないもの・使うものを整理してから器(クローゼット)に収納しましょう(まみさん)」

衣類は形状や素材が多彩で分類が難しい
コートやジャケット、Tシャツ、ニット、パンツ、スカート、ワンピースなど、ひとことで衣類といってもさまざまな種類があります。また、サイズ感や素材に合わせて畳めるものもあれば、ハンガーにかけたいものもあります。分類せずにクローゼットに詰め込むと、取り出しにくくなり、どこに何をしまったのかを忘れてしまうこともあります。

\クローゼットのNGな使い方あるある5選/
ご家庭のクローゼットにあてはまるものはありませんか?整理収納をはじめる前にチェックしてみましょう。

①物を詰め込み過ぎている
②ハンガーに衣類を重ね掛けしている
③いろいろな形状の衣類を一か所にしまっている・不規則に並べている
④手前の空間に物を置いて、奥の物が取りだせない
⑤クローゼットのハンドル部分に物を掛けている

「理想的な収納量の目安は『クローゼットの容量の80%以内』です。ギチギチに物が入った状態はストレスにもなりますよね。私たちの間では『収納のゆとりは心のゆとり』なんて言うこともあるんです。(かよさん)」

3.クローゼットの整理術①断捨離の基準

クローゼットを上手に使う一歩は現状把握から。まずはクローゼットの中にあるものを全部出して並べてみましょう。インテリアアドバイザーの二人が、断捨離の基準について詳しくご説明します。

知っておきたい断捨離の基準

①1年(2シーズン)の使用頻度
衣類は流行があるため、買った年にはたくさん着たものも次のシーズンには全く着なくなってしまう、ということもありえます。断捨離する際は「この服は直近のシーズンに着たかどうか」を考えてみましょう。1年間着ていないもの、ほとんど着なかったものは手放すと決めると断捨離もスムーズです。

②サイズやデザインが今の自分に合っているか?
体形の変化は誰にでもありますし、髪形や髪色を変えることもあるでしょう。「昔の自分には似合っていたけど、今の自分が着てもいまいちパッとしない」と感じる物は、思い切って手放すことも大切です。

③断捨離のタイミングは衣替えの時期がおすすめ
衣類は大きく春夏用・秋冬用に分けられます。衣替えのタイミングで「1年前の春夏/秋冬に着なかったものは処分する」と決めると、比較的簡単に断捨離が進められます。

捨てる、手放すと考えると「もったいない」とネガティブに感じてしまうかもしれません。ですが、断捨離の本当の目的は、自分の好きなものを再確認したり、今の自分に似合うものを見つけることにあります。自分が身に着けたいものだけを残せば、日々クローゼットをのぞくことが楽しくなるはずです。そう考えると、少し気分が軽くなりませんか?(まみさん)」

4.クローゼットの整理術②気持ちよく手放すコツ

断捨離の基準をもとに手放すものを決めた。といっても、思い出の品など、愛着のあるものはなかなか捨てられないかもしれません。また、ご家族の持ち物の断捨離は特に配慮が必要なこともあります。気持ちよく手放すにはどうしたらいいのでしょうか?

思い出が詰まったものがどうしても手放せない

「思い出ボックス」をつくる
たとえば、お子さまのファーストシューズやなにかの記念日に着た洋服などの思い出が詰まったアイテムたち。たとえ使わなくても手元に残したいものは一時的な保管場所として「思い出ボックス」をつくってはいかがでしょうか。大掃除のタイミングや、ボックスがいっぱいになったときに見直して、少しずつ手放していくというのも一つの方法です。
写真に撮って残す
思い出のアイテムの写真をデータとして残しておけば、いつでも見返すことができます。データであれば物理的にかさばることもありませんから、たくさん残すことができますね。

捨てることに抵抗がある

必要としている人へ譲る
高価な洋服を手放す場合やゴミを増やすことに罪悪感がある場合は、無理に捨てようとせずに人へ譲るという選択肢もあります。知人に譲る、寄付をする、フリマサイトに出品するなど、さまざまな方法があります。ご自分が気持ちよく手放せる方法を見つけてみてください。

高齢の家族がなかなか断捨離できない

断捨離の目的を理解してもらう
高齢の方は物を大切にする気持ちが強い方が多く、気力や体力の低下も影響して物を手放す決断ができないというケースが多いようです。本人にも気持ちよく断捨離してもらうために大切なのは、断捨離の目的を伝えてあげること。「ここに物があると道がふさがって地震の時に危ないよ」「安全に暮らせるように整理しよう」というように話を進めてみましょう。

「捨てることだけが手放す方法ではないので、ご自分の気持ちが楽になる方法で手放していただけたらいいなと思います。『高齢のご家族が物を片付けられない』というご相談は多いですね。ご本人を傷つけず、納得してもらえるようにお話してみてくださいね(かよさん)」

クローゼットの整理は「自分の好きなものを見つけること」

ファッションは流行や好みの変化が大きいもの。お気に入りだったアイテムを使わなくなることは自然なことです。だからこそクローゼットの整理は難しいですが「自分の好きなものを見つけること」とポジティブに考えて取り組んでみましょう。次回はクローゼットの整理収納術の後編「収納術」をご紹介します。

お話を聞いた人:
無印良品 インテリアアドバイザー かよさん

無印良品歴14年、インテリアアドバイザー歴12年。
無印良品店舗勤務のキャリアを経て、現在はインテリアアドバイザーの育成を行っている。お客様に対しては暮らしを楽しむことを軸にした提案をモットーに、自身でも日々暮らしの中で新しい楽しさに気づきながら工夫することを実践中。何より柴犬が好き。

無印良品 インテリアアドバイザー まみさん
無印良品インテリアアドバイザー歴13年。インテリアコーディネーター、キッチンスペシャリスト、整理収納アドバイザー1級、整理収納アドバイザー2級認定講師。
建築設計、リフォームアドバイザーを経て無印良品へ。日々お客様とお話しながら暮らしの提案を行っている。お店のおたよりでも暮らしのヒントを連載中。自宅はグリーン優先の部屋だが、いつかハリネズミを飼って癒されたい。