6つの空間と間取り

「縦の家」が目指したもの | 2014.5.6

前回のコラム「隅々まで通る光の階段」では、「吹き抜け」を新しいデザインの階段に置き換えることで部屋が縦にも横にも緩やかにつながり、家全体が一つの空間と感じられることで限られた敷地でも広く住むことができる、というお話をしました。
今回は、6つの空間と間取りについてご紹介します。

「縦の家」の階段は、「スキップフロア」との組み合わせにより、上にも下にも緩やかに空間をつなげ、「広さ」を感じるしかけとなっています。この「緩やかにつないでいる」ということは、一方で「緩やかに分けている」ということでもあります。

家の中央に階段が配置されることより、右図のように「緩やかに」仕切られた6つの空間ができます。
この6つの空間は、中央の階段を挟み、床の高さを選びながら、自由にそれぞれの空間に役割を割り当てることができます。縦、横、斜めの配列を組み変えることで、「縦の家」は、自分の暮らしにあわせて家をゼロから編集できる家となります。平面的に「間取り」を考えるのとは全く発想が異なるのです。
この6つの空間を私たちは「6つのポーション(区分、役割)」と呼ぶことにしました。
例えば「リビングの天井を高くしたい」という場合を考えてみましょう。
「ポーション3」を通常より床の位置を下げて、その上の空間の「ポーション5」は逆に床を上げ、「ポーション3」の天井高を高くします。
ここをリビングとすることで「天井の高いリビング」が生まれます。この場合、「ポーション5」は少し天井高が低くなるので、主に寝るのが目的の寝室とするのが良いでしょう。
あるいは、「リビングは天井が高いだけではなく、なるべく明るくしたい」という場合は、左のように「ポーション5」の床の位置を少し下げてみます。すると、ポーション5は、家中で最も高い位置にあって明るく、しかも天井の高いリビング空間をつくることができます。

このように「6つのポーション」は、中央のスケルトン階段を挟んで家全体が立体的に組み合わさっているので、それぞれの空間のつながり方や、天井の高さ、明るさなどを、目的にあわせて編集することができるのです。

もう少し具体的にプラン例を見てみましょう。

このCASE7のプランは、北側が道路で、敷地の大きさが5.8m×11.5mの例です。
「ポーション4」のリビングの天井高は最も高い3.05mです。逆にその真上の「ポーション6」の天井高さは少し低く(2m24cm)なっているので、ここを子供部屋にすることにしました。「ポーション3」は、リビングと横につながるダイニングキッチンにし、ここも少し床の位置を上げて、真下の「ポーション1」の水まわり・ワークスペースの天井を高く(2m47cm)しています。
この「ポーション1」は浴室・洗面と隣合わせで、脱衣→洗濯→室内干し→アイロン掛け→衣類収納という家事が、すべてここで完結する水まわり・ワークスペースです。天井が少し高いことが、室内干しや、収納の容量に役立っているのです。

玄関と土間が一体となっている「ポーション2」は、自転車置き場としてだけでなく、テーブルを置けば、仕事やちょっとした接客などに使える都市部ならではのマルチスペースとして使えます。
また、このポーション2はポーション4の影響で、少し天井が下がっていますが、この空間全体を土間とすることで、床位置が19.5cm下がり、天井高さは2m27.5cm取れています。

もう一つ、CASE2のプランも見てみましょう。

ポーションの組み換えは、CASE7のように天井高にメリハリをつけるだけでなく、空間同士の繋がり方をうまく調整できます。例えばこのCASE2では、ポーション6を子供部屋、ポーション1を主寝室とすることで、間仕切りが全くないにも関わらず、気配は感じても、お互いの視線を遮断しています。もし音の問題が気になるのであれば、それぞれのポーションに間仕切り壁や建具を付けることも可能です。
また、このプランはCASE7と逆に道路側が南ですが、このような敷地は北側の隣地への配慮から、北側の屋根を下げなければならない法律「北側斜線規制」にかかることがあります。この場合のように、屋根を極端に下げなければいけない場合は、図のようにポーション5を取ってしまうことで、逆にポーション3が勾配天井の吹き抜けのある開放感のある、リビングに適した空間となります。

「縦の家」では、これまでの間取りのように、部屋と部屋の動線だけではなく、上下左右の空間の繋がりを調整することで、天井高さや視線を住み手の暮らしに合わせて編集できることがおわかりいただけたでしょうか。

ところで、前回のコラムで、「家全体を1室のように使うことで狭さを感じない」というお話しをしたところ、何人かの方から「冬、寒いのでは?」というご意見をいただきました。上のCASE7のように、北側に大きな窓を取り、広い土間を設えたり、CASE2のような吹き抜け空間をつくったら、さらに「寒さ」についてどうなのだろう?と疑問に思われるかもしれません。しかし、信じられないかもしれませんが、この「縦の家」は、空間構成以外にも、都市部の日当りの厳しいところで、このような空間構成で、「冬暖かく、夏涼しい」のが特徴の家なのです。

そのワケを次回お話ししていきたいと思います。縦に空間をつなぐ新しい発想の都市型住宅「縦の家」、どのように感じましたか?ぜひご意見をお聞かせください。

《おまけ》
縦の家はこのように「立体的に」プランを考える、新しい発想の家です。図面だけではなかなかそのつながりがわかりにくいので、写真のようなシミュレーション模型を各モデルハウスにご用意しています。6つのポーションの床の位置や屋根形状を変えながら、自分の暮らしにぴったりの家のかたちを見つけることができます。ぜひ、お近くのモデルハウスにて実際にさわってご確認ください。