
「ちょうどいい」という豊かさ。|木の家平屋開発秘話・3
住まいのかたち | 2025.6.6
前回は「ちょうどいい大きさ」の家を、狭さを感じさせないように緩やかに仕切る独自のアイテムについてお話ししました。
今回はそうやってシンプルな空間を緩やかに仕切ることで、家の外との関係性も良好になる、というお話をしたいと思います。
風が抜け、光が巡る。自然とともに住まうということ
「木の家 平屋」の全体のデザインは、自然の力をうまく利用して室内環境を整えるための“パッシブデザイン”がベースになっています。季節の変化を心地よく受け入れ、あるいは遮断して、電気やガスに頼る前に、建物の性能とデザインの力で快適さをつくる設計です。(図1)
図1:南からの光と風が心地よく抜ける、断面構図
①デザインの特長ともなっている南側の大きな窓と庇と袖壁
冬の暖かくて低い日差しは、家の奥まで取り入れ、夏の強くて高い日差しを遮断するデザインです。
よく断熱性能の高い家を「魔法瓶のような家」と喩えますが、家の断熱性能を高くする、最も簡単な方法は「窓を小さくする」ことです。窓をどんどん小さくすれば、まさに魔法瓶のように外界から遮断された器となりますが、それでは家として快適とは言えません。窓を小さくすることで開放感を捨てるだけでなく、太陽エネルギーをも遮断してしまうために、まさに「魔法瓶の冷たい水は、ずっと冷たい水のまま」となり、エアコンなどの暖房機器に頼らないと、冬の冷え切った部屋は、ずっと寒いままなのです。
木の家 平屋は、窓を小さくするのではなく、冬の太陽エネルギーを取り入れながら部屋の温度は逃がさない「トリプルガラス+室内側樹脂サッシ」を南側に大きく配置することで、開放感と太陽熱利用を両立させるパッシブデザインなのです。
このパッシブデザインは、昼間取り入れた太陽熱を夜まで逃がさない高い断熱性能が必要ですが、それは「ダブル断熱+トリプルガラス」で実現しています。
さらに、前回お話ししたシンプルでコンパクトな空間を緩く仕切ることで、冬の昼間、窓から獲得した太陽エネルギーの熱は家中に行き渡る、という効果も生むのです。(もちろん、太陽のない雨の日や夜にエアコンをつけた場合でも、各部屋が均等の温度になる効果もあります。)
②勾配天井+高窓
木の家平屋は、より空間をシンプルにかつ開放的にするために、構造そのものを変革し、天井全体を緩やかな勾配天井にしています。
そのために、プロトプランのようなコンパクトな家でも北側の天井高は約2.9mになります。その高い位置に開閉ができる窓を設けることで、温かい空気が上に行く性質を使って、自然の力による換気が生まれやすくなっています。
また、この北側の高窓からは、柔らかく安定した自然光が入り、家全体を穏やかに明るくしてくれる効果もあります。
一方向に整理された勾配天井を支える木製梁とともに、コンパクトな空間でも、いえ、コンパクトな空間だからこそ、スムーズな自然喚起と柔らかい光に溢れた心地よい空間が生まれています。
③外とつながる、縁側のようなテラス
南側の庇と袖壁は、①のようなパッシブ効果を生むだけでなく、かつての日本家屋の縁側のように、屋内と屋外を緩くつなげる役割も果たしています。
南側に大きな窓がありながら、袖壁と庇に囲われたテラスが、外部との緩衝帯となり、隣地や道路が近い場合でも圧迫感を和らげる効果を生んでくれます。
コンパクトだからこそ、こうした“間合い”の効果は大きくなります。
暮らしに合わせて、自由に描ける「家のかたち」
家族の数、暮らしのリズム、必要な個室の数。人それぞれの「ちょうどいい」に応えるために、木の家 平屋は、これまでお話しした様々な魅力を維持しながら、間取りを自由に描くことができます。
いずれにしても、すべてを決めすぎない設計ができること。それが木の家 平屋の最大の利点かもしれません。余白があるから、住まい手の工夫が生きてくる。暮らしながら整え、時には変えていける。そんな家こそ、本当に豊かな住まいになる可能性があると私たちは考えています。
もっと広く、もっと多く、もっと便利に——そうやって膨らみすぎた暮らしを、少しだけ引き算してみる。その先に現れるのは、自由で、静かで、そして確かな「ちょうどいい豊かさ」ではないでしょうか。
木の家 平屋は、その入り口にそっと佇む家。必要なものだけを、美しく持つ。そんな賢く、豊かな暮らしがここで育まれることを私たちは願っています。
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