
無印良品の家づくり出前授業レポート|小学生が考える理想の住まいとは?
住まいのかたち | 2025.3.3
みなさんは「出前授業」という取り組みをご存じでしょうか。出前授業とは、企業の社員や専門知識を持つ社会人が教育現場に出向き、子どもたちに授業を行う学習プログラムです。これは学校のキャリア教育の一環として取り入れられています(引用:出前授業どっとこむ)。
この度、無印良品の家が小学生を対象に、「住まい」をテーマにした出前授業を実施する機会をいただきました。このコラムでは、その経緯と授業の様子についてレポートいたします。
お施主さまからのご提案がきっかけに
今回の出前授業は、東京都内の小学校にお勤めの無印良品の家のお施主さまからのご提案がきっかけでした。
お施主さまは、無印良品の家が大切にしている二つの特長に共感してくださいました。一つは、家族構成の変化に応じて間取りを自由に変更できる可変性。もう一つは、太陽光や風などの自然エネルギーを活用した環境負荷の少ない快適な暮らしです。これらの特長を総合的な学習として活用できないか、というご提案でした。改めて考えてみると、これらの特長の基礎となっているのは、まさに小学校で学ぶ知識だということに気付かされました。
お施主様がお住まいの「木の家」
季節に応じた日射取得や通風が計画されています
小学校で学ぶ家づくりの重要な要素
前述の通り、無印良品の家の特長のひとつは、太陽光や風などの自然エネルギーを活用して環境負荷の少ない快適な暮らしを実現することです。
例えば、その土地に最適な家を建てるため、無印良品の家では独自の室内環境シミュレーション「+AIR(プラスエアー)」を導入しています。「日射シミュレーション」では季節や時間による家と日当たりの関係を詳しく分析しますが、これは理科の授業で学ぶ太陽の傾きや南中高度の知識が基礎となっています。
また、無印良品の家では、外断熱と柱の内側に断熱材を充填する内断熱を組み合わせた「ダブル断熱工法」を標準採用しています。これにより、家全体で均一な快適温度を実現します。この仕組みは、理科の授業で学ぶ「断熱・保温」の知識が基礎となっています。
小学校のカリキュラムには「家づくり」や「住まい」という科目は存在しませんが、普段の学習で得た知識を活用しながら、最も身近な「家」を題材に創造力を養う機会を提供したいと考え、授業内容を検討しました。ここからは、具体的な授業の内容と様子をご紹介します。
授業の様子
場所は東京都にある武蔵村山市立第十小学校。6年生80名を対象に実施。講師は無印良品の家 新宿家センターのインフィルコーディネーター、伊賀野が務めました。
1限目 無印良品の家と快適な住まいについて
無印良品の家の特長と快適な住まいの仕組みについて解説しました。具体的には、発泡スチロールを使って断熱性能を実際に体感いただき、CG映像を用いて太陽光を活用した設計を解説しました。これらの体験を通じて、環境に配慮した住まいづくりへの理解を深めていただきました。
保冷剤を発泡スチロールとアクリルケースの中に入れて、箱の中の冷たさを体感(発泡スチロールの方が保冷効果が高いので冷たく感じることを体感)
2限目 自分が住みたい場所を考えよう
2限目では、架空の町のMAPを使用したワークショップを実施。道路との関係や周辺環境を考慮しながら、自分が住みたい場所や優先したい要素について考えを巡らせてもらいました。
どの方角の道路に面しているか、日当たりがどうか、周辺にはどんな施設があるか6パターンの土地から自分が優先したい暮らしに適した土地を選んでいただきました。
自分が住みたい土地が決まったら、近くの人と選んだ土地とその理由を話し合ってもらいました
3限目 理想の家を考えよう
3限目(1・2限目の2週間後に実施)は、これまでの学びを活かして、児童一人ひとりが理想の住まいの間取りを作成。作品を発表し合うことで、様々な視点から「住まい」について考える機会となりました。
一部の児童の図面を実際に使用しているシミュレーターを使って3D化。
児童のみなさんが描いた間取りの一部。みなさん自分の理想の住まいを丁寧に且つ自由な発想で描いていました
ここで児童のみなさんの感想を少しだけご紹介します。
・家の間取りを考えている時はとてもワクワクしながらできました。将来住む家は夢があるからだと思います。この授業を通じて将来どんな生活をするのかをよく考えることができました。
・木の家が一番気に入りました。木の家は日光を大きく取り入れて、風が家中に行きわたるという点が良かったです。木の家は「永く使える、変えられる」ということを表している家だということがわかりました。
・今回の授業を通じて様々な工夫や家の魅力を知ることができとても楽しかったです。特に「夏と冬で太陽の光をうまく取り入れる」という工夫がとても面白かったです。そういった点も全部考えてお客さまに提案していてすごいなと思いました。
また、今回この出前授業をご提案いただいたお施主様からは、
・自分の家を考えるというワクワクする課題から、家に必要な要素を自然と学べていました。家も含めた様々な建築物に対して、見方・考え方が大きく変わったように思います。
・理科や社会、家庭科の学習内容に絡めた授業展開で、子供たちの興味関心をくすぐる内容が良かったです。理想の家づくりだけでなく、環境づくりにも視点を広げられる授業でとても楽しめました。
・理想の家づくりをする中で、自然と、将来の自分の姿や、大切にしているものや価値観へと思考が広がっていました。家づくりを通して、新たな自分発見に繋がったと思います。
という感想をいただきました。
この出前授業を通じて児童のみなさんには、普段の学習で得た知識を総合的に活用しながら、自分たちの理想とする住まいについて考えを深めるきっかけになればと思い、企画したのですが、実際は、こちらの想像をはるかに超える柔軟な発想力で、それぞれが考える理想の住まいをかたちにしていただきました。
今後も無印良品の家では、子どもたちが住まいについて考えるきっかけとなる取り組みを様々な形で実施していきたいと思います。