泊まれる陽の家:何もせずにアートと過ごす石川県七尾市の『tonot』

住まいのかたち | 2024.4.29

昨年4月、石川県七尾市にオープンした、「陽の家」に泊まれる宿泊施設『tonot/トノット』。
『tonot』の魅力を多くの人に知っていただくため、昨年11月にMUJI HOUSEにて撮影・取材し、年明けに記事の公開を予定しておりました。

しかし年始に起きた能登半島地震により被災、この地域は1万棟を超える家屋被害が発生しました。周囲は能登瓦を用いた日本家屋が立ち並ぶエリアで、住宅の多くが全壊または半壊、道路も陥没や段差といった被害を受けました。
宿泊施設内に展示されたアート作品である陶器スピーカーや器は破損してしまいましたが、幸いにも「陽の家」自体はほぼ損傷がない状態で残っています。
水道や電気、交通インフラは復旧しているのですが、周囲の家屋の解体に向けた作業が始まっており、『tonot』も復興に携わる方々などを優先して利用してもらっている状況です。
現在周辺の飲食店で営業再開している店舗は半数ほどで、観光で訪れた人を以前のように受け入れられるのはもう少し先になりそうですが、一歩ずつ前へ進んでいます。

今後受け入れの体制が十分に整い、七尾市の観光を楽しんでいただける状態になった際に、一人でも多くの方に『tonot』に訪れていただければと思い、このタイミングで記事を公開することにいたしました。

※以下は昨年11月に撮影・作成した記事です。

アートの気配を感じる『陽の家』

無印良品が販売する平家『陽の家』に宿泊できる施設があることをご存じですか? 石川県七尾市にある、アートと泊まる一棟貸しの宿『tonot/トノット』は2023年4月にオープンしたばかり。オーナーであり陶磁器作家でもあるアサ佳さんと、同じく陶磁器作家で奥さまである恵美さんに、『陽の家』を選んだ理由やこだわりを教えてもらいました。

もともと恵美さんのご実家の持ち物だったというこの場所は、目の前をのと鉄道が走り、少し車を走らせると海へ出られるロケーション。『陽の家』一棟貸しのため、もちろん一日一組限定で、たくさんの自然に囲まれた空間でプライベートな時間を過ごすことができます。夏には庭でバーベキューや花火を楽しむことができ、冬には雪景色が広がります。

お部屋の中には壁掛けのものから大きなスピーカーまで、至るところにオーナー・アサ佳さんの作品が飾られています。ランプシェードは灯りをつけると見え方が変わるため、時間帯や季節によって様々な表情を見せてくれます。器やカップは自由に使っていいのだそう。

「最初から作品を飾りたいと思っていたので、階段などの建具がなく、シンプルで全てを受け止めてくれる『陽の家』を選びました。作品はギャラリーに卸したり百貨店で販売したりもするのですが、手に取って実際に使う機会は無いので、ぜひ使ってみてほしいですね」(アサ佳さん)
「実際に使ってみて、生活の中に作品が入ったときにどうなるかを想像してもらえると思います」(恵美さん)
七尾市街のフレンチレストラン『ひのともり』日野シェフを招いての「出張シェフプラン」も用意されています。旬の魚や能登牛などの地元食材を使い、オープンキッチンにて目の前で調理された料理を、アサ佳さんの器が彩る贅沢なディナータイム。ぜひ大切な人と一緒に体験してみてください。

“何もしない”という過ごし方

4〜5人のグループや、家族で訪れる人が多いという『tonot』。周辺の海ではSUPや釣りなどのアクティビティも楽しめますが、“何もしない”のもこの場所ならではの過ごし方です。広々とした空間でアートとともにくつろいだり、お風呂から箱庭を眺めたり。能登の土地と『陽の家』の魅力を存分に感じることができます。

タブレットでチェックイン・チェックアウトができる非接触決済を採用しているため、最初から最後までスタッフと対面することはありません。より一層プライベート感が強まりそうですね。

『tonot』という宿名の由来は、現在お二人がお住まいの岐阜県の東濃地方から。東濃(tono)の陶芸を能登(noto)に繋ぐという気持ちを込めてこの名前に決めたそう。”to 能登(noto)” と言った能登へいらっしゃいという意味もあるということです。

「能登の文化を愛してもらいたい」という思いから、公式WEBサイトでは周辺のアクティビティ施設やおしゃれなカフェ、おいしいレストランなども詳しく紹介しています。プライベートな空間と地域のつながり、どちらも感じられる贅沢な宿泊をぜひ。


この度の震災に際し、地域の皆様の1日も早い復興をお祈りいたします。
最後に、オーナーであるアサ佳さまより無印良品の家づくりを検討中の方へメッセージをいただきました。

震度6に耐えた、陽の家。
柔と剛のバランスが大事だったと実感しています。
地盤改良した、頑丈な土台に立ち、
外壁は木材であった事で伸縮性があり、ひび割れ等の被害も出ませんでした。
低重心の家具配置が功を奏し、建物に固定され、一体となったインテリアや装飾は健在です。

能登の一棟貸しの宿tonotを実際にご覧いただき、みなさまの今後に地震に備え、耐えた家の作りやインテリアはどうなっているのか、
安心して暮らせる、今後のお住まいの参考にしていただけたらと思います。

能登の観光、宿の再建を支援するためのクラウドファンディングも実施しています。

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