木で無印良品の店舗をつくっています。
住まいのかたち | 2024.4.8
私たちMUJI HOUSEは、2002年の「木の家」販売開始以来、戸建住宅やマンション・団地のリノベーションといった住まいを作り続けてきました。実はいま、20年間住宅を作るなかで培ってきた技術や経験を生かし、無印良品の大型路面店の建築もおこなっています。お店の詳しい情報は今後ご案内させていただくとして、今回は私たちの、店舗建築プロジェクトの取り組みに関する背景をご紹介させていただきます。
木で店舗をつくる理由
イメージをご覧いただいてわかる通り、木のもつ天然素材ならではの温かみが印象的な店舗です。改めて、木で建物を作る意義について考えてみたいと思います。
日本は国土の2/3を森林が占める、世界で有数の森林国です。豊富な森林資源をもつ日本では、長きにわたって木造住宅が私たちのくらしを支えてきました。木造住宅は湿気を吸収・放出して湿度を一定に保つ機能があり、高温多湿の日本の気候でも快適に暮らすことができる、という点も、木造住宅が好まれてきたポイントです。
近年、持続可能な資源として、あらためて木材への注目が高まっています。戸建住宅に留まらず、マンションや公共施設といった中高層の建造物の素材として木が使われる、というニュースも国内外問わず目にする機会が増えました。
森林資源には、伐る・使う・植える・育てる…というサイクルを繰り返すことで、循環利用できるという特長があります。
森林の多面的な機能を活用するためには、ただ木が植えられているだけでは十分ではありません。間伐などの整備が行われることで、日光が行き届き、木の成長が促進されるだけでなく、下草が生えることで土壌が育まれて土砂崩れを防ぐ、といった国土保全の機能を発揮します。また、成長期の若い樹木ほどCO2の吸収量が大きいこともわかっています。
逆に木材が活用されないと、森林が人の手で管理されづらくなります。
現に、日本の森林のうち約4割を占める人工林では、循環が正しく行われず以下のような負のスパイラルが起きている場所も多くあります。
・間伐が行われず密集したままなので、樹木は細く、根も発達しない
・土壌が劣化し土砂崩れが起こりやすくなる
・CO2の吸収量が低下 ・農山村地域の活力低下
このように、健全な森林を育むためには、森林の循環利用が欠かせません。木を使うことは、この循環を促し森林を守ることにもつながるのです。
良品計画グループでは「5年で10,000㎥の木材活用」という目標を掲げています。わたしたちMUJI HOUSEも、無印良品木造店舗プロジェクトの拡大はもちろんのこと、宿泊施設等、他用途の大規模木造建築物の設計、施工などを視野に入れて、意匠、技術の開発に挑戦していきます。
2023年5月、MUJI HOUSEおよび良品計画は、農林水産省と「木材利用拡大に関する建築物木材利用促進協定」を締結しました。
本協定は、身の回りの物を機に変える、木を暮らしに取り入れる、建築物を木造・木質化するなど、木の利用を通じて持続可能な社会へチェンジする行動「ウッド・チェンジ」の促進により、脱炭素社会および持続可能な社会の実現を目指すものです。
MUJI HOUSEでは、店舗建設における国産木材の積極的な活用により、構想の達成に寄与したいと考えています。
耐震性を高め、大空間を実現する。
当然、日本は地震大国ですから、建物をつくるうえで安心して使える「耐震性」も考える必要があります。
無印良品の住宅商品第一号「木の家」は、その名の通り「木」でできた木造住宅です。現在4種類ある無印良品の家ですが、発売当初から一貫して、耐震性の高い木造住宅を建築する技術「SE構法」を採用してきました。
SE構法とは、強度が高く品質の安定した構造用集成材を耐久性の高い金物で接合することで、耐震性の高い空間を設計できる構造です。従来の木造住宅の工法とは異なり、柱、梁、最低限の耐力壁で強度を確保できるため、耐震性を保ったまま、開放的で自由度の高い空間を実現できます。
木造の建物は一般的に、壁によって建物を支える「壁式構造」で作られることが多く、この構造ですと耐震性の高い丈夫な建物を作るためには、どうしても壁の数を増やさなければなりません。SE構法は、鉄筋コンクリート造の建物などで用いられる「ラーメン構造」を採用しています。壁ではなく柱で建物を支える構造のため、たとえば体育館やコンサートホールのような、大きな空間を木造でつくることも可能になるのです。
今後、コラムでも私たちの大切にしている店舗建築の考え方や、新しくできるお店の見どころなどをご紹介していく予定です。お楽しみに。
\展示に参加します/
木と生きる
木の可能性を知る、6日間
日時|2024年4月16日(火)~21日(日)
場所|東京ミッドタウン日比谷
森林、歴史、文化、建築など、多様な側面からスポットライトを当て、持続的に「木と生きる」ための学びを深める6日間。木の可能性を見にいきませんか?