「無印良品の家」はなぜ住宅展示場にないのでしょう?
住まいのかたち | 2021.5.4
家を建てようと思ったときに行くところ
一戸建てを新築しよう。または、検討してみよう。と思ったとき、みなさんはまずどういうアクションを起こすでしょうか?
まずは、インターネットなどで情報収集。その結果、気になる家やハウスメーカー、工務店が見つかったら、実際にその家を見たり、空間や快適性を体験したりするために、住宅展示場を訪れるという方が多いのではないでしょうか。
家を建てようと考えた100名の方に、実際に住宅展示場に行ったかどうかのアンケート結果が、下のグラフです。
住宅の購入検討者のうち、実に80%の方が、一度は住宅展示場に行ったことがある、となっています。
確かに多くの住宅展示場(住宅公園、ハウジングギャラリー、などの名称もあります)は、10社前後~80社以上(!)のハウスメーカーや工務店のモデルハウスが一堂に会しているので、住宅を検討し始めたら一度は行ってみるとよいかもしれません。
実際に、展示場に行ったことがある、と答えた方へのインタビューも同アンケート結果には掲載されていますが、多くの方が、
「いろんなハウスメーカーを比較するうえで行きました。メーカーごと売りにしているものが違うし、営業さんの話を聞くだけでも勉強になる」。
といった主旨のことを答えられています。
このような住宅検討者のニーズに応えるべく、住宅展示場は全国に300以上あるといわれており、いわゆるハウスメーカーと呼ばれる住宅事業者は、必ずどこかの展示場にモデルハウスを出展されています。
多くの住宅展示場が、公園のようなつくりになっていて、土日ともなるといろいろなイベントも開かれ、家族連れでにぎわっているようです。
もちろん、自由に各モデルハウスを見学し、営業の方の詳しい説明も聞けるので、インターネットなどの情報である程度絞った住宅会社を比較検討するのには、とても便利です。
当然、住宅会社も、他社と「比較検討される」ことを前提に、各社のデザイン力や技術力をモデルハウスに結集するので、住宅展示場に建つモデルハウスはどれも趣向が凝らされ、最新の技術や設備を惜しげもなく投入されているので、見ているだけで楽しいし、いろいろと参考になりそうですね。
「無印良品の家」はなぜ住宅展示場にないのでしょう?
ところで、「無印良品の家」は、現在全国に34のモデルハウスがありますが、この住宅業界では常識といってもよい住宅展示場への出展は、一切していません。
その理由は、無印良品のすべての商品の開発思想に遡ります。
私たちの商品開発の考え方は、1980年のブランド創生以来変わっていません。環境・社会に配慮した3つの視点、①素材の選択、②工程の点検、③包装の簡略化、を守りながら商品をつくり続けています。地球環境や生産者に配慮した素材を選び、すべての工程において無駄を省き、本当に必要なものを本当に必要なかたちでお客様に提供することを目指した、実質本位のものづくりです。
無印良品の商品開発について
家の場合も全く同じで、住宅業界の常識に捉われず、家として本当に必要なもの、必要なかたちとは何かを問い続けてきました。例えば、「①素材の選択」では、「木の家」の外壁に耐久性とメンテナンスの容易さから、開発当時には住宅に使われることはほとんどなかった「ガルバリウム鋼板」を標準採用としています。また、「②工程の点検」では、環境性能の高い木造でありながら、工場で全ての構造材を加工し、現場では強靭なジョイント金物でそれらを組み合わせるだけで、均一な精度と高い耐震性を得られる「SE構法」を全ての商品に採用しています。
そして「③包装の簡略化」ですが、こちらは家ですから包装はしないのですが(笑)、無印良品の家を検討される方にとってどんなかたちで家を見ていただくことが本当に必要とされているかを考え抜いた結論が、住宅展示場には出展しない、ということでした。
住宅展示場は、ハウスメーカーを比較検討するのには大変便利かもしれませんが、各社がデザイン力や技術力を競い合うあまり、ともすると一般には手の届きにくい豪邸(住宅展示場のモデルハウスはほとんどが延床70坪以上、モデルハウスそのものの価格は聞いても教えてくれません笑)となりがちなので、簡素な器であることを目指している「無印良品の家」には「場違い」感が否めません。
そこで、「無印良品の家」を検討していただく方にとって最良の「売り方」は、身近な住宅地に普通に建つ姿を見ていただくことだと考え、すべてのモデルハウスは、35坪前後の「等身大」で、ほかの無印良品の商品同様プライスタグをつけ、住宅地にそっとたたずむ、というかたちとしたのです。
超等身大の「木の家」モデル棟、東京と大阪に同時オープン
そんな無印良品の家のモデルハウスに、この度、東京都調布市、大阪府豊中市の人気住宅地に、等身大も等身大の延床25坪前後のモデル棟が加わりました。
都市部の人気住宅地は、やはり土地の価格も高く、潤沢な敷地を得ることが難しいので、このような場所での「等身大」は、このモデル棟のような25坪前後だと考えました。
ただこちらのモデル棟は、あまりに等身大で、大勢の方が一度には入れないので(感染予防対策も含めて)、完全予約制で見ていただくこととして、ただいま絶賛予約受付中です(東京都調布市「木の家」モデル棟・大阪府豊中市「木の家」モデル棟)。
百聞は一見に如かず。25坪でも、「木の家」はやはり明るくて開放的で、快適!をぜひこの新モデル棟で体感してみてください。
また、住宅展示場の在り方について、みなさんはどのように考えますか?
ぜひ、みなさんのご意見をお聞かせください。