家に帰ったら「ただいま」という前に服を脱いでシャワーを浴びる、という「新しい生活様式」

住まいのかたち | 2020.5.26

ほんの少し前までは、誰も想像もしなかった新型コロナウィルス感染拡大による「緊急事態宣言」が発令されてから40日以上になります。その間、多くの方がこれまで経験がないくらい長い、いわゆる「おうち時間」を体験されているのではないでしょうか。
そんななか、東京や大阪などの8都道府県での緊急事態宣言解除延期の際に、厚生労働省から、新型コロナウィルスを想定した「新しい生活様式」が公表されました。

「新しい生活様式」と聞いて、テレワークやローテーション勤務、時差通勤などを思い浮かべた方も多いのではないでしょうか。もちろん、それらは、「働き方の新しいスタイル」として盛り込まれています。
しかし今回の提言で印象的なのは、そういう新規性と話題性のある項目と並んで、日常の暮らしのなかで大切なこととして、「手洗い」という言葉が次のように3回も出てくることです。

・家に帰ったらまず手や顔を洗う
・手洗いは30秒程度かけて水と石けんで丁寧に洗う
・まめに手洗い・手指消毒

「手洗い」なんて別に新しい生活様式でも何でもないと思うのですが、絶対にこれからの暮らしにかかせない習慣ということなのでしょう。手や指は、自身の口や鼻、目へウィルスを直接届ける優秀な運び屋なのですから。

ところで、何かに付着したウィルスが自然崩壊するまでの時間は、ダンボールの場合で1日、布だと2日、プラスチック系で3日、そしてガラスだと4日後と、意外と長いという実験結果が公表されています。
そうなると、人と人の密な接触だけでなく、これらを介しての感染も十分に考えられます。しかも電車のつり革やエレベーターのボタンなど手で触れることの多いものだけでなく、たとえば電車の座席に座れば、そのシートの布に付着していたウィルスは、ズボンやジャケットに移り、家に持ち込まれることになります。
また、私たちは無意識のうちに髪の毛や顔、鼻、口などを手で触ります。マスクをしていれば、口や鼻への接触は防げますが、髪の毛や顔は手からウィルスが移っている可能性が高いわけです。
そう考えると、家にウィルスを持ち込まないためには、帰ってすぐに手や顔を丹念に洗うだけでは不十分と思えてきます。

外に着て出た服は玄関で脱いで、部屋には持ち込むべきではない?
髪の毛や体を洗う(シャワーを浴びる)前にソファに座るべきではない?

もちろん、できるならそうすべきだと思います。しかし、玄関でズボンを脱いでリビングを歩きまわるのは、いくら家族の前でもちょっと気が引けます(笑)。

例えば、3月31日のコラム「住み継がれる家のかたち(テレワーク対応などのプラン考察は、こちらのコラムをご覧ください)で、ライフスタイルの変化に応じて変えられる間取りのシミュレーションに使った「木の家」のプランで考えてみましょう。
実は、このプランの場合、帰ってからどこにも触れずに、最短距離で洗面脱衣室に直行して、シャワーを浴びることは可能です。

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外出から帰ってきたら、靴と一緒にジャケットとズボンも脱いで、あらかじめ取り付けてあった「壁に付けられる家具・フック」にかけてしまいます(ここにかけて放置しておけば、2日後にはウィルスは自然消滅します)。
玄関ホールから洗面脱衣室までは扉が2枚ありますが、どちらも引き戸ですので、帰宅時には開けたまま(引き戸の良いところは開け放しにしておいてもドアが邪魔にならないところです)にしておけば、洗う前の手でドアノブなど、どこにも触ることなく洗面脱衣室に直行して、手を洗い、シャツや靴下は洗濯機に放り込み、そのままシャワーを浴びれば、完璧な「新しい生活様式」です(笑)。一瞬ではありますが、リビングを下着のまま通る、という点を除いては。
年頃のお嬢さんなど居たら、ばい菌を見るような目で見られるでしょう。ウィルス対策でやっているのに、ばい菌扱いは理不尽ですが、「ただいまー」と明るくいいながら走り抜けるしかありません(汗)。

そこで、この点を改善するために、少しだけプランを変えてみました。

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このように、少しだけ玄関ホールを拡張することで、本格的に外出着を置くスペースと、洗面脱衣室への直行ルートができました。下着姿になっても、家族と顔をあわせて「ただいま」という前に、洗面脱衣室へ直行できるのです!

みんなで力を合わせれば、きっとコロナウィルス禍は克服できるでしょう。しかし、ウィルスはインフルエンザをはじめ、完全に消え去ることはありません。また新たなウィルスが猛威を振るう可能性もあります。
ここのところ、よく「アフターコロナ」といわれますが、たしかに今回のコロナ禍の前後では、私たちの意識も環境も変わり、まさに「新しい生活様式」が生まれていく気運があります。
働き方改革や、二拠点居住、田舎暮らしなど、ドラスティックな社会のしくみの変革も進んでいくでしょう。
しかし、帰宅時の丁寧な手洗いはもちろん、シャワーを浴びる、外に持ち出したものは部屋に持ち込まない、というような、一人一人の日常の暮らしの新しいかたちは、いますぐにも考えていくべきではないでしょうか。

どうしたら、家族が真に安心して団らんできる「おうち時間」を過ごせるのか、家の在り方は今後ますます重要になっていきます。

みなさんはこのような日常の「新しい生活様式」をどう考えられますか?
神経質すぎる、いや、もっとこんな風にすべき、など多数のご意見お待ちしております。