住み継がれる家のかたち
住まいのかたち | 2020.3.31
「家の価値」について考える2
前回コラムで、「家の寿命」について考えてみました。
日本の家の寿命は30年前後とよくいわれますが、これはあくまで解体される家の平均のことで、建っている家を分析すると平均寿命は60年を超えるということがわかりました。
上の図をみると、木造の専用住宅の平均寿命は鉄骨よりながく、鉄筋コンクリートともあまり変わらないことが解ります。また、同じ木造でもアパートは専用住宅よりも15年も短くなっています。アパートの場合はオーナーが替わったり、収益が得られなくなったときに壊されることが多いからでしょう。
こうして見ると、建物の平均寿命は構造(鉄筋コンクリート造か木造か)にはあまり関係がなく、用途(使われ方)や形態によるところが大きそうです。
つまり、物理的な寿命が来て、やむなく壊されるのではなく、使われなく(使えなく)なったときに壊されることが多い、ということではないでしょうか。
無印良品の家では、「永く使える家」の条件として、「耐久性(高耐震)、快適性(高断熱)に加えて、暮らしの変化(あるいは住む人の交代)にともなって暮らし方を自由に変えられること」と考え、提唱してきました。
そこで、今回は無印良品の家「木の家」で、暮らし方をどのように変えていけるかについて、シミュレーション(妄想)してみます。
モデルプラン:「木の家」5間半×4間(延床面積30.8坪)
北側に並べた収納家具、その収納を隠す引き戸、机以外は何も置かずに、まだ子ども2人は小さいので、親子4人、その日の気分で好きなところに布団を敷いて川の字で寝ます。毎日が修学旅行気分です(笑)。
長女のお友達や、ママ友、パパ友たちが大広間のような2階に集まってきて、いつも賑やかです。こんなに人が2階に来るとは思っていなかったので、収納を隠せるようにしておいて大正解!
寝室はあえて小さめにして、お父さんと子どもたちの机を並べたフリースペースをつくりました。フリースペースをワークスペースにすることで、「子どもたちは、遊ぶときとお勉強するときの切り替えがちゃんとできるようになれば」という想いも込めています(フリースペースの机に居ないときは勉強していないとき?笑)。
お父さんも仕事や読み物をしながら、ときどき長女の宿題を見てあげることが、息抜きにもなっているようです。
それにともない、お父さんの机はフリースペースから主寝室に移動して書斎風にしました。また、ここだけは大工さんにお願いして、吹き抜けや階段の腰までの壁を天井までの壁に変え、入り口には引き戸も付けました。最近はテレワークで家で仕事をする時間が増えたので、集中できるこの書斎が大活躍しています。
子どもたちも全員独立して夫婦2人だけで暮らすようになったので、子ども部屋側の家具をすべて撤去して、また最初の一室空間に戻しました。この一室空間(大広間)には、孫たちがよく泊まりに来て、昼は鬼ごっこ、夜は枕投げなどをしていつも大騒ぎです。平日の昼間は、60歳を過ぎてからはじめた趣味のヨガを近所の方々もお呼びしてこのスペースで楽しんでいます。
「孫たちが大きくなって遊びに来ることも少なくなったら、自分たちはもっと小さな家かマンションに移って、ちょうどこの家を建てたころの自分の年齢になった娘に、この家を引き継ごうか」と話しています。もしかすると売却するかもしれません。わたしたちがそうであったように、その時々の暮らし方にあわせて部屋をアレンジして暮らそう、という方がきっといるはずですから。
このように、何度でもその時々の暮らし方にあわせてリセットできる家なら、次から次へと多くの家族に住み継がれて行くのではないでしょうか。
家が30年で壊されるということは、「その家を建てた1組の家族のために家が役割を終えてしまう」ということです。それよりも、1軒の家がさまざまな家族に住み継がれていくことで、その家は社会のインフラとなり、結果的に社会全体が経済的にも精神的にも豊かになっていくはずです。
そのためには、今回のモデルプランのように間取りが固定されずに、昔の日本家屋のような自由に編集する余地があり、いつでももとのかたちにリセットできる、ということが大事なのではないでしょうか。
みなさんは、このようなかたちで住み継がれていく家について、どのように考えられますか?
ぜひ、ご意見・ご感想をお聞かせください。