なぜ無印良品の家は、「自由設計」ではないのでしょうか

コラム | 2015.9.1

「無印良品の家」は、質の良い暮らしのための様々な「住まいのかたち」を考察し、ご提供しています。その中のひとつのかたちが、「木の家」に代表される「戸建て注文住宅」です。
日本では、「戸建て注文住宅」というと、ほとんどの方が「自由設計」を思い浮かべるのではないでしょうか。たしかに、せっかく「自分」だけのための一戸建てを建てるのだから、「自分」の思うままに建てたい、と考えるのが普通かもしれません。
また、「自分」の暮らし方は「自分」が一番わかっているのだから、その暮らしにあった家を「自分」が考えるのが一番良いのだ、とも一般的に考えられているようです。
そのニーズにあわせて、本来均質な住宅を廉価で供給する目的であったはずのプレファブ(工業化)住宅でさえ、「均質ではなく」自由自在に設計できることを売りにするほど、日本の家づくりは自由設計がスタンダードになっています。

たしかに「自分」が「自分」のお金で「自分」のために建てる家ですから、「自分」の思うように建てたい、というのは当たり前かもしれません。
しかし、先ほどから連呼している、この「自分」というのが、実は曲者です。なぜなら、今ここに居る「自分」は、いつまでも今の「自分」ではないからです。15年後には全く違う家族構成の全く異なる暮らしを望む自分になっているかもしれません。30年後には、「他人」が譲り受けて暮らしているかもしれません。その未来の「自分」は、今の自分の暮らしに合わせた家を、今と同じように「最高」と思えるでしょうか。
「暮らしのかたち」は無数にあります。そう考えると、「今の自分の暮らし」は、その中のたった一つの特別なかたちであり、その「暮らしのかたち」だけのために特別につくられていればいるほど、残念ながらその他の無数の暮らしのかたちに合う確率は低くなると言わざるを得ません。

そこで無印良品では、家は、「いつでも、誰にでも、何処ででも」快適であるべき、つまり無数の暮らしのかたちに寄り添うように変えられるべきだと考えています。そこに住まう「自分」と「暮らし」が変わるなら、その変化に合わせて「変われる家」です。

新しい暮らしのかたちに家が合わなくなったら、リフォームやリノベーションをすればよい、と思われる方もいるかもしれません。もちろん、それは「変われない家」を長く使う手法として、とても有効だと思います。
無印良品の家は、大がかりな「リノベーション」をしなくても、その時々の暮らしのかたちに合わせられる家なのです。
そんなことできるの?と思われるかもしれません。しかし答えは簡単でした。最初から何もつくり込まなければ良いのです。

下の図は、木の家の価格表にあるプランです。このように、木の家には「間取り」という考え方がありません。トイレ、お風呂以外には壁もドアもないのです。これなら、そのときの暮らしに一番合うように家を使い尽くせるわけです。

「理屈はそうだけど、こんなに間仕切りのない家ではそもそも暮らせないよ。」と思う方も多いでしょう。
しかし私たち日本人の住文化には、もともと「個室」という発想はありませんでした。家の中を仕切るのは基本、襖(ふすま)だけで、それを開けたり閉めたりすることで、一つの空間を上手に、多様に使いつくしていました。例えば家は小さくても、何十人も集まる冠婚葬祭さえ自分の家で行えていたことを考えると、大きな家に部屋をたくさんつくり、それぞれに個別の機能を与えようとする欧米式住宅ではないこの日本式の家のかたちは、あり得るのではないでしょうか。

先ほど「答えは簡単でした」と書きましたが、確かにこの一室空間の発想は簡単なのですが、発想がシンプルだからこそ、この家のかたちに、「安全性、快適性、耐久性」を合わせ持たせるには、高度な技術と、ロジカルな設計が不可欠となります。(前回のコラム「新性能、価格の理由」もぜひご覧ください。)
日本のスタンダードとなっている「自分が住む家は自分が好きに設計」方式では、「安全性、快適性、耐久性」が確保されない、暑くて寒くて壊れやすい「ただの箱」となってしまう恐れがあるのです。

無印良品の家の一室空間は、住み手が自由に設計する「自由設計の家」ではない理由がここにあります。
住み手が「自由に設計する家」ではなく、「自由に暮らせる家」を、「安全性、快適性、耐久性」と両立させるために考えつくされた「商品」としてでなければ、この自由な空間は供給できないのです。
もちろん、玄関・水まわり・吹抜け・階段などの位置、大きさは、敷地条件などを鑑みて変更可能なところもありますが、将来にわたって自由に暮らすための基本的なデザイン、性能、品質は、「商品」として一定のルールにより確保できたものを供給する、というのが無印良品の家の考え方なのです。

家に対する価値観は多種多様ですから、この考え方、そしてなによりこの考え方に基づいてつくられる家のかたちにご賛同いただける方に住んでいただければと思っています。すでに1,500世帯もの方々が実際に無印良品の家で暮らしていただいており、その満足ぶりは、実際に入居されている方から直接、住みごこちを聞くことができる「入居者見学会」でもご確認いただけます。
次回このコラムでは、そのたくさんの事例と、自由な暮らし方、間仕切りの仕方についてご紹介したいと思います。
みなさんは、このような「家のつくりかた、暮らし方」についてどのように考えられますか。ぜひご意見をお聞かせください。