マンションにおける「基準階」の間取り

住まいのかたち | 2015.2.17

高層マンションでは通常「基準階」と呼ばれる住棟の基準となる平面プランがあります。つまり「金太郎アメ」の金太郎の顔です。どこを切っても同じ顔になる平面プラン。それが「基準階」です。

まず、日本でよく見かける高層マンションの基準階プランを見てみましょう。

地震の多い日本では、構造計算によって裏付けられた柱、梁(はり)が規則的に並んでいて、地震に強い平面構成になっています。また、エレベーターや機械室を中心に「コア」を形成し、両脇の吹き抜け部分が光と風を通し、生活環境が陰湿にならないよう工夫されています。
非常に機能的で無駄がなく、我々日本人は全く違和感がありません。しかしどれも同じ形をしているので、面白みにかけます。

日本でよく見かけるタワーマンション。画一的に柱梁が並ぶ。

では、住宅密集地の代表格、香港ではどうなのでしょうか?

外観を見てみると、なんだかガタガタしています。それも1つや2つではありません。そのほとんどがガタガタしています! 全くもって意味がわかりません(笑)。とっても不思議な光景なのです。これって日本人だからそう思うのでしょうか?

次に香港の基準階プランを見てみましょう。まるで雪の結晶のようなかたちをしています。どうしてこんな平面構成なのでしょうか?

雪の結晶のようなかたちの香港の基準階プラン

よく見てみると各住戸が隣の住戸と離れていて、隣の壁をお互い共有していないことがわかります。
隣の部屋との間に空間があることで、様々な方角に対して窓の位置も自由に設計できるというメリットがあります。
日本の感覚だと、単純に隣人との騒音トラブルがなくて良いと思う反面、隣に部屋がないので断熱性という意味では寒くなるのではないか、と思ってしまいます。
しかも香港では、もともと断熱材を設置することはほとんどなく、コンクリートに塗装で仕上がっていることが多いのです。日本では、各住戸が離れていることは断熱性能上デメリットになりますが、そのあたりは亜熱帯地域に属する香港だから可能なのかもしれません。

前回のコラム「香港の団地とリノベーション事情」で、香港の全人口の99%が集合住宅に居住していると紹介しましたが、香港の集合住宅は、四方が外気に包まれた、まさに戸建てをそのまま積み重ねてできたという感覚です。

「日本の高層マンション」(左)と「香港の高層マンション」(右)の違い。
日本は構造優先。地震のない香港は、戸建てが積み重なったイメージ。

地震が多い日本では、構造的な制約がどうしても多くなってしまいますが、香港のように地震のない国では、より自由な発想で集合住宅を設計できます。
狭い土地で集合住宅に住むという中でも、それをまたポジティブに捉え、自由に発想することが、より暮らしを豊かにするのではないでしょうか。
マンションにおける「基準階」の間取り、いかがでしたでしょうか。

皆さんのご意見をぜひお聞かせください。