住まいと地域医療

住まいのかたち | 2013.6.11

日本人の平均寿命は医療のおかげもあり、男性79歳、女性85歳と長寿命です。一方で、東京のある団地では、高齢者率が40%を超えて孤独死が問題になっているという話も聞きます。
日本は、これまで誰も経験したことのないような人口減少と高齢化社会に突入しようとしていますが、誰もが最期まで健康で生きたいと思っています。そのような時代に向けて、住宅と、そして特に高齢者にとって重要な医療も変わっていかなくてはならないのではないでしょうか。

東京での1世帯の家族数はすでに2人をきって、2012年は1.9人。今後ますます一人世帯が増えていくのでしょう。そうした現実に目を向けると、現在供給されている住宅はどうも現状にあっていないようにも思います。個人で使うスペースはもっと少なく最小単位にして、共同で使えるキッチンやカフェ、ライブラリー、工房などといったものを共有するような暮らし方がありそうです。
高齢になっても元気で働く人は多いでしょう。若い人が利用するようなオープンオフィスのような空間もあったらいいかもしれません。65歳をすぎてもパソコンを使いこなし、一人で仕事をこなす人も今は多いはずです。

ここでどうしても課題となるのが医療の問題です。元気なうちはいいのですが、具合が悪くなり始めると、病院に通うのもひと仕事です。かといって、マンション内に病院があるというのも現実的ではありません。そこで、例えば医療の巡回サービスというのがあったらどうでしょうか。週に1回、医者が住んでいるところに通ってくる。人数が少なければ午前午後に分けて医者が地域を回るのです。
医者に通うのでなく医者がやってくる。これからの福祉や医療はこうした発想の転換が必要ではないでしょうか。医者不足が課題となる地方ではなおさらです。医者だけではありません、行政サービスや図書館なども巡回してくれるとよいでしょう。
長生きになった人間の寿命、でもどうせ長く生きているのだからその間は健康で元気にくらしたい。延命治療ではなくて元気に暮らすためにも、地域での医療のありかたにはこれからさまざまな知恵が必要な気がするのです。皆さんはどう思われますか。