家と家の間を共有する
住まいのかたち | 2013.4.9
今回のコラムでは、家と家の間の「隙間」について考えてみたいと思います。
敷地いっぱいに建てる日本の家屋。そもそもその家と家の隙間に塀を建ててしまうのは、風通しも悪いし、採光も悪くなります。塀を建てないと、プライバシーやセキュリティの面で不安があるという方もいらっしゃるかもしれませんが、こうした問題を解決できる方法があるようにも思います。
例えば、簡単に空間を共有できる方法として、大きな木を植えてどこの家からも見えるしつらえにする、というのはどうでしょうか。プライベートとパブリックの部分をわけつつ、隣の家がお互いに空間を共有し、お互いに配慮をすることで、かえってお互いの目が届くようなコミュニティとなるかもしれません。
間取り図を書いてみました。6つの家に間にキッチンやテーブル、ベンチを置いて、お茶を飲んだり、時にはいっしょに料理をしたり、お話をしたりというのはどうでしょう。
さらに、家と家の間にちょっとした菜園をつくり、隣の家と一緒に大きな畑を作ってみるのはどうでしょうか。畑作業をしながらちょっとした会話がうまれてくるでしょうし、育てたた野菜を一緒に食べることが自然にできるかもしれません。
もちろん、そうしたことが面倒だという人も、またそう思う時もあるでしょう。しかし、そうしたことにもお互いに配慮しながら、ちょっとした会話をすることに慣れてくれば、心地よい距離感でお互いに過ごせるようになるでしょう。
家と家の間の「隙間」が共有の空間になれば、いつも整備して、お互いが気持ちよく過ごせるように配慮しやすくなります。
プライベートとパブリックという2つの考えは、通常、明確にその間が引かれています。門の外、塀の外は、他人やパブリックというのが通常の考え方です。
でも考えてみると、その2つの間にはたくさんのあいまいな領域があったのが日本の暮らしです。玄関先にもちょっとした土間があったり、庭側には縁側があったり、町家などは裏庭をお互いに共有したりというのが日本の風景でした。雨が降って来たら、裏の家の洗濯物をとりこんでおいてあげたり、というのも日常の風景でした。
戦後、日本の家はプライバシーを守るという名のもとに、隣の人が誰なのか、いるのかいないのかさえわからなくなりました。歴史的にも、また、地域的にもこうした時代の方が短いようにも思えるのです。
家と家の間の塀を取り除いてみる。そして、家と家の間でなにかを共有する。
いかがでしょうか。皆さんのご意見をお寄せください。