住人祭について
住まいのかたち | 2011.6.21
住人祭とは、住人たちが集まって飲み物や食べ物を持ち合い、顔見知りになって楽しいひと時を過ごそうという趣旨のおまつり。地域のコミュニティー単位で行うのが特徴です。
1999年にフランス・パリで始まった住人祭は”隣人祭り”ともよばれ、フランスでは「La fete des voisins」という年に一度の大きなイベントとなっています。今まで、無印良品の家でも何度かご紹介をしてきました。
先日、千葉県にあるマンションでこの住人祭が行われました。このマンション、無印良品が三菱地所レジデンスと一緒に企画した集合住宅「MUJI VILLAGE」です。2010年1月から入居が始まり、その後7月、12月、そして今年の5月と3回にわたって住人祭が開催されています。
そのたびごとに楽しい企画があり、今回は「親子でつくるカレー教室」がテーマとのこと。200人弱の住人が一同に集い、イタリアンレストランのシェフを囲んでの本格的な料理と古本市、そして立食で使える小さなテーブルづくりを楽しんでいました。
音楽はこの住人祭でお馴染となったシンガーソングライターとドラムサークルの仲間たち。子供たちに絵本の読み聞かせも行っていました。こうした様々な企画がありますが、いつものように住人たちで準備から盛り上がります。
この住人祭は、このマンションを企画するときから考えたイベント。入居後はこうしたイベントを通してマンションのコミュニティーを育てていくことを提案してきました。
みんなで使えるコミュニティーキッチンや共有空間もフルに使いました。この日は雨で部屋の中で行いましたが、本当は外の庭まで使って、こうしたイベントができるように考えられています。
私たち無印良品の住人祭サポートチームは、入居前から契約者の人たちと食事会などの場を通してコミュニティーづくりを提案してきました。ある日いきなりたくさんの人が住み始める集合住宅の暮らしを、少しでも快適な暮らしになるようにと考えたのです。
そのころからすでに3年近くたっているのですが、子供が増えていたりと、すでにこのマンションでの暮らしの歴史も刻まれはじめています。
この住人祭ですがイベントの重要なルールはただ一つ、「必ず全員に声をかけること」。
普段の付き合いを超えてとにかく、まだ知らない人が知り合うきっかけを作ることが目的です。特に高齢者や一人住まいの人など。みんなで準備をしたり、何かつくったり、持ちよったりして、ただただ話しをするのです。これきっかけに、次の日からマンション内で自然に挨拶がはじまるのです。
また今回行った古本市は、住人が不要となった本を持ち寄ったのですが、その本におすすめのコメントなどが入っていて、それをきっかけに同じ趣味の人を見つけたり、お互いの知らない側面を知る事になったりと、人と人がつながるためのとてもいい企画でした。またこの売り上げを東日本大震災の寄付にあてていました。
集合住宅で暮らすということ。そこでは集合・共同だからこそ享受できるメリットがあると思います。一緒に何かをする楽しさ。自分たちのお祭り。そしてまわりとつながるという安心感。
もちろん、何か手に入れるためには、少しだけ我慢することもあるかもしれません。共同で作業をしたり、準備をしたり。でもそんなに大変なことではありません。コミュニティーなんてそんな付き合いはしたくないという人もいるかもしれません。でも一緒の場所にいる限り、まったくコミュニティーと関わらずに暮らすわけにはいかないのも事実です。どうせ必要な事であれば、年に数回積極的に関わり、自らの主体的なイベントとして楽しんでみてはいかがでしょうか。
住人祭のもうひとつの成功のポイントはしつらえや料理をできるだけ丁寧に美しいものであるようにすることです。招待状(インビテーションカード)やお皿やテーブル、料理の並べ方、それぞれにこだわりを持ってしつらえたいものです。
それは生まれつつあるこのコミュニティーの大事な文化となっていく要素だからです。
今回は住人たちで、次回から行われる住人祭実行委員も決められたようです。次の企画に向けての準備、年に数回のイベントですが、このマンションの文化として定着していくことを願ってやみません。そして住人同士、少なくともどんな人が隣に住んでいるのか、どんな人なのか、年に数回は交流ができればと願っています。住人祭委員の人たちは、今後みんなが喜んでもらえる企画をつくっていくことでしょう。
「住人祭」あなたの街やマンションで始めてみませんか。またはじめた方、ぜひ取材にもいかせてください。
みなさんが住んでいるコミュニティーがより楽しく、快適で、そして美しいものであうように願っています。