暮らしには知恵が必要
住まいのかたち | 2008.9.9
「暮らし」には、よりよく暮らすための知恵が必要だと強く感じています。
「暮らし」について考えるとき、よく”ライフステージ”や”ライフスタイル”という分類の仕方がありますが、もうひとつ”ライフスキル”という切り口がありそうです。少し整理してみましょう。
ライフステージ
まず暮らし方は、家族の成長にあわせて変わっていくものです。このことを”ライフステージ”による暮らしの変化と呼びましょう。
夫婦2人で住みはじめて、子供が1人、2人となって、家族が増えていきます。そしてあるとき子供は巣立っていき、また夫婦2人だけになります。最後はひとりになって住まうのです。子供が小さいときは子供中心の暮らし方ですが、子供も自分の部屋をもち、だんだん親離れをします。
こうした家族の成長にあわせて暮らし方は変化し、その時々にあわせて暮らし方が決まります。
ライフスタイル
次に、その人の生き方や思いで決まる暮らし方があります。これを”ライフスタイル”と呼びましょう。
休みの日は読書をして過ごすとか、音楽を聞いて過ごすとか、または友人を招き、みんなでわいわい食事をして過ごすとか、日曜は家族そろって必ず食卓を囲む、などいろいろです。
家族を中心にする人、夫婦中心の人、仕事中心の人、趣味や自分の楽しみを大事にする人、近隣との活動を積極的に行う人など、何を優先させて、どんな人生を送りたいのか、それぞれの生き方によって決まります。
このことは、家の間取りをつくるときや、住宅設備、家具などを選ぶときに大きく影響します。特に私たちがみなさんとアンケートを通して一緒に考えてきたのは”ライフスタイル”です。
ライフスキル
さて、今回一緒に考えてみたいことが「暮らしの知恵」です。これは”ライフスキル”と呼びましょう。
より快適に暮らすには良い知恵がなければなりません。
収納スペースをつくったとします。しかしつくっただけではきれいには使えません。きれいに収納を使うには、どういうふうに収納して、さらには何を残して、何を捨てるのかという知恵が必要です。
部屋の飾り付けにしても、何を飾って、何を中にしまうのか知らなければなりません。その知恵とは、親や周りの人々から学びながら自然に覚えるものです。それは文化とも言えます。飾り付けなどは、日本と欧米の文化を比較すれば明らかに違います。欧米人の家にいくと、物をしまい込むのでなく、写真や絵を飾ったり、もらったカードをきれいに飾ったりしています。また家具も代々持っている家宝のような置き家具が使われています。そこには、見せていく、飾っていく、という知恵があるのです。
一方日本では、蔵の中に大事なものを全部しまって、必要なものだけを出して使ったり、飾ったりします。全部を見せるのでなく、一つだけを見せてあとはしまっておきます。客間の床の間の掛け軸や花瓶などの見せ方は日本の文化です。
国や地域や家族特有の知恵は、他にもたくさんあります。
リビングでどう過ごすのか、だれがどこに座って何をするのか、快適に過ごすためには知恵が必要なのです。ただソファを置いただけでは快適な空間にはなりません。もし家族がごろごろ横になるのがほとんどだというなら、ソファより日本人の知恵を使った床座の空間をつくった方が良いかもしれません。このように「知恵」とは家のすべての空間の使い方や家族の行為を決めていきます。
さて皆さまはどんな暮らしを望まれていますか。少し意識してその暮らしにはどんな知恵が必要か考えてみましょう。豊かな暮らしとは、この知恵を身につけていくことかもしれません。意識することによって工夫が加えられ、伝承されます。
今秋11月から再びアンケートを行ないますが、そこでは、この暮らしの知恵について考えていこうと思っています。
あなたにはどれだけ暮らしの知恵がありますか?
2008年9月9日配信 無印良品の家メールニュース Vol.101より