デザインしないデザイン―「無印良品の家」

コラム | 2008.2.19

デザインしないデザイン
「一流の料理とは、料理をしないこと」と言う人がいます。最高の料理とは、素材の良さをひきだすために、ほんの少しだけ包丁をいれる、または火を加えることだといいます。
最近聞いた珍しい職業で「野菜ソムリエ」というのがあるそうですが、利き酒ならぬ、利き野菜といえる職業です。
野菜の産地や味の特徴を知りつくし、本来の味をよりうまく引き出す方法を考えたりしています。その方法は多種多様で、野菜によっては地下で寝かせて甘みを引き出したりすることもあるようです。
本物の味を多くの人が求めている時代に必要とされる仕事といえます。

同じことがデザインにもいえます。一流のデザインとは、デザインしないことです。多くを主張せず、普通とも思える形やデザインの中に、物が本来持っている力をひきだして、見る人や使う人に豊かさを与えていきます。
そうした「デザインしないデザイン」とは、簡単にできるものではありません。料理と同じように、研ぎ澄まされた職人たちのなせる技といえます。

普通さが単なる普通になり、まわりの風景に埋没してしまわないようにしなければなりません。あえて言うなら、「普通さをつきぬけ普遍的なものを見つけ出していくこと」といえるかもしれません。そうした普遍性とは、多くの人に長い間親しまれてきたものの中に、自然と備えられたものともいえます。そしてその普遍性は、同時に美しさもかね備えています。

実は無印良品の家も、こうした考え方にのっとり普遍的なかたちを見つけようとしました。家の原型を探りながら、人々の記憶のなかにあるような家の形を探していきました。それが左の写真のようなかたちになりました。
時代に左右されない家のかたちを探し求めたのです。その原型ともいえる簡素で簡潔なデザインは、見る人に自分で考え、感じる余地を残しています。

おいしい料理も同じです。おいしいものは、食べる人に考えさせ、感じさせます。料理は料理をしないこと、デザインはデザインしないこと。無印良品の家は、「デザインしないデザイン」を目指しています。

2008年2月19日配信 無印良品の家メールニュース Vol.77より