リノベしたマンションから別の家に住み替える人もいるのでしょうか?

リノベーションなんでも相談室 | 2025.11.5

ご質問

リノベーションをすると『一生この家に住むのだ』というイメージがあります。思いを込めてリノベーションをしたマンションから住み替える方も多いのでしょうか

大規模なリノベーションを行うとなると「終の棲家をつくる」というイメージを持たれる方も多いかもしれません。長く住んだマンションをリノベーションする方、新たにマンションを購入してリノベーションする方など様々なケースがありますが、実際のところ、リノベーションをしたマンションから住み替える方はいるものなのでしょうか。

今回は、フルリノベーションしたマンションから2度住み替えた経験を持つ、マンション管理士で宅地建物取引士の”こっしー”が、リノベしたマンションからの住み替えについて解説してまいります。

住み替えはそれほど珍しくない?

その昔「住宅すごろく」と言われていた時代においては、賃貸から分譲マンション、分譲マンションから戸建住宅へと住み替えるのが当たり前と考えられていました。ところが、昨今の調査を見ると、マンション居住者においても永住意識が高まっているということがよくわかります(図1)。さらに、間取や設備にこだわってフルリノベーションを行う方であれば、なおさら永住志向が強いということもいえるでしょう。

図1. マンション居住者の永住意識は高くなっている

それでも、何が起こるかわからないのが人生というもので、私自身もフルリノベーションした自宅の売却を2度経験していますし、現場でお客さまと接するなかでも、リノベーションしたマンションから住み替えるケースをしばしば目にするようになりました。はじめから住み替えを意識していたわけではなく、リノベーションをした当初は長く住む前提で考えていたという方がほとんどですから、ライフスタイルの変化などをきっかけに想定外の住み替えが発生するケースも珍しくないようです。

実際に私が見てきた具体的な住み替え理由としては、「地方への移住」、「転勤」、「家族構成の変化」などがあげられますが、思いのほか地方へ移住する方も多いなという印象を受けています。住み替え先としては、賃貸に移られる方の他に、戸建を建てる方も多く、「無印良品のリノベーション」から「無印良品の家」に住み替えた方も数組いらっしゃいます。リノベーションをする際には設計の過程などを通じて自分たちの暮らし方と向き合うことになりますから、ある意味では、これからの暮らし方を見つめ直す起点となっているのかもしれません。

住み替えに困らないリノベーションとは?

リノベーションを計画する時点で、住み替えやそれに伴う売却、いわば出口戦略を強く意識する必要はないと考えているものの、リノベーションの内容によっては出口のあり方が変わってくるのも事実です。ここからは、住み替えに困らないリノベーションのポイントについて考えてみます。

ポイント(1)部分的なリフォームはプラスの評価になりにくい
中古マンション売買の現場にいるとよくわかるのですが、たとえば「5年前に水回り一式をリフォームしました」というようなお部屋については、それ自体が売却価格や成約スピードに大きくプラスになるものではありません。買い手からすると、近隣の新規リフォーム済み物件が比較対象となりますから、数年前に部分的にリフォームしたものを選ぶくらいなら、直近で全面的なリフォームをしたものに触手が伸びるのです。

ポイント(2)比較優位性のある全面リノベーションはプラスの評価が付きやすい
全面的なリノベーションを行ったとしても、新築時と代わり映えしないような間取や設備で仕上げたお部屋については、そこまで売却時のプラスにならないこともあります(図2)。上述の通り、ポータルサイトを眺めていると「新規リノベ済み」を謳う物件がたくさんヒットするので、それと比較した際の優位性というものが求められるからです。

図2. きれいにするだけでは、比較優位性がでない

以前のコラム「リノベしたマンションは高く売れますか?」でも紹介したように、実例として、こだわりのリノベーションをして数年住んでからの売却で周辺相場より2~3割高く売れたケースも存在します。タイミングや地域性、もともとのマンション価格などの諸条件がありますから一概にはいえないのですが、他の売り出し物件と比較した際に明らかな優位性があるというのはプラスの価値になるでしょう。

ポイント(3)高性能な住まいは相対的な評価が高まる
現在のマーケットでは「他の物件と比べておしゃれである」ということが大きな価値になっています。しかし、もう少し長い目で見ると、お部屋の見た目だけではなく性能の良し悪しも、中古マンションを評価するうえでの重要な要素になりそうです(図3)。2025年からは新築住宅の省エネ義務化が始まりましたし、中古住宅においては省エネ改修を促進する補助金の制度などが創設されています。住宅の省エネ推進は国の喫緊の課題ですから、中古マンションにおいても省エネ基準への適合状況によって相対的な評価が変わるということも容易に想像できるのです。

図3. 性能向上のための壁面断熱の様子

永く住む意識が、住み替えに困らない住まいをつくる。

出口のお話もしましたが、結局のところ、永く住む意識をもって良質な住まいをつくることが、住み替えの際にも困らない家づくりにつながるのではないでしょうか。永く住む意識があるからこそ、安全を担保できるフルスケルトンを採用するでしょうし、我慢せずに暮らせる高い断熱・省エネ性能にも目を向けることができるでしょう。それらのベースを整えたうえで、一般的なリノベ済み物件とは一線を画すような空間をつくることで、図らずも出口に困らない家づくりができるでしょう。住み替えることになるのか、一生住むことになるのか、将来どうなるかはわかりませんが、リノベーションをする際には、まずは永く住むという前提に立ってやるべきことを検討してみてください。

今回は、リノベーションしたマンションからの住み替えについて解説しました。せっかくリノベーションしたのにもったいないという声もあるかもしれませんが、ライフスタイルやライフステージの変化に合わせて柔軟に住み替えることができるのもマンションの魅力のひとつです。こだわりのリノベーションをしたお部屋だからこそ、住み継いでくれる方にもきっと満足していただけるのではないでしょうか。

無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、マンション購入・設計・施工から、リノベーションしたお部屋の売却サポートまで、ワンストップでサービスを提供しております。ご興味をお持ちの方は、リノベーションセミナーや相談会にお越しください。

みなさんからのご質問もお待ちしています!/

公式LINEアカウントを友だち追加いただくと、施工例やコラムの更新情報を受け取ることができます。

リノベーションなんでも相談室

“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

開催予定の「イベント・相談会・物件見学」