大通り沿いマンションの懸念点を教えてください

リノベーションなんでも相談室 | 2025.10.1

ご質問

マンションを探していると、大通り沿いに位置するマンションが多いように感じます。騒音の問題などもありそうですが、大通り沿いのマンションを選ぶ際には、なにを気にすべきでしょうか

幹線道路沿いにずらっとマンションが建ち並ぶ風景には、みなさんも見覚えがあるかもしれません。歩道がきちんと整備されていたり、日当たりがよかったりというメリットがある一方で、騒音の問題など気になるところもいくつか思い浮かびます。大通り沿いのマンションを選ぶ際には、どのようなことに気を付ければよいのでしょうか。

今回は、自身もまさに幹線道路沿いのマンションで暮らしている、マンション管理士で宅地建物取引士の”こっしー”が、大通り沿いのマンションの特長について解説してまいります。

大通り沿いは、マンションだらけ

多くの人が住み、たくさんの建物が建ち並ぶ都市部においては、土地ごとに用途地域が指定されています。この場所には高い建物を建ててもよい、この場所は低層じゃないとダメ、ここには工場をつくってもよい、というように建物の大きさや用途などの制限をかけることで、街が野放図に広がっていくことを防いでいるのです(図1)。

図1. 用途地域による色分けの一例(大阪市)

多くの場合において、大通り沿いは準住居地域・近隣商業地域・商業地域などが指定されており、比較的背の高い建物を建てやすい環境となっています。さらに、万が一大規模な火災があった際に大通りを超えて延焼することがないように、沿道は防火地域に指定されることが一般的ですから、建物自体が燃えにくい鉄筋コンクリート(RC)造の建物が多く建てられているのです。高い建物を建てることができ、かつ、RC造であることが求められるという条件から、必然的に大通り沿いにはマンションが建ち並ぶようになったわけです。

大通り沿いマンションの懸念点

続いては、大通り沿いに位置するマンションの特長について考えてみましょう。私自身も大阪の大通り(新御堂筋)沿いで暮らしておりますが、個人的に大きなメリットだと感じているのは駅からマンションまでの歩道がしっかりと整備されていることです。細く入り組んだ道を歩かずに済むので安心感があります。また、道路の真上に建物が建つことはありませんから、一定の眺望・日当たりが保証されているというのもメリットのひとつといえるかもしれません。

一方で、たくさんの車がすぐそばを走っているということになりますから、これからマンションを購入する方であれば、そのデメリットもよく理解する必要があります。いくつか代表的なものをご紹介します。

デメリット(1)騒音問題
いわゆる「住宅街」の落ち着いた環境とは異なり、遅い時間も含めて一日中車が通っていることも珍しくありません。環境省の資料によれば、幹線道路周辺の騒音レベルは70デシベル程度ですが、住宅においては昼間55デシベル、夜間45デシベル以下をひとつの基準として定めています(図2)。バルコニーが大通りに面していれば主にリビングでの騒音が気になるでしょうし、大通りに背を向けているような配置であれば、玄関や寝室での騒音が特に懸念材料となりそうです。高速道路沿いのマンションなどでは新築時から二重サッシが採用されていることもありますが、リノベ適齢期の中古マンションのほとんどはシングルガラスのサッシが利用されており、なにも対策をしなければ騒音に悩まされるかもしれません。

図2. 騒音レベルの比較

デメリット(2)空気の質の問題
もうひとつ、空気の質が気になるという方も多いのではないでしょうか。排気ガスによる空気の汚れが気になって、窓を開けたくない、あるいは、洗濯ものをバルコニーに干したくないと考えるのも当然のことです。排気ガス由来の大気汚染物質としては窒素酸化物(NOx)やすす(粒子状物質=PM)がありますが、すすが洗濯物について汚れてしまうことを想像するといささか心配になります。ただし、排ガス規制が強化されたことなどにより、この30年間で空気の質については大きな改善を見せています。たとえば、東京都における環境基準への達成率を見てみると、ここ数年ではNOx、PMともに環境基準を100%達成していることがわかります(図3)。イメージだけで判断するのではなく、各自治体が公表している定量的なデータも参考にして考えるとよいでしょう。

図3. 各汚染物質の環境基準への達成状況

リノベーションでできる改善策

最後に、大通り沿いのマンションで暮らす際に、リノベーションでぜひ取り入れていただきたい工夫をご紹介します。間取の変更も含めた大規模なリノベーションであれば、快適な暮らしのためにやれることがたくさんあるのです。

工夫(1)インナーサッシの設置
既存のシングルガラスのサッシの内側に気密性・防音性の高いインナーサッシを取り付けることで、窓からの騒音の侵入を大きく低減することができます。利用するインナーサッシの種類にもよりますが、おおむね騒音レベルを静かな事務所程度まで低減することができます。

工夫(2)寝室との間に緩衝スペースを設ける
大通りに背中を向けて建つマンションにおいては、バルコニー側にあるリビングよりも、通りに近い寝室の騒音が気になります。インナーサッシをつけることで、同様に騒音を小さくすることができますが、せっかく間取を変えられるのであれば、寝室の窓と寝室との間に土間を設けるなど、緩衝スペースを設けることも有効です。たとえば図4の間取では、玄関土間・ウォークインクローゼットが間に挟まることで、静かな寝室をつくることができています。

図4. 緩衝スペースのある間取の一例

工夫(3)部屋干しをしやすい間取をつくる
洗濯物を外に干したくないということであれば、室内に洗濯物を干すスペースを用意するのもおすすめです。たとえば図4の土間やウォークインクローゼットに室内干し用のバーを設けてあげれば洗濯物を外で干す必要もなくなります。以前のコラム「室内干しの工夫はできますか?」でもいくつかの間取をご紹介しておりますので、あわせてご覧ください。

今回は、大通り沿いのマンションについて解説しました。リノベーションによって解決できる問題もありますが、騒音が気になる場合は、内覧をする際に窓を閉めた状態・開けた状態の両方をしっかりと確認するようにしましょう。気持ちよく風を通したい春や秋には窓を全開にすることもあるでしょうから、一番うるさい状態でどのレベルなのかということを判断材料のひとつにしてみてください。また、給気口のフィルターの掃除や交換を定期的に行うことなど、細かなお手入れもどうかお忘れなく。

無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、リノベーション対象となるマンションのご紹介から、設計・施工まで、ワンストップでサービスを提供しております。ご興味を持たれた方は、リノベーションセミナーや相談会にお越しください。

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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