
マンションの西日対策として、できることはありますか?
リノベーションなんでも相談室 | 2025.7.23
リビングが西側を向いたマンションに住んでいます。夕方になると強い日差しが差し込み、暑さに悩まされるのですが、リノベーションで西日対策はできるのでしょうか
マンションにお住まいの方で、西日に悩まされている方は少なくないでしょう。特に夏の夕方の日差しは室内をじりじりと暖めますし、床材や家具などインテリアの劣化にもつながってしまうのではないかと心配になることもあります。西日対策のために、リノベーションにできることはあるのでしょうか。
今回は、これまでさまざまな方位のマンションで暮らしをつくってきた、マンション管理士で宅地建物取引士の”こっしー”が、西日への対策について解説してまいります。
西日はなぜつらいのか?
まずは、西日はなぜ不快に感じるのか、という基本的なところから考えてみましょう。言わずもがなですが、太陽は東から昇り、西へと沈んでいきます。日の出から徐々に太陽高度が高くなり、正午から日没に向けては太陽高度が低くなっていくのです。季節によっても太陽の動きは変わり、東京でいえば、夏至の南中高度(太陽が最も高く昇った時の角度)は約78°と高く、冬至は約32°と低くなります(図1)。
太陽高度が高い南からの日射の方が室内を暖めそうな気もしますが、実際には、高い角度から降り注ぐ日差しは庇やバルコニーによって遮られ、直射日光としては室内にはあまり届きません(半面、天井面は熱せられますが)。西日についてはどうでしょうか。たとえば、夏至における東京の太陽高度は、正午の約78°から、15時には約46°、18時には約10°と変化します。低い角度から届く日差しは、庇にさえぎられることなく室内に到達するため、直射日光がじりじりと室内を暖めることになるのです(図2)。暑いはずですね。
また、コンクリートは蓄熱性が高い物質ですから、日が暮れるギリギリまで日射によって暖め続けられたマンションのコンクリート躯体は、夜になると熱を放出することになります。断熱性能が不十分なマンションにおいては、コンクリートから室内に放出される熱の影響を強く受けてしまい、日が暮れても暑さの抜けないお部屋になってしまうのです。
簡単にできる、西日対策
簡単な対策(1)よしず・すだれを利用する
ホームセンターに行けばすぐに購入できる葦簀(よしず)や簾(すだれ)ですが、実は西日対策としては非常に効果の高い代物です。窓の外側に葦簀を立てかけたり簾を吊るしたりすることで、日射の侵入を低減し、室内環境を改善する効果が見込めます(図3)。ただし、立てかけた葦簀が風で飛ばされてしまうおそれがある、簾を設置するためのフックがベランダに付けられないなど、マンションの場合には管理規約の確認や安全の確保などに特に気を付ける必要があります。
簡単な対策(2)遮熱カーテンを利用する
葦簀や簾のように窓の外側で日射の遮蔽ができない場合は窓の内側で対策を考える必要があります。たとえば、カーテンを遮熱カーテンに変えてみるのが一番簡単かもしれません。定量的な効果については言及しにくいものの、窓から入ってきた日射と熱が、さらに室内まで侵入することを抑える効果があるといわれています。
リノベーションでできる、西日対策
簡単な対策ではやりきれない、本質的な改善を目指すのであれば、きちんとリノベーションを行うのがよいでしょう。工事規模が大きくなり、時間も費用もかかることになりますが、その分しっかりと室内の環境を改善することができるのです。ここからは、リノベーションでできる代表的な対策をご紹介します。
リノベの対策(1)遮熱型Low-Eガラスのインナーサッシを設置する
西日の主な侵入経路は窓ですから、まずはそこから対処を考える必要があります。リノベーション対象となるような中古マンションでは、多くの場合シングルガラスでアルミサッシの窓が採用されています。これは非常に熱を通しやすいものですから、インナーサッシ(内窓)をつけて性能向上を図るとよいでしょう。西日を遮る目的であれば、遮熱型のLow-Eガラスを採用することで、夏の日射流入への対策を講じることができます(図4)。
リノベの対策(2)ハニカムスクリーンを設置する
インナーサッシを設置したうえで、さらに窓まわりの性能を向上するために、カーテンではなくハニカムスクリーンを採用するのも効果的です。文字通りハニカム構造で空気の層を持ったつくりのブラインドで、断熱性能・遮熱性能が期待できます(図5)。
リノベの対策(3)壁の断熱を強化する
夏の日差しで暖められたコンクリート躯体からの熱の侵入を抑えるため、壁面に十分な断熱改修を行うことも非常に効果的です(図6)。コンクリートから室内への熱の移動を低減する効果に加えて、室内の表面温度の上昇を抑える効果も期待できますから、夏場においては体感温度(≒(室温+表面温度)÷2)を下げることにもつながります。
今回は、マンションの西日対策について解説しました。葦簀や簾、サンシェードのように部屋の外側で日差しを遮るのが効果的ではあるものの、外側は共用部に該当するマンションでは設置が難しいこともあります。本格的に西日への対策を行うのであれば、リノベーションを行う際には壁や窓の断熱改修も含めてしっかりと取り組むとよいでしょう。
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“こっしー”プロフィール
無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。