
梅雨の湿気対策を教えてください
リノベーションなんでも相談室 | 2025.6.10
梅雨になると室内の湿度の高さが気になります。ジメジメした環境を解消するために、どのような対策ができるでしょうか?
鉄筋コンクリートでつくられたマンションは気密性が高く、湿気がこもりやすいとよくいわれます。特に梅雨時期においては、室内の湿度が高く、空気がなんとなく重たいなと不快に感じることも多いかもしれません。ジメジメする季節においても快適に暮らすために、どのような除湿の工夫ができるのでしょうか。
今回は、自邸の3度のリノベーションでも湿気と向き合ってきた”こっしー”が、梅雨時期の湿気対策について解説してまいります。
湿度が高いことで引き起こされる問題
はじめに、梅雨時期のジメジメとした環境によって引き起こされるさまざまな問題について目を向けてみましょう。ただ不快だというだけでなく、実は、健康被害のリスクが高まってしまうという側面もあるのです。
問題(1)熱中症罹患リスクが高まる
熱中症といえば、太陽が照りつける真夏に発生するイメージがありますが、梅雨の時期も油断してはいけません。気温は真夏のように高くはないものの、湿度が高くなることで発汗によって体の熱を逃がすことが難しくなってしまいます。熱中症の危険性を示す指標として、暑さ指数(WBGT)がありますが、屋内においては以下のように計算されます。
WBGT(屋内) = 0.7 × 湿球温度 + 0.3 × 黒球温度
日射がない屋内という条件においては、湿球温度は室温と湿度で決まり、黒球温度は室温と近くなります。たとえば、室温28℃、湿度70%の室内環境においては、WBGTは約25℃となり、熱中症への警戒が必要な水準となるのです(図1)。
問題(2)カビやダニが繁殖する
湿度が高い環境では、カビやダニの繁殖が活発になります。図2のように、カビやダニは室温25℃、湿度60~70%を超える環境を好むため、なにも対策をせずにジメジメした室内で過ごしていると、目に見えないところでカビやダニが増殖しているかもしれません。ダニの糞や死骸、カビを吸い込むことはアレルギーの原因となりますから、きちんと対策したいところです。以前のコラム「梅雨時期のカビ・ダニ対策を教えてください」もあわせてご参照ください。
問題(3)不快指数が高まる
上記のような健康リスクに加えて、そもそも不快である、ということもやはり無視できません。夏の蒸し暑さを定量的に表す指標として「不快指数(DI)」が知られていますが、以下の式の通り、気温と湿度が快適/不快を大きく左右していることがわかります。
DI = 0.81 × 気温 + 0.01 × 湿度 ( 0.99 × 気温 – 14.3 ) +46.3
DIが70を超えると不快だと感じる人が出始め、80を超えると大半が不快に感じるという指標なのですが、たとえば室温28℃、湿度70%という梅雨時期の室内でありそうな環境下では、DIは78.4となります。70を超え、80に近い数字となっていますから、きわめて不快な環境と表現してよいでしょう。
梅雨時期の湿気対策
マンションでの梅雨時期の湿気対策を考えるときには、換気をすることで湿気を帯びた空気を室内に取り込むことになる、という点を大前提として理解をしておく必要があります。多くのマンションでは、機械的な排気(浴室などの換気扇)と自然給気を組み合わせた、第三種換気方式が採用されているのですが、端的にいえば、外気を温度も湿度もそのままの状態で室内に取り込み続けているのです。それを踏まえて、対策を考えてみましょう。
湿気対策(1)24時間換気を行う
たったいま前提としてお伝えした内容と食い違うようにも思えるのですが、24時間換気をし続けることは非常に重要です。もちろん湿気を帯びた空気を取り込むことにはなるのですが、空気の流れがなくよどんだ環境になってしまう方が室内のジメジメやカビの繁殖を助長してしまうのです。給気口を閉めてしまったり、換気扇を止めてしまったりするお宅もあるようですが、心当たりがある方はまずそこから見直しましょう(図3)。
湿気対策(2)エアコンを活用する
夏本番を迎える前からエアコンに頼るのは早いのでは、という声もあるかもしれませんが、梅雨時期の除湿においてもエアコンは非常に優秀なデバイスだといえます。換気をする以上は室内に湿気を帯びた空気が入り続けますから、その湿気を機械的に排出しなければさらさらした空気にはなりません。室内の湿度をモニタリングしながら、冷房運転や除湿運転を活用してみてください。再熱除湿機能があるエアコンであれば、室温を下げずに除湿を行うこともできますので梅雨時期には活躍するでしょう。
湿気対策(3)除湿機を活用する
エアコンの活用と同じ考え方なのですが、除湿機を用いて湿気を機械的に取り去るということも効果的です。局所的に湿気がたまりやすい場所がある場合やエアコンのない居室を除湿する場合などは除湿機を活用するとよいでしょう。また、梅雨時期は洗濯物を室内に干すことも多くなりますが、洗濯物からの湿気も無視できませんから、室内干しを行う場合は除湿機を併用することを強くおすすめします。
湿気対策(4)小さな工夫を行う
どうしても外からの湿気は入ってくることになりますから、室内でなるべく余計な湿気を発生させないということもひとつの対策といえます。たとえば、お風呂からあがったらすぐにお湯を抜くことで、そこからの湿気の発生を防ぐことができます。また、扉付きのクローゼットなどは空気が動きにくくなってしまいます。扉を開けておく、定期的にサーキュレーターで風を当てて空気を動かすなどの工夫も行ってみてはいかがでしょうか。
リノベーションでできる湿気対策
最後に、湿気対策のためにリノベーションでできる工夫についても触れてみます。大がかりなリノベーションを行う際には、以下のポイントにも気を配ってみるとよいでしょう。
工夫(1)24時間換気を導入する
24時間換気の義務化がはじまったのは2003年7月になりますから、それ以前のマンションではそもそも換気をし続けるという想定をしていないものもあります。リノベーションをする際には、洗面室やお風呂などの換気扇を使って24時間換気を導入し、常に空気が動いている状態をつくるとよいでしょう。
工夫(2)気密性を高める
24時間換気を導入しても、気密性が低いマンションでは十分に効果を発揮しないこともあります。古い窓サッシは隙間が多く、給気口から空気を吸って換気扇から排出するというという計画的な換気が機能しないことも珍しくありません。想定外のところでの空気の出入りが多いと、24時間換気をしていても空気のよどみが生じてしまいますから、換気を適切に行うためには、インナーサッシを導入するなどして気密性を向上させるのがおすすめです。
工夫(3)空気の流れる空間をつくる
つながりがあり、空気が流れる空間をつくることで、室内の湿度のムラを軽減させることができます。一般的なマンションでは、細かく区切られたそれぞれの個室でエアコンや除湿機を運転しないと温度や湿度のムラが大きくなってしまいますが、たとえばリノベーションで図5のようなつながりのある間取りを採用することで、部屋中をほぼ一様に快適な環境に維持しやすくなります。
今回は、梅雨時期の湿気対策について解説しました。エアコンや除湿機の活用という当たり前のことではあるのですが、換気によって湿気を帯びた空気を取り込み続けるという前提を理解したうえで対策を考えることが大切です。窓開けによる換気は、空気を動かす効果はあるものの湿度を下げる効果は限定的ですから、うまく機械的な除湿を利用することで快適な環境をつくってみてください。
無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、断熱性・気密性の改修や暮らしやすい間取りづくりなど、良質な住まいをつくることへのこだわりをもって設計・施工を行っております。ご興味を持たれた方は、リノベーションセミナーや相談会にお越しください。
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“こっしー”プロフィール
無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。