
リノベのプロは物件の内覧でどこを見ているのでしょうか?
リノベーションなんでも相談室 | 2025.5.1
中古マンションを内覧する際、リノベのプロはどこを見ているのでしょうか?今後の内覧では、私自身もその視点を持ってチェックしてみたいと思います
リノベーション前提でのマンション購入を検討する場合、そのお部屋で自分がやりたいことができるのか、リノベーションをする上での制約はあるのか、という点が重要な判断材料になります。ところが、不動産屋さんは建築のプロではありませんから、質問しても的外れな回答が返ってくることも珍しくありません。リノベーションのプロがマンションを見る際には、どのような視点を持っているのでしょうか。
今回は、これまで数百のマンションの内覧を行い、自分自身も3度のマンション購入とフルリノベーションを経験した”こっしー”が、マンション内覧時のプロの視点について解説してまいります。
規約や管理資料を確認する
実際にマンションのお部屋を内覧する前に、できればマンションの管理面についても把握しておきたいところです。たとえば、床の遮音性能や材質の制限などのリノベーションに関係することも知っておきたいですし、財務状況などマンション自体の健全性についてもあらかじめ確認しておけると安心です。具体的には、以下のような資料を不動産屋から取り寄せて確認します。
確認資料(1)管理規約・細則
多くの世帯がひとつの建物で暮らすマンションでは、円滑な運営を目的としたさまざまなルールが決められています。規約や細則によって床材の遮音性が定められていたり、水回りの移動が制限されていたりと、リノベーションをする上での制約となるものもありますから、きちんと理解すべき内容といえます。
確認資料(2)重要事項調査報告書
重要事項調査報告書は管理会社が有償で発行するもので、修繕積立金の残高や借入・滞納状況などマンションの財務状況を確認することができます。過去の共用部の修繕履歴が記載されているようであれば、それぞれの修繕工事の実施時期や内容もあわせて確認するとよいでしょう。お金に余裕のある健全なマンションなのか、それとも自転車操業状態なのか、マンション自体の持続可能性を判断する材料となります。
確認資料(3)長期修繕計画
長期修繕計画も、取得が可能であれば早めに確認したい書類になります。重要事項調査報告書で書かれているのは、あくまで”いま現在”の財務状況ですから、将来的に必要となる修繕費等を想定し、未来を描くうえでは大切な資料です(図1)。詳しくは、以前のコラム「長期修繕計画とは、なんですか?」もご覧ください。
構造や設備を確認する
上述の資料については、マンション管理や不動産のプロとして確認すべき内容でした。ここからは、建築的視点でチェックすべきポイントについて考えていきましょう。たくさんありますが、10個に絞りましたのでお付き合いください。
確認事項(1)床・天井の仕上げと天井高
床や天井について、コンクリートに直接フローリングや壁紙が貼られているか、下地が組まれているか、あるいはどこに段差があるかを確認します。現在の天井高も測り、リノベーション後におおよそどの程度の天井高を確保することができるのかを検討します。
確認事項(2)梁の位置と、梁下の高さ
梁の位置は、間取の自由度を左右する重要な要素のひとつです。マンションの販売図面に載っている間取図には梁の位置は描かれていませんから、内覧の際に確認が必要です。また、床から梁までの高さも確認し、間取を計画するうえでの参考とします。
確認事項(3)排気ルート
キッチンやお風呂、トイレなどの排気ダクトの出口を確認します。排気ルートと(2)の梁の位置との兼ね合いで、キッチンやお風呂などをどこまで動かすことができるのかが決まるためです。リノベーション後に、図2のようなかたちでダクトが梁をまたいでしまうのは好ましくないのです。
確認事項(4)排水ルートとたて管への接続位置
間取図をみると「PS」という表記がありますが、そこには共用の排水たて管が通っています。リノベーション後も排水の出口は変わりませんから、こちらもキッチンなどの設備をどこまで動かせるのかの判断材料になります。また、内覧時点では壁を壊せないので目視の範囲にはなりますが、高さ関係を想定するため、キッチンなどからの排水管(横引き管)がどの位置でたて管に接続されているかも想定します(図3)。
確認事項(5)給気口の数と場所
マンションの場合、コンクリート躯体に追加で給気口を設けることは難しいため、現在の給気設備の状態を確認する必要があります。壁に給気口が設けられているものだけでなく、窓からの給気を想定しているマンションも存在するため、内覧の際に確認をします。
確認事項(6)エアコンスリーブと室外機置場
壁の給気口と同様に、マンションにはあらかじめエアコンの冷媒管などを通すための穴(エアコンスリーブ)があけられています。エアコンスリーブの位置と、室外機を置ける場所によって、エアコンを設置できる場所が決まりますから、忘れずに確認したいポイントです。
確認事項(7)窓ガラスの種類、サッシ形状、給気小窓の有無
窓の性能は居住環境を大きく左右するものです。インナーサッシを取り付ける際の制限にもなるので、シングル・ペア・網入りなどのガラスの種類や、引き違い・片引き・内倒しなどのサッシ形状、先述した給気用小窓の有無についても確認します。
確認事項(8)結露跡やカビ
窓を確認する際に、結露の跡やカビが生えていないかなども確認してみましょう。窓枠の塗装の剥がれなど、結露のサインを見かけることも珍しくありません。窓だけでなく、外壁と接する壁については壁紙にカビの発生が見受けられることもありますから、現在のお部屋の性能・状態を診断するためのひとつの材料としましょう。
確認事項(9)ブレーカーのアンペア数と配線方式
エアコンをフル稼働させる季節などは、電力の容量が小さいとブレーカーが落ちてしまうこともあります。アンペア数をどこまで上げられるかは別途の調査が必要ですが、現状で何アンペアのブレーカーになっているかも確認します。また、単相二線式の場合は200V電源が使えませんから、配線方式(単相二線式か単相三線式か)についても確認が必要です。
確認事項(10)給湯器の種類と容量
給湯専用・高温差し湯・追い焚きなどいくつかの種類がありますから、現在はどの方式が採用されているかを確認します。給湯器が設置されている場所をのぞき、追い焚きへの変更可否の可能性などを判断します。また、給湯器の容量を大きくすることができない場合もありますから、現在の給湯器の号数についても確認しておくとよいでしょう。
できる・できない・わからない、を明確に。
たくさんの確認事項を羅列しましたが、内覧の際にはっきりとわかることもあれば、わからないこともあります。本当は梁があるのだけど天井の裏に隠れていたり、目視では排水管の継ぎ手までは確認ができなかったりと、内覧だけで判断できることには限界があります。リノベーションのプロが内覧をする際には、できること・できないことに加えて、わからないことを明確にできるのも特徴といえるかもしれません。
加えて、「もしもここに梁があったら、お風呂はここへは動かせない」、「排水管の接続位置が高かった場合はアイランドキッチンにはできない」などの考え得るリスクと「ただし、このような間取にすれば希望の暮らし方は叶えられる」といった対策についてご提案することができますから、わからないこと=不安、にはならずに済むでしょう。
今回は、リノベーションのプロが内覧で確認するポイントについて解説しました。内覧の段階では、マンションの竣工図書などの詳細な図面を見ることができないので、はっきりしないことも出てきます。それでも、ポイントをおさえればかなりのことは読み解けますから、ぜひ今後ご内覧する際の参考にしてみてください。そこまでのチェックは難しいということであれば、お気軽にプロにご相談くださいね。
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“こっしー”プロフィール
無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。