
リノベーションで天井を高くできますか?
リノベーションなんでも相談室 | 2025.3.4
天井の高い、広々とした住まいに憧れています。リノベーションをすれば、天井を高くできるものなのでしょうか
住まいづくりのご相談をしていると、天井の高い家で暮らしたいというご要望をよく耳にします。開放感のある空間で過ごしているだけで、なんだかおおらかな気持ちになれる気さえしてきます。リノベーションをすることで、既存の状態よりも天井の高い住まいをつくることができるものなのでしょうか。
今回は、自身も天井の高い住まいで暮らしていたこともある、マンション管理士で宅地建物取引士の”こっしー”が、リノベーションと天井高について解説してまいります。
既存の床・天井に着目
マンションの天井高を考える際には、そのマンションがどのようなつくりになっているかを知るところから始める必要があります。いくらリノベーションで自由な空間をつくることができるとはいえ、コンクリート躯体で囲まれた範囲でしか工事をすることができませんから、もともとの構造が重要になるのです。今回は「リノベーションで天井を高くできるか」というご質問をいただきましたが、マンションのつくりによって「高くできることも、できないこともある」というのが回答となります。
それでは、天井高を左右する「マンションのつくり」とは、具体的にはどの部分なのでしょうか。高さのお話ですから、みなさんのご想像通り、床と天井の仕上げに着目する必要があるのです。図1には(a)から(d)まで、4パターンの床・天井の構成を示しています。床・天井それぞれに、直貼と二重がありますから、2(床・天井)×2(直貼・二重)=4パターンというわけです。
まずは床についてみてみましょう。直貼というのは、コンクリート躯体にフローリングやカーペットが直接貼られている状態を指します。排水のための配管が必要な水回りだけは一段上げることになりますが、配管が絡まない部分はなるべく天井を高くできるようにつくられています。二重床は、コンクリートの上に下地が組まれ、そこに主にフローリングが貼られているつくりです。新しいマンションにおいては二重床のつくりが多いのですが、私がいる関西においては、なぜか比較的新しいものでも直貼が多いように感じます。余談ですが。
続いて天井についてですが、直貼はコンクリート躯体に直接壁紙が貼られているつくりです。二重天井は、コンクリート面から石膏ボードの天井が吊られ、そこに壁紙が貼られているというつくりになっており、天井の裏側には電気配線などが通されています。棒などで天井をつつくと、直貼の場合は硬く、二重の場合は空洞を感じますので、ご興味があれば一度やさしくつついてみてください。
リノベで変わる、天井高
マンションで最も天井を高く取れるのは、図1(a)の床も天井も直貼の状態なのですが、全面的なリノベーションを行う際には、二重床の工法が採用されることが一般的です。二重床にすることで、遮音性を確保しつつ踏み心地のよいフローリングを貼ることができたり、床下に電気配線や給排水管を通すことができたりと、二重床はリノベーションとの相性がよいのです。床下に配線等を通すことができれば、天井はコンクリートむき出しの状態でも構いませんので、たとえば私たちのリノベーションにおいては、天井はコンクリート面に塗装をする仕上げが標準となっています。
リノベーション後には床が二重になり、天井が直貼(直塗装)になる前提で考えてみると、もとのつくりが図1(a)のような場合は、床が二重になって高くなった分だけ、天井高は低くなることになります(図2)。ただし、直床・直天井のマンションは、もともとの天井が2.5m以上など高いことが多く、リノベーション後に極端に天井が低くなるというものばかりではありませんからご安心ください。
もとのつくりが図1(b)の場合は、リノベーション後と同じ二重床・直天井のつくりになるので、天井までの高さは大きくは変わりません(図3)。もちろん、間取によっては床を大きく上げることもありますから、一概にはいえませんが。
もとが図1(c)の場合はどうでしょうか。リノベーション後に床は上がるのですが、既存の二重天井を取り払うことで天井は高くなりますから、この場合も天井高は大きく変わらないことになります(図4)。
最後に図1(d)の場合です。もともと二重床ですから、リノベーション後にも床のラインはあまり変わらず、二重天井を取り払えば天井のラインは上がります。つまり、もとがこのようなつくりのマンションにおいては、リノベーション後に天井が高くなることが多いのです(図5)。
開放感の要素は、天井高だけではない
ここまで天井の高さのことばかりお話ししてきましたが、空間の開放感を左右するのはなにも天井の高さだけではありません。一般的なマンションの間取では、リビングに面して和室が配置されているなど、せっかくの空間が壁や扉で仕切られてしまいますから、広々と感じにくいという課題があります。細かく仕切られているのなら、せめて天井は高くしたいという気持ちも理解できます。
一方で、不要な間仕切りは取り払うことができれば、2.3~2.4m程度の一般的な天井高でも、開放感を得ることはできるでしょう。あるいは、空間を仕切るにしても、光の通る扉を多用するなどの工夫によって閉塞感の無い空間をつくることもできます。マンションの構造上、天井を高くできないという場合でもあきらめずに、心地よい空間をつくるための工夫はできないか、プロに相談してみてください。
今回は、リノベーションと天井高について解説しました。マンションのもともとのつくりについては、竣工図書や現地の調査を行うことで事前に確認ができますので、マンション購入+リノベーションをご検討される場合は、マンションの購入前に一度リノベ会社に問い合わせてみてください。
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“こっしー”プロフィール
無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。