リノベ会社の選び方を教えてください

リノベーションなんでも相談室 | 2024.4.9

ご質問

中古マンションのリノベーションに興味を持っています。世の中にはたくさんのリノベーション会社があるようですが、自分に合った会社はどのように選べばよいのでしょうか

小さな設計事務所から財閥系リフォーム会社まで、リフォーム・リノベーション業界には多くの企業が存在しています。得意とするデザインや施工内容、費用感は会社ごとに異なりますが、どのような点に注意してリノベーション会社を選べばよいものなのでしょうか。

今回は、自身も3度のマンション購入とリノベーションを経験している、宅地建物取引士でファイナンシャルプランナーの”こっしー”が、リノベーション会社の選び方について解説してまいります。

住まいに求めることの棚卸から。

会社選びも大切ですが、まずは、自分自身がリノベーションや住まいになにを求めるのか、ということから検討してみましょう。長く暮らした住まいのリノベーションを考えている方であれば、いまの住まいの改善したい点と、長所として活かしたい点の両方がよくわかっていると思います。これから物件購入と合わせてリノベーションを検討する方であれば、中古住宅のリノベーションによって、新築よりも手ごろな住まいを手に入れたいという希望もあるかもしれません。たとえば以下のような視点で、希望の整理をしてみるとよいでしょう。

視点(1)デザイン性
「パリのアパルトマンのような空間で暮らしたい」「無機質な空間が好みだ」「美術館のようなシンプルな箱をつくりたい」など、デザイン性については人それぞれの好みがあるものです。そこまで具体的なイメージが無いとしても、「いまのごちゃごちゃした空間をすっきりさせたい」など、なにかしらの希望はあるはずですから、それを箇条書きにしてみてください。たとえば私自身でいえば、あまりこだわりがない方なので、デザイン性についての希望は以下の3点くらいで、結果として図1のようなお部屋に仕上がりました。

・基本はシンプルにしたい
・コンクリートの質感は好き
・木質の空間も好き

図1. 自邸のリビング

視点(2)安全性
築10年程度の比較的新しいマンションであれば強く意識することもないかもしれませんが、築20年以上経つようなものにおいては、安全性もひとつの視点として考えてもよいでしょう。安全な住まいをつくるためには、たとえば配管・配線などライフラインを一新する必要もありますし、歳をとっても暮らしやすいように段差を無くすということもあるでしょう。さらに、雨漏りやカビの繁殖がないかなど、壁の向こうの見えない部分についても気にしたいところです。

視点(3)快適性
いくら室内空間が素敵でも、暑さや寒さに耐え忍ぶ生活は快適とは言い難いかもしれません。冷暖房が効きやすい空間にしたい、リビングも寝室も温湿度の差が少ない状態で暮らしたい、風が気持ちよく抜けるようにしたい、室内にたくさん日光を取り込みたいなど、快適に暮らすためのポイントはいろいろありそうです。とくに長く住んだマンションをリノベーションする方であれば、リビングの明るさは活かしつつ、北側のじめじめした寝室をどうにかしたいなど、具体的な希望も浮かんでくるでしょう。

視点(4)自由度
デザイン性と重なる部分もありますが、自身がどの程度の自由度を求めているかという点についても検討してみてください。キッチンやお風呂などの住設機器、建具、アクセントクロス、床材、フックなど、大抵のものは自由に選べるのがリノベーションの魅力のひとつでもあります。統一感のある空間やコストを重視するのか、とにかく好き放題選べることを重視するかによって、選ぶべきリノベーション会社も変わってくるのです。

視点(5)資産価値
リノベーションによる資産価値の向上をどこまで期待するかも人によって判断がわかれるところでしょう。とくに中古マンション購入と合わせてリノベーションを行う場合は、資産価値の高いマンション選びも含めて考える必要がありますから、それを得意とする会社を選ぶ必要もあります。また、長く住むのか、短期的な売却を想定するかによっても考え方は変わりますから、以前のコラム「リノベしたマンションは高く売れますか?」もあわせてご覧ください。

視点(6)コスト
そして、当然ながらコストも重要な検討材料になります。品質を下げてでもとにかくコストを抑えたい人もいれば、こだわりを反映できるのであればコストの多寡は問わないという人もいるでしょう。中古マンションの購入を伴うケースであれば、新築・築浅・リフォーム済みなど他の選択肢と比較しながら、コストついて検討することになると思います。いずれにしても「コスト」と「パフォーマンス」のどちらに重きを置くのか、あるいはバランスを重視するのかという点で検討してみてください。

以上の6項目について、たとえば図2のように、優先度と具体的な希望について整理してみると、自分自身がリノベーションに求めること・期待することが少し見えてくるでしょう。リノベーション会社を選ぶ際には、このような自身の価値観と各社のこだわりや強み・弱みを重ね合わせながら判断してみてください。

図2. 要望整理の一例

リノベーション会社の分類

ひとくくりにリノベーション会社といっても、小規模なリフォームをメインで行っている会社、リノベーション専業の会社、個人または数人規模の設計事務所など、さまざまなタイプが存在します。図3では、それぞれの特徴を簡単にまとめてみました。

図3. リノベーション会社の分類と特徴

リノベーションに対する要望を整理した際に、他の項目よりもコストが最優先という方は、小規模リフォーム系の会社を選ぶのがよいでしょう。提案する間取りや設備仕様の質は高くないことが多い一方で、小規模リフォームも含めて数をこなしていることによるスケールメリットが働き、コストは抑えやすくなります。

デザインや安全性、快適性を求める方は、リノベーション専業系か設計事務所系がおすすめです。古くなった部分を直す(=リフォーム)という考えではなく、全面的に住まいを刷新するという考えのもとでの提案がなされますから、提案される間取りや設備仕様についてはより満足度の高いものになるでしょう。デザイン性などに加えて自由度を追求したいという方であれば、設計事務所系もおすすめです。とくに、希望の地域内で「この人に任せたい」という設計士が見つかったのであれば、まず声をかけてみてもよいでしょう。

リノベーション専業系や設計事務所系の注意点としては、担当者によって知識や施工内容が異なる可能性が高い点です。オーダーメイドの家づくりの場合には、担当者のセンスや知識量によって完成する住まいの質が左右されます。同じ会社に所属していても、顧客の要望を叶えることが第一の人、デザイン性の高い空間をつくりたい人、性能向上についての深い知識を持つ人など、担当する設計士ごとのばらつきは大きくなりますから、当たり外れがあるかもしれません。

リノベーション会社を選ぶには?

リノベーション会社を選ぶ際の大まかな流れとしては、まずは自身の要望の整理をしたうえで、小規模リフォーム系・リノベ―ション専業系・設計事務所系のどこがマッチしそうかを検討し、その分類の中でどこの会社がよいかを選ぶことになります。たとえば、リノベーション専業系が自分に合っているようだ、という方であれば、インターネット検索やSNSなどで各社の情報を集めるとよいでしょう。とはいえ、インターネットや雑誌に載っている情報だけではわからないこともたくさんありますから、いくつか気になる会社が見つかったら、実際にショールームを見たり話を聞きに行ったりしてみましょう。百聞は一見に如かず、できれば実際に人が住んでいるお宅を見学できるとよいですね。

いくつかのリノベーション会社の話を聞く中で、「リノベーションの魅力」や「配管・配線を変えることの重要性」など、どこの会社でも説明している内容もあるでしょう。一方で、会社によって「女性目線の提案が得意です」「アメリカンヴィンテージならお任せください」「新築同等まで断熱性能を高めます」などの特徴的なお話もあるはずですので、それらの特徴が自分自身の価値観と合うか否かを、図2でまとめた価値観と照らし合わせて判断し、その後の具体的な提案まで進むかどうかを決めるとよいでしょう。

また、マンション探しからワンストップでサービスを提供している会社も多数存在します。以前のコラム「お宝物件は見つかりますか?」でまとめた通り、割安で優良なお宝物件を手にすることは期待できませんから、「未公開物件があります!」というような謳い文句にはつられないように気を付けてください。あるいは、「管理がよければ、どれだけ古くても大丈夫」というセールストークもよく耳にしますが、住まいに安全性や資産価値を求める方は、このようなトークは話半分で聞いていればよいでしょう。マンション探しをするうえでも、各社の理念や具体的な物件探しのやり方が自身の価値観と合致するかを判断軸としてみてください。

今回は、リノベーション会社の選び方について解説しました。私自身も前職時代を振り返ると、家づくりの矜持のようなものはなかったなあとつくづく思います。会社選びにおいて絶対的な正解はありませんが、その場の勢いで決めるのではなく、きちんと価値観と照らし合わせて考えるということだけは意識していただくとよいでしょう。

無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、物件探しから設計施工までワンストップでサービスを提供しております。お施主様宅の見学会も開催しておりますので、ご興味を持たれた方は、リノベーションセミナーや相談会にお越しください。

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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