2023年のマンション市場はどうでしたか?

リノベーションなんでも相談室 | 2024.3.27

ご質問

円安や物価上昇など、経済関連のニュースが目立った2023年でしたが、マンション市場についてはどのような状況だったのでしょうか

長らく続いたデフレからの脱却と本格的なインフレ時代到来の予兆を感じさせた2023年。不動産市場では、高価格帯の新築マンションの販売も目立った一年でしたが、新築・中古のマンション市場はどのような動きを見せたのでしょうか。

今回は、中古マンションウォッチャーこと、宅地建物取引士でファイナンシャルプランナーの”こっしー”が、2023年の首都圏マンション市場について解説してまいります。

高嶺の花になりつつある、新築マンション

まずは、首都圏の新築マンションについてのデータから見てみましょう。(株)不動産経済研究所が2024年1月に公開した「首都圏新築分譲マンション市場動向」によれば、販売戸数は前年度から9.1%減の2万6,886戸となり、2年連続で3万戸を下回りました。一方で、平均価格は5年連続の上昇となる8,101万円で、昨年記録した過去最高値を大きく更新する結果となりました(図1)。高価格帯のマンションに引っ張られたとはいえ、首都圏の”平均”でこれだけの金額となるとは、正直驚きです。

図1.首都圏新築マンション価格の推移

新築マンションが供給された地域について見てみると、2023年は都心部に集中していたことがわかります。首都圏全体としては販売戸数が9.1%減る状況でしたが、東京都23区は前年比+10.3%の11,909戸、前年比で最も減らしたのが-35.8%の3,030戸となった埼玉県でした(表1)。平均価格は、23区でまさかの1億円超えとなる1億1,483万円を記録しています。坪単価が1,000万円(70平米であれば2億円超)を超えるような物件もあり、それに引っ張られているということもありますが、”平均”で1億円を超えるというのはインパクトのある数字ですね。その他の地域についても販売価格の上昇が見られますが、都心部については価格高騰がより顕著となり、新築マンションは高嶺の花とでもいうべき存在になっているのかもしれません。

表1.新築マンションの地域別構成比の推移

※カッコ内は前年比

中古マンションは、当たり前の選択肢に。

中古マンションについては、(公財)東日本不動産流通機構が2024年1月に公開した「首都圏不動産流通市場の動向」をもとに検討していきます。首都圏の中古マンション成約件数は前年比+1.6%の35,987件となりました。成約件数は微増といったところですが、成約価格については前年比+6.9%の4,575万円となっています。23区では平均成約価格が前年比+6.0%の6,126万円となり、10年前の23区の新築マンション平均価格である5,853万円を超えており、一昔前の感覚とは市場が大きく変化していることがわかります。

表2は新築マンションと中古マンションとの比較になります。首都圏全体の平均でみると、中古マンションの平均価格は新築の6割弱となり、中古マンション価格の上昇が続いてはいるものの、まだまだ相対的には割安といえそうです。平均面積については、新築・中古ともに前年と大きな変化はなく、中古の平均築年数についても大きな変化はないという結果でした。

表2.新築・中古マンションの比較

※カッコ内は前年比

新築マンションの販売戸数と中古マンションの成約戸数の推移をみると、この数年でマンション市場が大きく変化していることがわかります(図2)。タワーマンションの大量供給が行われた2000年頃においては、首都圏でマンションを買う方の大半が新築を選ぶというマーケットでした。それから20年の時を経て、新築供給戸数は激減し、2016年以降は8年連続で中古マンションの成約戸数が新築を上回るという市場へと変化しています。言い換えれば、首都圏でマンションを購入するとなれば、中古が当たり前という社会になっているのです。

図2.首都圏のマンション流通数の推移

計画的なマンション選びを。

新築・中古ともに価格の高騰が続いているマンション市場ですが、まだまだ価格下落の局面は訪れないかもしれません。新築マンション供給数の23区のシェアはバブル期では17~18%程度である一方、最近は40%程度で推移しています。つまり、どこもかしこも不動産価格がウナギのぼりということではなく、好立地への集中が首都圏の平均価格を押し上げているということですから、バブルのようにパーンとはじけるものではなさそうです。

マンション価格が引き続き高い水準を維持することに加えて、金利が上昇しそうだという不安もあり、住宅購入をためらってしまう方もいると思いますが、そんな方ほど積極的に検討を進めてみることをおすすめします。インフレ局面では、待てば待つほどものの価格が高くなりますから、不動産の中でも特に流動性の高いマンションは、2年後・3年後に価格が大きく下がる可能性は低いでしょう。様子見をしていた分だけ、購入が遠のいてしまうリスクがありますから、以下のような事前準備から始めてみてください。

事前準備(1)住まいに求めることを棚卸する
まずは、ご自身が住まいになにを求めるのかということを具体的に考えてみましょう。雨風をしのげればなんでもいいという方もいれば、夏も冬も快適に暮らしたいという方もいるはずです。子どもたちとコミュニケーションがとりやすい広々としたリビングが欲しい方、自分だけの趣味の部屋が欲しい方、ガレージが欲しい方、すべてをしまえる大きな収納が欲しい方、とにかく資産性を求める方など、さまざまな希望があるでしょうから、それらの要望を書き出して、優先順位をつけてみましょう。

事前準備(2)住まいの種類とその特徴を知る
つぎに、それらの要望を実現できる住まいのあり方としては、どのようなかたちが自分に合っているのかを検討してみます。戸建とマンションで暮らし方は大きく異なりますし、新築か中古か、リノベーションをするかしないかなどでお金のかかり方や住まいのグレードも変わります。実際にそれぞれの家を見に行ったり、住んでいる方のお話を聞いたりすることで、イメージを固めてみるとよいでしょう。

事前準備(3)無理のない資金計画を立てる
住まいでかなえたいことが少しでも見えてきたら、現実を直視するプロセスに入ります。家族構成や収入・支出、長期的なライフプランを考えながら、住宅購入に使える金額をクリアにしていきましょう。シミュレーションを行う際には、金利の変動リスクをどこまで許容するか、将来的な売却の可能性はあるかなど、自身の価値観や将来展望をお金というかたちで可視化するのです。背伸びして高価格帯のマンションを選ぶのか、生活資金を十分に確保できる程度の予算にするのかなど、各々に適した家の買い方が見えてくるはずです。

今回は、2023年のマンション市場について解説しました。高騰が続く市場を見ていると「本当に買えるのか」と心配になりますが、ご自身の希望を正しく整理していけば、おのずと自分に合った住まいに出会えますから、ご安心ください。自分だけで事前準備を行うのは簡単ではありませんので、信頼できる第三者に相談しながら準備を進めるとよいかもしれませんね。

無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、不動産やお金のプロと一緒に、マンション選びからリノベーションの設計施工まで、ワンストップでサービスを提供しています。ご興味を持たれた方は、リノベーションセミナーや相談会にお越しください。

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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