最上階は暑いのでしょうか?

リノベーションなんでも相談室 | 2023.8.1

ご質問

マンション探しをする中で、眺望のよい最上階に興味を持っています。夏の暑さが心配なのですが、やはり最上階は暑さに弱いのでしょうか

最上階といえば、マンションの中でも特に人気のある部屋の位置です。上階からの騒音を気にしなくてもよいし、眺望や日当たりがよい場合も多く、他の階の部屋と比べて高値で取引されることがほとんどです。一方で、最上階で心配になるのは夏の暑さかもしれません。実際のところ、どうなのでしょうか。

今回は、団地からタワーマンションまで幅広い物件のリノベーションをお手伝いしてきた、宅地建物取引士でマンション管理士の”こっしー”が、最上階の夏の暑さについて解説してまいります。

最上階は、暑さに弱い。

結論からお伝えすると、最上階は暑さに弱い部屋位置であるといえます。図1は季節ごとの建物の各面における日射量を示しています。暑さに悩まされる夏季については、東西や南の壁面と比べて、水平面(屋根面)の日射量が極めて大きくなっていることがわかります。夏は太陽高度が高くなりますから、屋根面にさんさんと太陽光が降り注ぎ、その熱が最上階住戸を暖めることになるのです。

図1. 建物各面の日射量の季節変動

住宅の事例ではないのですが、2022年の夏にさいたま市内の小学校で行われた断熱改修プロジェクト「あついぜ さいたま! 芝川小・遮熱フェス2022」の報告を見ると、最上階の厳しさをうかがい知ることができます。1974年に無断熱状態で建てられた校舎の最上階の教室では、エアコンをかけても室温が30℃以上になることが珍しくなく、教室の天井の表面温度は40℃を超えることもあったそうです。断熱改修によって夏季の室温は6~8℃の改善が見られたとのことですが、なにも対策をしなければ天井面が40℃に達するとは驚きです。勉強どころではありませんね。

十分な対策があれば、それほど暑くない。

とはいえ、比較的新しいマンションで暮らしている人であれば、最上階であってもそれほど暑さには悩まされていないかもしれません。最近のマンションでは天井面に十分な断熱材が施工されていることも多く、熱が流入しやすい窓についてもペアガラスのサッシなど比較的性能が高いものが使用されています。気密性も高く、エアコンがよく効く環境が整っていますから、無断熱の小学校のような惨事にはならないでしょう。

図2は、2014年に独立行政法人建築研究所が発表した基礎調査をもとに、マンションの部屋位置ごとの暖房負荷・冷房負荷を示しています。天井面には壁面の2倍以上の厚みの断熱材を貼っているという前提条件もあり、冷房負荷においては部屋位置の違いによる差が小さくなっています。

図2.部屋位置による冷暖房負荷の違い

リノベーションでやるべき、暑さ対策。

最後に、中古マンションの最上階をリノベーションする場合の暑さ対策について考えてみます。省エネ意識が急激に高まったここ数年の新築マンションと違い、壁や天井の断熱にしても窓の性能にしても、新築には劣る状態からのスタートだということを念頭に置いておきましょう。築年数が古い建物では、先ほどの小学校と同じように、最上階であっても天井も壁も無断熱ということはよくありますから、より一層の注意が必要です。

最上階の暑さ対策(1)天井面の断熱施工
夏季の屋根面はたくさんの日射を受けてコンクリートが暖められます。暖められたコンクリートから室内への熱の移動を防がなければなりませんから、天井面の断熱は最も重要な対策といえます(図3)。硬質発泡ウレタン吹付やボード状の断熱材貼りなど断熱材の種類や工法はさまざまですが、壁面よりも手厚く断熱施工をする必要があります。

図3. 天井面の断熱の様子

最上階の暑さ対策(2)日射対策
一般的なマンションでは、上階のバルコニーが庇の役割を果たすことで、太陽高度が高い夏季の昼間にはあまり室内に直射日光が入ってきません。最上階の場合は上階のバルコニーや庇が無いことも多く、窓からの日射が入らないような工夫が必要です。すだれやよしずのように部屋の外側で対策をするのがベストですが、難しい場合は以前のコラムでもご紹介したハニカムブラインド(図4)を利用するのもよいでしょう。Low-Eガラスのインナーサッシを導入するのもおすすめです。

図4. ハニカムブラインド

その他、最上階以外のお部屋にも共通する内容になりますが、壁面の断熱施工、気密性の向上、空気の通り道を考慮した間取りづくりなども抜かりなく行っていただければ、古いマンションの最上階でも快適な夏の暮らしを実現することができます。リノベーションをされる方は、ぜひ試してみてください。

今回は、マンションの最上階の暑さについて解説しました。以前、リフォーム済みの団地の最上階を購入してお住まいの方から、『夏はエアコンをかけても部屋が全く冷えない』というお話を聞いたことがあります。住まいの暑さ・寒さは住み始めてみないとわからない場合が多いのですが、あとから後悔することの無いよう、どこまで暑さ対策をするべきかを検討してみてください。

無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、古いマンションや団地でも快適に暮らせるような性能向上リノベーションを提供しています。ご興味を持たれた方は、リノベーションセミナーや相談会にお越しください。

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“こっしー”プロフィール

無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。

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