お宝物件は見つかりますか?
リノベーションなんでも相談室 | 2023.7.4
中古マンション購入を考えるなかで、少しでも割安なものが買えないかと期待してしまいます。お宝物件のようなものを見つけることはできるのでしょうか
お宝物件、いい響きですよね。マンションはそもそもの価格が高いものですから、ほんの少し割安な物件を手にすることができれば、それだけで数百万円という規模で得することができるかもしれません。出会えるものなら、ぜひ出会ってみたいお宝物件ですが、そんなものが本当にあるのでしょうか。
今回は、自身も3度の中古マンション経験を持つ、宅地建物取引士でファイナンシャルプランナーの”こっしー”が、もしも出会えたら嬉しい「お宝物件」について解説してまいります。
割安な「お宝」には期待できない
そもそも、お宝物件というのはどのような物件を意味するのでしょうか。いろいろな定義の仕方が考えられますが、今回のご質問では「少しでも割安なもの」という表現がありましたから、周辺相場を逸脱した安い物件、というくらいに捉えておきましょう。
その前提のもと、いきなり夢を打ち砕くような結論となってしまうのですが、マンションを探している一般の方がお宝物件に出会える可能性は限りなくゼロに近いと言ってよいでしょう。表1のように、なんらかの理由があることにより割安に見える物件もありますが、実際には割安なわけではなく、通常の物件よりも低い価格で相場が形成されているだけということになります。実は、前職時代に私が初めて購入したマンションは、表1のいくつかが当てはまる物件だったのですが、当時は割安なものを買えたと興奮しておりました。お恥ずかしい話ですが、リノベーションの仕事をしていても、お宝物件への幻想を抱いてしまっていたのです。
表1. 割安に見える物件の代表例
借地権 | 土地の所有権を持たないため、場合によっては住宅ローンが満足に借りられず、土地権利が所有権のマンションと比べると取引価格が安くなる。 |
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旧耐震 | 多くの銀行で住宅ローンが満足に借りられず、新耐震のマンションと比べると取引価格が安くなる。旧々耐震のものは、さらに銀行の見方が厳しくなり、取引価格も下落する。 |
既存不適格 | 用途地域の変更などにより建物の高さなどが現行の基準を満たさなくなってしまったもので、銀行によっては住宅ローンが満足に借りられないため、通常のマンションと比べると取引価格が安くなる。 |
違法建築 | 接道が不足しているなど、法規にそぐわない建物であるため、基本的には住宅ローンを使うことができず、現金での購入が必要となる。そのため、通常のマンションと比べると取引価格が大きく下落する。 |
特に問題がない物件であれば、売る側としてもわざわざ相場よりも安い金額にする必要性はありませんから、なにか特別な理由がない限りは相場通りの価格で売りに出されることになります。安くしてもいいから、秘密裏に売りたい・とにかく早く売りたいというケースでは、市場に流通する前に不動産会社が買い取ることになり、一般の方の前に割安物件が転がってくることはほとんどありません。
もちろん、値付けの間違いなどにより本当に割安な物件が出てくることも稀にあるのですが、そのような物件は即日で購入申込みが入ってしまい、よほどの行動力と幸運の持ち主でないと購入することができません。そもそも、マンションを買いたい人それぞれに、立地・広さ・予算などの希望条件があるでしょうから、割安な物件がたまたま世に出たとしても、それが希望条件に合致するとは限りません。割安なお宝物件への期待は、持たない方が賢明といえるでしょう。
リノベ前は、ある意味「お宝」かも
ここまでは、割安なものを「お宝物件」として定義していましたが、リノベーションを検討している方にとっては、リフォームが施されていない状態のお部屋も「お宝物件」といえるかもしれません(図1)。以前のコラム「リノベ前のマンションが見つかりません」で解説したとおり、コロナ禍以降は不動産買取業者の動きが活発で、リフォーム済みの在庫物件が積みあがっています。リフォーム前の物件があれば、多少高くても不動産業者がどんどんかっさらっていく状況が続いていたため、リフォーム前のお部屋は希少価値の高い「お宝物件」といえるわけです。
不動産情報を日々ウォッチしていると、同じマンション内でリフォーム前のお部屋とリフォーム済みのお部屋が同時期に売りに出ているケースを目にすることもあります。リフォーム済みのお部屋は、設備の交換と表層のやり変え程度しかしていないのに、リフォーム前のお部屋に比べて1,000万円以上高い価格で売られていたりするのです。夏の暑さや冬の寒さに弱いまま、使い勝手の悪い間取りのまま、表面だけきれいになったお部屋に1,000万円余計に払うよりは、そのお金を性能向上や自分の好みに合わせた空間づくりに充てた方が満足度の高い住まいづくりができるはずです。
中古マンション購入を検討する場合は、割安な「お宝物件」には期待せず、未改装状態の「お宝物件」を狙ってリノベーションで良質な住まいをつくる、という姿勢で臨むのがよさそうですね。
今回は、あったらうれしいお宝物件について解説しました。残念ながら、割安な「お宝物件」を探すのは現実的ではありませんが、リフォーム前の物件を正しく見極めスピーディに判断するということができれば、希少価値の高い「お宝物件」を手に入れることはできそうです。リフォーム前物件の選び方、意思決定の仕方は簡単なものでは無いですから、頼れるプロと二人三脚で進めていくとよいでしょう。
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“こっしー”プロフィール
無印良品のリノベーションで働く、“こっしー”こと大越 翔は、自身の自宅も含めて100以上のリノベーションを担当。
宅地建物取引士やファイナンシャルプランナー、マンション管理士としての知見を生かしながら、さまざまな物件と向き合ってきました。
みなさんの住宅購入・中古マンション・リノベーションのさまざまな疑問・質問にコラムを通じ、お答えします。