マンション購入前に、ハザードマップは確認すべきですか?

MUJI×UR団地レポート | 2025.9.17

ご質問

水害のニュースを目にすると、家を買うことに対する一抹の不安が頭をよぎります。マンションであれば戸建よりは安心なのでしょうが、ハザードマップなどは事前に確認するべきなのでしょうか

夏になるとゲリラ豪雨に見舞われることが珍しくなくなりました。それに伴う洪水や土砂崩れ、内水氾濫などのニュースを目にする機会も増えているように思えます。水害のリスクはもはや無視できるものではありませんから、マンションであっても購入前にきちんとハザードマップを確認すべきなのでしょうか。

今回は、湾岸から丘陵地まで幅広い地域で物件探しのお手伝いをしている、マンション管理士で宅地建物取引士の”こっしー”が、ハザードマップについて解説してまいります。

ハザードマップとは?

まずはハザードマップの基礎知識をインプットするところからはじめてみましょう。そもそも日本は地理的な条件から、地震・台風・洪水・土砂崩れ・火山噴火などによる自然災害が発生しやすいという特徴があります。これらの災害への対策として、たとえば建物の耐震化が進められたり、河川の治水工事が行われたりと、これまではハード面での対策に重きが置かれていました。ところが、度重なる災害を経験するなかで、ハード面の対策だけでは生命や財産を守ることができないということも明らかになり、住民がその地域の災害リスクを正しく知り、それに備えるためのソフト面の対策も求められるようになりました。

ハザードマップは、その地域で起こりうる災害リスクを地図上で可視化したものになりますから、洪水・津波・高潮・土砂災害・火山・地震被害などさまざまな種類が存在し、各自治体のWEBサイトなどで内容を確認することができます。図1は私が生まれ育った地域の水害ハザードマップなのですが、江古田川・妙正寺川という2つの川沿いの地域で特に浸水リスクが高いことがわかります。また、川から離れていても地形的な特徴などによっては浸水の可能性があるということも視覚的によくわかります。不動産取引においては、令和2年より売買や賃貸の重要事項説明の際に水害ハザードマップの説明をすることが義務づけられるようになるなど、その重要性は日に日に増しているのです。今回のご質問への回答としては、なるべくマンション選びの段階からハザードマップを確認しましょう、ということになります。

図1.水害ハザードマップの一例(東京都中野区)

ハザードマップの確認方法

それでは、いざマンション購入を検討する際には、どのようにハザードマップを確認すればよいのでしょうか。検討する物件ごとに何種類ものハザードマップを見ようと思うと骨が折れる作業になってしまいますが、国土地理院が提供している「重ねるハザードマップ」を使えば、代表的なハザードマップを文字通り地図上に重ねて確認することができます。購入を検討するマンションが出てきた際には、国土地理院「ハザードマップポータルサイト」にアクセスし、「重ねるハザードマップ」にマンションの所在地を入力してみてください(図2)。

図2. ハザードマップポータルサイト(国土地理院)

ここでは、無印良品のリノベーション青山店の住所を入力して調べてみます。津波や高潮のリスクは無い地域ですので、「洪水浸水想定区域(想定最大規模≒1000年に一度の規模)」と「土砂災害警戒区域」を重ねて表示してみました(図3)。青山店(中央の赤丸)については、いずれも心配ないことがわかりますね。周辺を見ると、原宿や渋谷の暗渠になっているあたりでは、1000年に一度の規模の降雨があった際には浸水する可能性もあるようです。このようなかたちで、マンションの所在地を入力すれば、特に注意すべき水害や土砂災害のリスクを簡単に確認することができますから、複数の候補物件があるのであれば、それぞれ調べてみるとよいでしょう。

図3. 重ねるハザードマップの実際の画面

ただし、「重ねるハザードマップ」で網羅的な情報を確認できるわけではありません。代表的なところでいえば、地震の際の液状化のリスクについてのハザードマップは重ね合わせることができず、各自治体が公表している内容を確認する必要があります。その際には、図2の右側「わがまちハザードマップ」から自治体やハザードマップの種類を選択することで、各自治体の該当ページに遷移することができます。ためしに青山店がある東京都港区について調べると、最新の「液状化マップ」を閲覧することができます。青山店(中央左の赤丸)は青山台地に位置するので、液状化のリスクも低いようです(図4)。水害リスクとあわせて、青山店は非常に安全な場所に位置していると評価できますね。

図4. 港区液状化マップ(東京都港区の一部)

物件を選ぶには。

以上のように、気になる物件があれば、「ハザードマップポータルサイト」を出発点とすることで一通りの情報を確認することができます。ハザードマップを確認した後には、その結果をどのように判断するか、ということを自分なりに考える必要があります。青山店のように「心配なし」というのは珍しいケースで、東京23区の東部や北部では、計画規模(100~200年に一度の規模)においても幅広い地域で浸水リスクが指摘されています。とはいえ、その地域を避けるべきだということでもなく、マンションにおいては多くの場合で2階以上の住戸は被害を受けませんから、浸水が気になる場所では1階を避けるということでもよいのかもしれません。

また、浸水リスクへの対応方法として保険も重要な役割を果たします。一般的にマンションの管理組合として、共用部での火災・漏水などへの対策として火災保険に加入しますが、浸水リスクが高い場所に位置するマンションであれば水災補償のオプションをつけることもできます。心配がある方は、共用部の火災保険の内容について、購入前に確認するとよいでしょう。あるいは、1階の住戸を購入する方であれば、ご自身が加入する火災保険に水災補償のオプションをつけることも検討してみてください。

その他、地下型の機械式駐車場は車の水没リスクがあったり、エントランスが道路面より低いと浸水の可能性が高まったり、万が一エレベーターが止まった際に高層階だと昇降が大変だったりと、いろいろと検討しなればならないこともありますから、ハザードマップで色付きの物件を選ぶ際には、信頼できるプロに相談するのもおすすめです。

今回は、ハザードマップについて解説しました。海や川が近くになくても、集中的な豪雨を下水道が処理しきれないことによる内水氾濫はいたるところで発生する可能性があります。内水氾濫のハザードマップは整備が十分に進んでいませんから、各自治体の更新情報についてはアンテナを張っておくとよいでしょう。少なくともすでに公開されている情報についてはしっかりと確認し、適切な判断ができるように意識して動いてみてください。

無印良品のリノベーション「MUJI INFILL 0」では、ハザードマップも踏まえたマンションのご紹介から、設計・施工まで、ワンストップでサービスを提供しております。ご興味をお持ちの方は、リノベーションセミナーや相談会にお越しください。

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