【MUJI×UR トークイベント】藤野千夜先生と語る、団地の魅力と未来(後編)
MUJI×UR団地レポート | 2026.3.27
※このレポートは、2026年2月7日(土)に無印良品東京有明で行われたトークイベントの模様を採録しています。
2 MUJI×UR モデルルームの概要
松本
MUJI×URについてちょっとご紹介をさせていただきます。MUJI×URは2012年にスタートして13年くらい経ちます。

プロジェクトをスタートするときに団地に関するアンケートを取ったところ、一番賛同が得られた項目が「間取りを自由にできるとよい」ということでした。

賃貸住宅でこれができたら、新しいご提案になるのではないか?ということで、ここからスタートしました。

また、プロジェクトをスタートするにあたり、団地の魅力って何だろう?と考えました。
団地というとやっぱり「古い」というイメージがあるんですけれども、「古いから悪い」ではなくて「新しいよりも古い方がよい」という考え方もあるのではないか?ということ。
あと、URさんは70万戸の住戸をお持ちですので、たくさんの方に新しい暮らしをご提供することで、新しい暮らしのスタンダードをつくれるのではないか?というふうにも思いました。
それから、団地そのものを見直してみると、日当たりがよくて風通しがよいということにも気づきました。
だったら間仕切りを少なくして、なるべく一室空間の中で日当たりや風通しを堪能できる暮らしができるのではないか?ということを考えました。
その中で出てきたコンセプトが、「こわしすぎず、つくりこみすぎない」です。
それを実現するための3つのキーポイントとして「生かす」「自由にできる」「変える」があります。

まず「生かす」ですが、フルリノベーションのように全部を壊してもう一度つくるのではなく、団地のいいところを生かしていくということです。
「自由にできる」「変える」というのは、賃貸住宅って決められた間取りの中に自分の暮らしをはめていかなければいけないものが多かったと思うんですけど、そうではなく、賃貸住宅であっても自分の暮らしに合わせて間取りを変えていけるということです。

こちらの写真は団地の住戸のビフォーアフターです。
現在、北海道から九州まで79団地で約1,500戸のMUJI×URの部屋がありますが、「なかなか空きがなくて住めない」といつも怒られています。今もちょっとずつ増やしているところですので、ご興味がありましたらWEBサイトを見ていただけたらと思います。

ここまでは住戸の話だったんですけれども、現在は「団地まるごとリノベーション」といって、共用部のリノベーションや周辺地域を巻き込む形でのコミュニティ形成も行い、さらに情報発信をするというプロジェクトも行っています。

首都圏では、先程もお話した千葉市の花見川団地の商店街のリノベーション、横浜市の港南台かもめ団地の集会所のリノベーションを行いました。
あと大阪の方では、堺市の泉北茶山台二丁団地と枚方市の中宮第3団地で広場やプール跡地をリノベーションしています。

それから、この無印良品東京有明のMUJI×URのモデルルームがちょうど昨日オープンしたんですけれども、このような間取りになっています。

実は大阪の無印良品グランフロント大阪にもMUJI×URのモデルルームがありますが、ここ東京有明では、住居部分だけでなく共用部である屋外空間も一部再現しています。


住居内に関しては、実際の古い団地から鴨居や柱などの部材を持ってきて移築するような形で再現しています。




見ていただくと、公団時代のマンホールの蓋やサインがあったり、麻畳や持ち出しキッチンなど、MUJI HOUSEとURさんで共同開発したパーツがあったりします。
松枝
ありがとうございます。新しいプロジェクトの説明を井上さんの方からお願いします。
井上
今回モデルルームが新しくできたことをきっかけに、「団地をみんなで考える研究所」という新しいプロジェクトをMUJI HOUSEさんといっしょに始めることにしました。

これまではMUJI HOUSEさんとURで団地について考えてきたのですが、これからはお客さまにも「団地をみんなで考える研究所」の研究員となっていただき、「団地にあったらいいな」と思うものをいっしょに考えていただくプロジェクトにしたいと思っています。

例えば、モデルルームにお集まりいただいていっしょにワークショップをしたり、SNSでアンケートを取らせていただいたりして、団地のお部屋の中や共用部、屋外空間に「こんなものがあったらいいな」・「団地でこんな生活がしたいな」というご提案をいただき、それをMUJI HOUSEさんの力をお借りして商品開発して、実際に団地で実現していきたいと思っています。
これからさまざまな場所でお声をお聞きしますので、みなさまご参加よろしくお願いいたします。
松枝
ありがとうございます。
藤野先生、モデルルームをご覧いただいて印象に残ったものはありますか?
藤野
とにかく素敵でした。特にキッチンの下にゴミ箱が入るスペースがあるのがいいなあと思いました。あと、古い鴨居や柱が移植されていて、柱にはこどもたちの背丈が書かれているのも印象的でしたね。
それから、麻畳が古い柱と合っているなあと思いましたし、足で触れた感じが心地よくて新しい和室体験でした。生活感が残っているところや、それが今風にアレンジされているところがあり、懐かしさがあって落ち着く感じが良かったです。

松本
ありがとうございます。MUJI×URでは和室を洋室化するのではなく、和室を生かしていきたいと思い、強度のある麻畳を入れることで洋室のように使えるご提案をしています。
柱は建て替えが決まっている団地に取りに行ったんですが、その中でも成長の記録が書かれているものを選んで一番いいところに使いました。

藤野
あとは玄関前の牛乳瓶受けですね。「昔は牛乳は配達だったんですよ」と若い方に話すとびっくりされるんですけど、今私が住んでいる団地も50年以上経っているので、古くから住まわれている方のところには牛乳瓶受けがそのまま残っています。部屋によってはそこが空っぽになっていたり、ぬいぐるみが飾られていたりもしていますね。
あとモデルルームの屋外空間のところでは、古いゴミ箱がプランターとして使われていて、懐かしさとエモさがあっていいなあと思いました。

松本
ゴミ箱はURさんから「ぜひ持って行ってください」と言われて、どこに使おうかなと思いながら持ってきたんですが、無印良品店舗の植栽担当の方と話していく中で「プランターにしたら面白いんじゃないか?」という話になり設置させていただきました。
3 団地のこれからについて
松枝
ありがとうございます。そんなMUJI×URのモデルルームですが、みなさんにもぜひ後程ゆっくりご覧いただけたらと思います。
では最後に「団地のこれから」についてお話しができればと思っており、3つテーマを設けました。

まずは藤野先生が考える団地の「あったらいいな」について教えてください。
藤野
このお題を事前にいただいてすごく考えたんですけど、今の暮らしにとても満足しているので、友達と話していても「立ち食いそばがあったらいいかな?」とか「カレースタンドがあったらいいかな?」くらいしか出なくて。
先程のアンケートにもありましたけど、共同菜園はあるとやっぱり楽しいかなと思いました。それと、ペット可の物件が稀にあるようですが、わんこ好きとしてはもうちょっと増えたらいいなと思います。ひばりが丘団地で1棟見かけました。
井上
はい。ひばりが丘団地では1棟だけご提供しています。URでは、ペット可の住宅を「ペット共生住宅」という名前でご提供しているのですが、とても人気でなかなか空きが出ない状態です。
ペットといっしょにお住まいいただくことで、お客さまが豊かなお気持ちでお暮らしになれるということに、URとしてもお応えしていきたいと思いますので、今後もご提供してまいります。
共同菜園については、URでは「クラインガルテン」という名前でいくつかの団地でご提供しています。年間1万円程で、屋外空間にある畑を自分用にお使いいただけるものとなっています。最近も1団地で新しくご提供が始まりました。
畑を耕す時間に、耕す方同士のつながりが生まれます。今後もそのような、お住まいの方同士のつながりが生まれる屋外空間の使い方を積極的に提案していきたいと思っています。
先程のアンケートでは、「団地でキャンプがしたい」や、「団地でバーベキューがしたい」というお声もいただきました。埼玉県三郷市にあるみさと団地には、団地内で焚火やバーベキューができる場所があります。

松枝
ありがとうございます。では次のテーマ「団地における『つながり』とは」についてお話を伺いたいと思います。先程松本さんからお話しいただいたように、MUJI×URのプロジェクト全体に共通するキーワードであり、URさんの方でも「ゆるやかに、くらしつながる。」というコンセプトで取り組みをされています。「つながる」というキーワードで藤野先生がイメージするものはありますか?
藤野
私はわりと自由な暮らしをしている方で、何かを強制されたりするのは嫌だなと思うタイプです。今の団地は必ず自治会に入らなければいけないということもないし、何かを強制的にさせられることもありません。
お祭りとかも「来たければいらっしゃい」という感じが多くなっていて、そのゆるやかさが気に入っています。
あと今住んでいる団地ではエレベーターの前に、自分は手放したいけどまだ使えそうなものを置く場所があって、わりとすぐどなたかが持って行かれるんですね。私もたまにいいなと思うものがあるといただいています。そういう形でのつながりになんとなく団結感を感じますね。
それから「団地に住んでいます」と言うと、「私も住んでいました」「私も住んでいます」と声をかけていただくことがあるんですけど、同じ県の出身者くらいの親密さを感じますし、そういうあたたかいつながりもいいなと思っています。

井上
URは、前身の日本住宅公団ができてからちょうど70年を迎え、先程松枝さんからもご紹介いただきましたが、新しく「ゆるやかに、くらしつながる。」という事業メッセージを発表しました。URが団地で実現したいことを表しています。
『団地のふたり』に登場する夕日野団地がまさに「ゆるやかに、くらしつながる。」団地の世界観そのものだと思っています。
佐久間のおばちゃんと、なっちゃんやノエチが普段から「おはよう」とあいさつできて、何かあったときには助け合える距離感や、太極拳のようなイベントに、自分が行きたいときに行ける、そんな、自分らしい距離感で心地よくつながることができるところが、団地の良さだと思います。そういった団地をこれからも育んでいきたいと思います。
松枝
ありがとうございます。松本さん、先程お話しされた「MUJI×UR団地まるごとリノベーション」でコミュニティ活動について伺いたいです。
松本
リノベーションをずっと行ってきていますが、今求められていることの一つにコミュニティがあります。いくつかの団地で活動をしてきた中で感じるのは、誰か一人のキーマンを見つけて団地を良くするということではないということです。
住民の方一人ひとりがゲストではなく、自分たちがホストとして周辺地域の方を団地へお迎えするようなマインドに変わっていくと、すごくいいコミュニティができるというのが分かってきました。これからも「MUJI×UR団地まるごとリノベーション」は続いていくので、そういうスタンスで住民の方に伴走するような形でコミュニティをつくっていけたらいいなと思います。

松枝
ありがとうございます。では3つ目のテーマ「団地のこれから」というちょっと広いテーマになりますが、今後団地がどうあったらいいなとか、期待することなどを含めて藤野先生からお願いできますでしょうか?
藤野
さっき松本さんがお話しされた「こわしすぎず、つくりこみすぎない」というコンセプトが素晴らしいなと思っています。その余白の部分が、それぞれが自由に楽しめるところだと思うので。
そういう意味で、広いスペースがあっていろいろなことができる団地には独自の強みがあると思いますし、その団地らしさがなくならず、ずっと残っていくといいなと願っています。
私は60年くらい前にも団地に住んでいた人間なので、それが今もそのままあるのが本当にうれしくて住んでいますので。
井上
『団地メシ!』の中でも、ゆりさんが「昔の団地が、今もこんなふうに生きてるって嬉しいわ」と話していましたが、団地に長くから住んでいただいている方にも、新しく住んでいただく方にも、団地の良さを感じていただける団地の再生を目指していきたいと思います。
団地を建て替えることもリノベーションすることも再生ですが、屋外空間の緑といった余白を引き継いで、新しくお住まいいただく若い方やファミリーの方にも、心地よく住んでいただける団地にしていきたいと思います。

松枝
ありがとうございます。藤野先生から最後に今日の感想などをお聞かせいただけますでしょうか?
藤野
私は人前で話すのが苦手でトークイベントなどはこれまでお断りしてきたんですが、URの方やMUJI×URの設計者の方にお会いしたいと思い、今日は参加させていただきました。
井上さん、松本さんのお話を聞かせていただき、団地のこれからを同じように思っておられることが分かりとても心強く感じました。これからも楽しみに見守りたく思います。
井上
先生に、『団地のふたり』のいろいろな台詞や表現を通して、団地への愛をお伝えいただき、とてもうれしく思います。今後とも、なっちゃんとノエチの活躍をお祈りしています。
松本
僕は団地の住戸リノベーションの設計をして、みなさんに住んでもらい喜んでもらうということしかできないのですが、先生は書くことで多くの方に団地の良さを伝えることができるので、ぜひ『団地のふたり』が続いていくことを楽しみにしております。
松枝
ありがとうございます。本日のトークセッションは以上とさせていただきます。ご清聴いただきありがとうございました。


お集まりいただいたみなさま、ありがとうございました。
今後のMUJI×UR団地リノベーションプロジェクトの取り組みにご期待ください。



