【MUJI×UR トークイベント】団地のもったいない場所どないする?−全国の団地共用部にかくれた“おもろい場所”(後編)

MUJI×UR団地レポート | 2026.3.13

※このレポートは、2026年1月18日(日)に無印良品 グランフロント大阪で行われたトークイベントの模様を採録しています。

Part3MUJI×UR 団地まるごとリノベーション西日本での事例紹介

松本
MUJI×URも西日本で団地まるごとリノベーションを実施していますので、紹介させていただきます。橋本さんお願いします。

橋本
団地まるごとリノベーションは関東でも行っている取り組みとなりますが、西日本では特に広場にスポットを当てていて、サブタイトルで『となりのひろば』としています。

ハード改修の工事だけでなく、ソフト面のコミュニティ形成にも取り組んでいて、団地でのイベントなどを通して、団地周辺地域のみなさんのご意見を伺いながら、共用部の改修に活かしていく活動となっています。

西日本では2つの団地で団地まるごとリノベーションを実施しています。
まず1つ目が泉北茶山台二丁団地です。大阪府堺市にある団地で、駅周辺のショッピングモールには百貨店も入っており、買い物には不便のない環境です。

特徴として、森林公園などが多く緑豊かなエリアで、地名に泉ヶ丘や茶山台など「山」や「丘」、「台」がついている通り、街の中は起伏が多いため、高低差のある街となっています。

今回、団地まるごとリノベーションを実施した場所が、資料で青く囲った団地北側のブロックとなります。

この団地では、共用部の課題が3点ありました。1つ目は資料左上の「旧土俵ひろば」と言われる場所です。大屋根の下に本物の土俵がありました。なぜ団地に土俵があるのかと思われた方も多いと思いますので背景をお伝えしますと、昭和の相撲人気を受けつくられたようです。実際に、ここでこども相撲が行われていた記事が残っています。しかし、時代の変化とともに使われなくなってしまい、土俵部分がデコボコになったことで、お子さんや高齢者の方がつまずきやすく危険な場所になってしまいました。また、土俵のある場所が団地の奥まったところにあり、外から見えにくい場所に位置しているため、今お住まいの方にもあまり知られていない場所でした。

二つ目は集会所です。昭和の時代では、子供会などでよく利用されていましたが、最近ですと少子化・高齢化の影響もあり、利用率が下がっていました。こちらも土俵と同じく、住民の方にあまり認知されていない施設となっていました。

最後が円形広場です。こちらは最寄り駅の「泉ヶ丘駅」からすぐ近いところにあるのですが、お住まいの方が駅を利用する時に通る場所で生活動線上に位置しているものの、目的のないただ通過するだけの場所になってしまっていました。屋根がなく、休憩場所や滞在できる空間もないため、寂しい何もないスペースとなっている状況でした。

見通
橋本さんからご説明いただきました、課題を抱えている3つの共用部をリノベーションするにあたり、いきなり何かをつくることは違うと考え、イベントを通じて住民の皆さんのニーズ調査を行い、ハードに落とし込んでいくことにしました。
イベントも自分たちで什器や屋台をつくって実施しました。

こちらは実際にイベントで行ったヒアリングの様子です。ホワイトボードに質問を書いて絵で表現してご自身の希望に近いものにシールを貼っていただきました。そこで出た希望が「楽しいイベントがしたい」でしたので、みんなさんが集まれるようなイベントを企画
しました。団地の近くで活動されている「泉北フォークダンスクラブ」さんにご協力いただき、団地に集まっていただきました。

後ほど松本さんから説明がありますが、広場のハード改修として地面に円を描いたのですが、円を中心にフォークダンスが始まると、イベントに参加してくれていた学生や子育て世代の方、高齢者の方がみんな手を繋ぎながら団地を背景に踊る様子を見て、いい活動ができたなと実感しました。

集会所では月1回イベントを開催し、イベントを一緒に盛り上げてくる出店者の方も、団地や周辺にお住まいの方でプレイヤーとして活動を行いたいと思ってくれている方を募集しました。少しずつメンバーも集まり「ちゃや団2(ちゃやだんつー)」というチームもできました。

こちらは2023〜2025年の間に活動を行ったものをまとめたものになります。点がついているところがイベントになるのですが、最初は3ヶ月に1回の開催でしたが、後半はもっと日常的に使えたらという思いで、月一で開催をしていました。

松本
具体的にどんな改修を行なったのかですが、最初に取り組んだのは団地の顔になる広場なのですが、広場をリノベーションするのが本当に難しかったです。空気をデザインしているみたいな感じで、何からしたらいいだろうと悩みました。

まず、広場の中心が分からなかったので、広場の中心を決めました。中心が視覚的に分かるように、円を地面に描いたのですが、マルシェやイベントを行う時に、そこを中心に屋台を組んでいくようになりました。また、フォークダンスクラブの方と一緒にイベントを行った際もその円を中心に踊り始めたり、効果を感じています。

イベントを行っていない、日常の中でもお子さんがその円に沿ってぐるぐる自転車を練習していたり、ただ地面に円を描いただけなのですが、結構この手法はうまく行ったなと思いました。

また、以前は人が滞在できるような環境がなかったため、URさんと共同で開発した「つながるストリートファニチャー」を設置することにしました。ベンチやテーブルはもちろん、立ったまま使えるハイカウンターを自由に組み合わせながら設置して行きました。実はこの「つながるストリートファニチャー」は、イベントの時は動かすことで屋台にもなるように設計されています。

続いて「旧土俵」ですが、MUJI×URのコンセプトである「こわしすぎず、つくりこみすぎない」と考えた時に何ができるかなと思ったのですが、最近の夏は暑くて外で遊べないぐらいの気温になりますが、この土俵がある大屋根の下に行くと、体感できるくらい本当に涼しいんです。

先ほど橋本さんからお話をいただいたように、元々土俵があったところの土がボコボコで、使うにも使えない状況でした。皆さんが安全に使えるようにしようと、人工芝を敷きました。土俵の隣にあった何も使われていなかった空間にも人工芝を敷き、広場へリノベーションさせていただきました。

ここもイベントでも使ったり、イベント以外の日に見に行くとベンチでおばあちゃんたちがお話しをしていたり、お子さんが遊んでいる状況が作れたので、まずはこれはこれでスタートできたと思っています。

けんちん
土俵が団地にあることが面白いですよね。この団地にもし住んでいて、「土俵あったらどう?」って言われても使えないです笑
人工芝を敷いた広場になったらこの下に集うこともできますし、リノベーションとしては最高にいい形になっているのではないかなと思います。

松本
最後は集会所です。集会所全体の改修まではできなかったのですが、大きい集会室をリノベーションしました。こちらの集会室は、イベントで集まってくださったプレイヤーさんや住民の方が使用されるのですが、特に若い方にも使ってもらいたいと思った時に、どのような設えが最適解なのかを考え、1つは無印良品を感じるようにリノベーションさせていただきました。

イスやカーテンなどを無印良品の商品で揃えさせていただいたのと、床もプレーンなシートが使用されることが多いのですが、少し温かみのあるフローリングにさせていただきました。窓を開けると本当に茶山台らしい豊かな緑がたくさん見えます。写真で見るとリゾート地のような雰囲気ですが、そういったところも活かせたらなと思って設計をしました。
けんちんさんは団地の集会所を使用したりしますか?

けんちん
普段からよく使っていますが、住民の方で知っている方があまりいないと思います。住む際にいただくしおりに記載はされていますが、読まない方の方が多いと思うので、個人で利用ができるということが認識されていないことが一番の問題だと思います。
集会所は「パーティールーム」なんですよね。僕はこどものリコーダーの練習などでも使わせてもらいました。団地住民だと低価格で借りることができるのに使用されていないのはもったいないと思っています。

URさんは限られた職員さんの中で、どの団地でも同じオペレーションでできるとういのが良さだと思っていますが、マンパワーになった瞬間に弱みになってしまうので、集会所の鍵の受け渡しのオペレーションなどいいアイディアを出すお助けができたらいいなと思っています。

橋本
2つ目の団地は中宮第3団地です。大阪府枚方市にある団地で、京阪電車の枚方市駅の隣にある御殿山駅が最寄りの団地です。縦長の団地で、近くには関西外大があります。こちらも地名に山がついている通り、多少高低差のある街となっています。また、禁野という地名もついていて、昔はこの地の領主や殿様が狩りをする特別な場所だったそうです。

この中宮第3団地でリノベーションを行ったのは、資料の青丸のところになります。

この団地では団地共用部の課題が2点あり、1つが「旧管理サービス事務所跡地」です。お住まいの方の事務手続きを行う管理窓口だったのですが、集会所の横へ移転したことにより、使われない遊休空間になってしまいました。約9坪と1LDKのお部屋ぐらいの大きさで、接客カウンターが中央にある分断された間取りとなっていました。

2つ目は、「旧管理サービス事務所跡地」のすぐ横にある「プール跡地」です。元々は子育て世帯を中心に楽しんでいただいていたと思うのですが、時代の変化とともに利用されなくなってしまいました。こども向けのプールで40cmほどの高低差があるため、立ち寄る人も少なく、遊休空間になってしまっていました。

「旧管理サービス事務所跡地」は管理窓口として使用していたため電気や水道のインフラが整っていて、「プール跡地」は陽当たりが良く団地内の集会所からも近いため、ここをつなぎ、再び活用できないかと考えました。

見通
こちらの団地でも泉北茶山台二丁団地と同じく、イベントを通じて住民の方が何を求めているのかニーズ調査行いました。プロジェクト中盤には、地域に密着したコーヒー提供活動等を行っている、SPRINGひらかた珈琲倶楽部のみなさんや大阪電気通信大学の学生さんたちに参加していただき、いつものイベントをプラスアルファで盛り上げてもらいました。

先ほどお話しさせていただいた茶山台との違いですが、こちらも広場を日常的に使ってもらう活動を行ったのですが、なかなか住民の方が集まらない状況が続いていました。状況が変わったのが、プール跡地が広いので、家では遊べないぐらいの量の積み木や外で思い切り遊べるようなおもちゃを手作りして置いてみたところ、親子連れの方がたくさん集まってくださいました。
お母さんやお父さんたちはプールのベンチに腰をかけて、コーヒーを飲んでお喋りを楽しんでくれるようになりました。

松本
こちらでは、プールサイドにしっかり腰が掛けられるベンチを設置して、プールの底面に人工芝を敷き、小さいお子さんの洋服が汚れることを気にせずゴロゴロできたり、寝転びながら遊べるような空間になっています。

「プール跡地」の周りには、球技ができる公園や遊具がある公園もあるのですけど、そこではできないことがここではできるというところでニーズができたのではないかと思っています。

けんちん
夜のベンチのライトいいですね。

松本
ベンチの下にライトを仕込んだので、夜ライトアップされると幻想的でとても雰囲気がいいんです。言い過ぎだと思いますが、ここだけ六本木みたいな感じです(笑)

「旧管理サービス事務所」を「キュウカンサ」と略して呼んでいます。
はじめて伺った時は、倉庫のようになってしまっていたのですが、団地の建設当初からここはURさんと住民さんの最初の接点の場で、ここにはたくさんのコミュニティがあったと思っています。
そんな場所を「キュウカンサ」という名前も残しながら、新しいコミュニティの拠点になったらいいなという思いを持って取り組みました。

「キュウカンサ」の壁面にある棚は、プール跡地の形状をモチーフにしました。こちらの制作は大阪電気通信大学の学生さんたちに協力してもらいました。
自分たちの手でつくりあげてゆくことで、学生さんたちにも団地に愛着を持ってもらい、いつか団地を選んで住んでくれることにつなげることも大切だと思っています。

Part3:共用部の未来

けんちん
団地のもったいない場所ってすごくあると思うんですが、住民からするとやめてほしいリノベーションなどをURさんに考えられることがあります。

これは僕が住んでいる団地の実話なのですが、10年前に広場の改修があって、その時にURさんから住民向けの説明会がありました。資料にある丸い公園について『ここをコンクリートにして、すべり台はなくします』と話しをされましたが、住民の方から『それはやめてくれ』となりました。

なぜそのような反応をしたかというと、ここは幼稚園児や小学生から『まる公』と呼ばれています。こどもたちは「丸いからいい」と思っている感じで、URさんになくすと言われたすべり台もこどもたちは使っていました。実はこの広場にある丸いくぼみのすべり台は、住民にとってはもったいない場所ではありませんでした。URさんも住民の方から言わなかったら分からなかったったことでもあるので、他の人からはもったいないと見えるような場所でも、実は住人に使われている場所ということも実際はあります。ただ、俯瞰して団地を見たときに、もったいないように見えるような場所がたくさんあるというのはURさんの団地の良さでもあります。そういったもったいない場所をいろいろ発掘していくことは大切なのかなと思っています。

橋本
ここをMUJI×URでリノベーションするとしたらどうしますか?

松本
我々からするとこれをどう生かしてより良くしていけるかなという視点になってしまうので、すべり台をなくそうということになってしまったのかなと思います。
この公園で気になるのは、日向しかなくて逃げ場がなさそうに見えるので、例えば縁に沿ってポールを立てて、日陰をつくりたいですね。日差しの強い夏場はその下で日差しを避けられるようにするだけでも今と全然違う快適な場所にリノベーションできるかな、なんて想像しますね。

けんちん
団地に日陰が少ないのですごいいいと思います。

橋本
共用部の工事などを行う際は、どうしても作り手目線で変えてしまったり、効率重視で進めてしまうことも多いのですが、今お住まいの方が何を求めているのかというところを丁寧に伺いながらデザインしていきたいなと思っています。

見通
共有部分でもなく、もったいない場所ではないのですが、個人的に給水塔がすごい好きで。僕が住んでいる花見川団地の商店街から毎日給水塔を見ています。もともと東京タワーが好きで、東京タワーに憧れて上京したのですが、今は東京タワーではなく給水塔を見ながら生活をしています。

給水塔で何か楽しいことが出ないかと、ボルダリングやアスレチック的な遊びができたら面白いなと思ったのですが、給水塔は団地の住民の方の生活の水を送っている場所になるので、関係者以外は絶対入れないようになっています。ボルタリングは絶対無理と分かり、じゃあどうすると考えたのが「I LOVE 団地」で給水塔を使用したグッズです。

バッグや缶バッジなどを展開してみました。Iの部分を給水塔のモチーフにすることで興味をひき、団地に興味を持ってもらうきっかけになればと思っています。花見川団地はこれを持っている人がすごく多いんです。全国いろいろな給水塔があるので、カプセルトイにして、団地のお土産としてもいいのではないかと。

けんちん
商店街に来るきっかけにもなりますよね。

見通
自分が住んでいる団地にお土産があると、友達に会った時に「自分の住んでいる団地に給水塔のグッズがあるんだよ」みたいに、団地のことを話すきっかけになると思っています。本当は「給水塔水筒」が作りたかったです。

けんちん
給水塔が商店街からアイスポットとして見えるように設計されていることが関東の団地では多いです。団地のシンボルタワーとなるように考えられているので、愛されているなと感じました。

松本
僕は団地住戸の1階部分をもっと活用できるのではないかと思っています。窓をうまく使い、おでんやアイスクリームなど対面で物を売るイメージで、小商的な店舗ができたら面白いなと。

団地の1階でそういったことが気軽にできたら、もう少し団地の活性化や共用部を活かせたりできるんじゃないかと感じています。現時点では難しいアイデアですが、いつか実現できたらいいな、なんて思っています。

松本
MUJI×URでは、団地まるごとリノベーションを今後も続けていきたいと思っています。プロジェクトの目指すところは、今日お話しをさせていただいたような共用部のもったいない場所を、もったいなくない場所にしっかりリノベーションをすることで、それをきっかけに住民さんたちの「使いたい」という思いをどんどん増やしていきたいです。
そうなることで、そこをコミュニティの拠点として、団地の暮らしをさらに豊かにしていけたらいいなという思いを持って実施していきたいです。
けんちんさんからも一言お願いします。

けんちん
今日はありがとうございました。今日お話をさせていただきました、集会所が使われていない問題が特に気になっていて、大切な資源が使われていないのがもったいないと思っています。
最近URさんのCMでは、団地の緑が豊かなことや集会所での活動やクリーンメイトさんについて触れられているので、そういったURさんの団地の良さがもっと広まっていってほしいと思っています。

松本
けんちんさん今日はありがとうございました。ご清聴いただきありがとうございました。

お集まりいただいたみなさま、ありがとうございました。
今後のMUJI×UR団地リノベーションプロジェクトの取り組みにご期待ください。