【団地ちょっとレポート】MUJI×URの設計者と歩く「武庫川団地」

MUJI×UR団地レポート | 2025.12.13

10月、真夏の日差しの厳しさが過ぎ去り、日中は過ごしやすい季節の香りを感じながら高層棟が建ち並ぶ「武庫川団地」にて、8回目のお散歩レポートは緩やかにスタートしました。

MUJI×UR団地リノベーションプロジェクトに関わって10年余り、全国70団地ほどでリノベーションに関わってきたMUJI HOUSEの松本と団地愛好家で電気風呂鑑定士のけんちんさんと、団地に深く関わってきた2人が兵庫県西宮市に位置する団地のお散歩の様子をレポートします。

写真右から、MUJI HOUSE 松本、左は団地愛好家/電気風呂鑑定士のけんちんさん。

今回ご紹介する団地情報<武庫川団地>
兵庫県西宮市にある武庫川団地は、5,600戸強が管理されている4つのまちから構成される西日本最大の大規模団地。阪神武庫川線「武庫川団地前駅」から、徒歩5分ほど。

松本
それでは前回の「芦屋浜団地」に引き続いて、一緒に団地レポートしていただける、団地愛好家であり、電気風呂鑑定士のけんちんさんです。

けんちん
引き続きよろしくお願いします!

松本
さあ、武庫川団地にやってきました。前回の芦屋浜団地に続きまして、初めて訪れる団地になるので、とても楽しみにしています。

けんちん
この団地もおすすめスポットがたくさんあるので、乞うご期待ください。

松本
では団地の中央あたりの歩道橋から、住棟に向かって歩いていきましょう。

けんちん
しかし本当にいい天気に恵まれましたね。


松本
早速すごいものが見えてきました・・!これが噂のアレですね。

けんちん
武庫川団地といえば、この「赤胴車」です。
阪神電鉄から寄贈されたもので、現在は集会所として使用されています。


松本
本当に中が、ちゃんと集会所になっていますね。エアコンも付いてますし。
吊り広告とかちゃんと使用されているのがいいですね、笑。

けんちん
運転室にも入れますよ。電車好きにはたまらないですよね。

松本
これはたまらんですね、笑。子供の頃にこんな施設があったら毎日通ってましたよ。


けんちん
実は私も電車好きで、団地、電気風呂そして電車・・・、全部「D」が頭文字なんですよね、笑

松本
すごい偶然ですよね!これも必然性があるのでしょうか・・・

けんちん
それではそろそろ武庫川名物「クロスメゾネット」に行ってみましょうか。

松本
はい!もう聞いただけでワクワクしてしまいます。いまだに想像ができてないです、笑。

けんちん
この中廊下型の共用廊下もポイントですね。

松本
これがクロスのヒントてことですか?ますます謎が深まりますね・・!

松本
玄関の脇に階段があるタイプなんですね。でもこの階段、共用廊下に向かって延びてますが、
つまり・・・?

けんちん
そうなんです。2階は、共用廊下の上を通って、お隣さんの上階がこの部屋の2階になっています。そしてお隣さんの2階がこの真上にあるので、まさに「クロスメゾネット」となっています。

松本
これはすごい・・!つまり、中廊下型の住棟なのに、東西軸の両面に窓があるということですね。

けんちん
よくできてますよね、ただ騒音のクレームの時に上階の人がうるさいと思ったら向かいにお住まいの人に文句を言いに行くので若干頭がパニックになります、笑。

松本
確かに、笑。でも水回りが常に共用廊下の上にあるので、メンテナンスも水回りの下から目視でできるのでいいですね。これは想像以上に画期的ですよ・・!

けんちん
喜んでもらえてよかったです。昭和50年代の団地は、多種多様な間取りのプランが検討された時期で、このクロスメゾネットもそのハイライトの一つですね。

松本
個人的にもメゾネット住戸が好きで、MUJI×URでも2プランほど作ったのですが、どれもプランニングするのが楽しかったですね。なぜか名古屋(水草豊成)が多くて。

けんちん
メゾネット住戸以外にも屋外空間に魅力がたくさんあるので行ってみましょう。

松本
外から見ている時は、一般のマンションタイプの団地でそこまで緑豊かな屋外空間がないように思えましたが、そんなことはなかったですね。とても豊かな屋外空間です。

けんちん
このジャングルジムも最近では見ないですよね。事故に対する懸念や、安全基準が高くなったことで撤去されることが多く、このように綺麗な状態で残っているのも貴重ですね。


松本
せっかくなので登ってみましょうか。
子供の頃はすいすい登ってましたが歳とると怖いですね。

けんちん
でもここからの景色は最高ですね。黄色がまた緑の中で映えます。
さらに奥の方にも素敵な遊具があるので行ってみましょう。



松本
こんなところに改札機が!?

けんちん
これは危険な自転車やバイクに乗ったままの通り抜けを防ぐために設置されています。

松本
なるほど。いたる所に阪神電車との連携が見られるんですね。


けんちん
さて次に見えてきたのが広い人工地盤ですが、ここで毎年夏祭りが行われているんです。

松本
ステージもありますね。5000戸を超える大型団地でのお祭りはきっと盛り上がるでしょうね。

けんちん
この先にはテニスコートもあります。テニスコート専用のクラブハウスもあるんですよ。


松本
クラブハウス付きの団地は初めてですね・・!しかも4面もテニスコートがある。

けんちん
団地住民の方はもちろん、周辺地域の方も利用できるのでまさに開かれた団地ですよね。

けんちん
先ほどのジャングルジムに続いて、今度はブランコです。8列×2setの16連続ブランコは見応えありますよ。

松本
ゴルフの打ちっぱなしの練習場みたいな雰囲気ですね、笑。

松本
こちらはまた電車繋がりで踏切の遮断機が設置されてますがあくまでオブジェでしょうか。

けんちん
この奥にある小学校跡地が今は商業施設の「ムコダンモール」として開業し、そのさらに先に「武庫川団地前駅」があるのですが、そこからの人の動線も変化して、それに合わせて団地内の動線周辺も整備されました。その際に電車にまつわるモニュメントが設置されたんです。

松本
武庫川団地の歴史に、この武庫川線は欠かせない訳ですね。


松本
電車のホームにある駅銘板には、「石の広場」と書かれていますね。

けんちん
はい、ここは「石の広場」として親しまれている場所で、あそこに見える7本の柱は建設当初からあるモニュメントだと思います。昔の公団の設計者はだいたい「給水塔」のデザインで遊んでいたそうなのですが、高層団地の出現で給水塔はその役目を果たし、設計者たちは、公園などの共用部分でデザインを遊ぶようになったようです。この石のモニュメントも設計者たちの遊び心なんでしょうね。


松本
このジャングルジムも遊び心満載ですよ。
中にちゃんと立てる空間があって秘密基地みたいです。

けんちん
こっちの山型の遊具も懐かしいですよね。鎖つきで。昔は色々な公園にありましたよね。
この傾斜の角度、今の遊具だと色んな意味でなかなか作れなさそう。


けんちん
小学校跡地が見えてきました。今は商業施設の「ムコダンモール」になっています。

松本
この壁も元校門跡をそのまま生かして残しているんですね。こういうの素敵です。きっとこの小学校に通っていた団地居住者の方にとっては大切な思い出の場所ですものね。

けんちん
これで団地の端までやってきました。いかがでしたか?

松本
いやーほんとに楽しかったです。これまでのお散歩ではどちらかというとゲストの方はあまり団地に関わりのなかったデザイナーや大学教授の方が多かったので、こちらが団地について解説することが多かったのですが、今回は完全にけんちんさんにご案内いただけて、それだけでも新鮮でしたし、初めて知ることもあって本当に勉強になりました。

けんちん
それはよかったです。これまで団地を文化にしたいと思って啓蒙活動をしてきて、最近ではオフィシャルでUR団地ツアーをするイベントも企画させていただいたりもしています。
今日は2人だったので、贅沢なマンツーマンツアーでしたね、笑。

松本
本当に贅沢な時間でした!個人的には、移動中にお聞きした団地とドムドムバーガーと電気風呂の関係の話がとても面白かったです、笑。(詳しくはこちら)全ての道は団地につながる訳ですね・・! これからもけんちんさんの活動を楽しみにしています。
今日は本当にありがとうございました。

けんちん
こちらこそ、ありがとうございました。

<ゲストプロフィール>
けんちん
団地愛好家 / 電気風呂鑑定士

1980年生まれ。会社勤めをしつつ、団地をカルチャーと捉えて団地界隈以外にもその魅力を発信する。団地のなかでも特に好きな市街地住宅タイプを解説するブックレット『ゲタバキ団地観覧会』(八画出版部)も出版。「団地は日本の原風景だ」を合言葉に、団地啓蒙活動にいそしむ団地愛好家集団「チーム4.5畳」メンバーでもある。

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