【団地ちょっとレポート】MUJI×URの設計者と歩く「芦屋浜団地」

MUJI×UR団地レポート | 2025.12.10

10月、真夏の日差しの厳しさが過ぎ去り、日中は過ごしやすい季節の香りを感じながら高層棟が建ち並ぶ「芦屋浜団地」にて、8回目のお散歩レポートは緩やかにスタートしました。

MUJI×UR団地リノベーションプロジェクトに関わって10年余り、全国70団地ほどでリノベーションに関わってきたMUJI HOUSEの松本と団地愛好家で電気風呂鑑定士のけんちんさんと、団地に深く関わってきた2人が兵庫県芦屋市に位置する団地のお散歩の様子をレポートします。

写真右から、MUJI HOUSE 松本、左は団地愛好家/電気風呂鑑定士のけんちんさん。

今回ご紹介する団地情報<芦屋浜団地>

兵庫県芦屋市にある芦屋浜団地は、ほぼ全住棟が超高層棟で1000戸弱が管理されている中規模団地。阪神本線「芦屋駅」からバス5分、徒歩3分ほど。

松本
今回一緒に団地レポートしていただけるのは、団地愛好家であり、電気風呂鑑定士のけんちんさんです。

けんちん
はじめまして。今日はよろしくお願いします!

松本
よろしくお願いします・・!私からすると、ようやくお会いできましたという感じです。いつもURさんからお話を聞いておりましたので、笑。(けんちんさんについて詳しくはこちら

けんちん
ありがとうございます。私の方もMUJIさんの取り組み、いつも拝見しております。

松本
そう言っていただけるのは、恐縮です。

松本
それでは早速ですが、芦屋浜団地のお散歩レポートを始めたいと思います。

けんちん
ではその前に帽子を、、これでけんちんになります。

松本
そういう仕組みなんですね、笑。便利ですね。

松本
芦屋浜団地は初めて来たのですが、この住棟群圧巻ですね・・!

けんちん
1979年に竣工ですから45年前にこんな先進的な団地ができたなんて驚きですよね。

松本
歩道橋に銘板が付いてますよ。確かに1979年竣工と書いてありますね。公団の名称もあります。

けんちん
ここに書かれているアステムという会社の元になったのが、建設当時、設計コンペで当選した企業連合のASTM企業連合でした。ASTMは新日本製鐵、竹中工務店、高砂熱学工業、松下電工、松下興産の頭文字なんですよね。

松本
団地の外から芦屋浜団地を見ている時はとても工業的で画一的な印象だったのですが、一歩団地の中に入るととても緑が多くて団地らしさが存分に感じられますね。

けんちん
そこはさすがURさんですよね。およそ10年前にサイン計画の改修も行っているそうです。

松本
カッコいいですよね。住棟の工業的なデザインとフォントが見事に融合しています。

松本
エントランス脇にあるサイン板の黄色のロゴはなんでしょう・・?

けんちん
芦屋浜の「芦」の一部に見えますね。実はこの裏に郵便ポストがあるのもまた景観を配慮していていいですよね。

松本
向かいのサイン板には、住戸番号とエレベーター停止階の見取り図がありますね。
これを見ると、24階建なのにエレベーターは4回しか停まらない・・!?

けんちん
おっしゃる通りで、5階ごとに横串に共用フロアがあり、まるで通常の中層階段室型5階の団地住棟をそのまま積み重ねたような構成になっているんです。なのでエレベーターも5階建の1階相当の階にしか停まらず、他の階へは登るか降りるかは自由という感じですね。

UR
本日、住戸の見学もできますのでエレベーターで22階まで上がってみましょう。

松本
ぜひぜひ!楽しみです。

松本
おーいきなり絶景ですね・・!

けんちん
これぞ芦屋浜って感じですよー。

松本
上から見る住棟も圧巻ですね。5階おきに共用空間があるのがよく分かります。
今気付いたのですが、高層すぎて洗濯物を干せないのが、逆に景観を損なわずに済んでいる良い例ですよね。

松本
足元に見えるのが先ほど緑を感じていた共用空間ですね。

けんちん
この緑の豊かな共用空間はURの強みであり、他の賃貸ではまずないですよ。

松本
5階おきの共用空間を内側から見るとこんな感じに見えるんですね。

松本
この共用空間は、空中公園!?ていうんですか・・!

けんちん
防災上の一時避難場所でもあり、コミュニティ広場でもある場所ですね。今は安全上の理由で撤去されていて無いですが、当時はこの空間に遊具があったのではないかと思います。まさに空中公園ですよね。

松本
そうだったんですね・・!22階の空中公園!凄すぎます、笑。

けんちん
それでは住戸に入ってみましょうか。

松本
中はいつもの階段室型の団地の感じで超高層とのギャップが、面白いですね。

松本
この壁にある機器はなんでしょう・・?

けんちん
これは芦屋浜団地ならではの地域熱供給による暖房システムですね。各部屋に暖房の空気が届くように、らんま部分に空調の吹き出しと、空気を循環させるためのスリットが付いてますね。

松本
このバルコニーからの眺めもいいですね。

けんちん
芦屋浜は、間取りのバリエーションはあまりありませんが、景色は住戸によって大きく違うのも特徴ですね。

松本
毎日こんな景色が眺められるなら、タワマンに住まなくてもいいかも、笑。

けんちん
まさに!ここからの眺めは山手側と海側の街の様子が一望できます。兵庫独特の山手側から順番に良い場所とされているけど、逆にこの海側から山側を見下ろす感じは、色んな意味でなんかいいですよね、笑。

松本
では住戸も楽しめたので、少し一階に降りてみましょうか。

けんちん
芦屋浜団地の感想はいかがでしたか?

松本
そうですね、色んな意味でこれまでの団地とは全然違うので、本当に新鮮でした。
団地とは思えないほどの景色はもちろん、洗濯物が外から見えないので本当に景観が美しく、工業的で画一的なデザインが、団地好き人間の一人としてたまらないですね。

けんちん
芦屋浜団地を楽しんでもらえてよかったです。
この年代を代表する名建築ですね。

松本
それでは次の「武庫川団地」に行ってみましょう。
けんちんさんもおすすめの「クロスメゾネット」があるそうでとても楽しみです。

<ゲストプロフィール>
けんちん
団地愛好家 / 電気風呂鑑定士

1980年生まれ。会社勤めをしつつ、団地をカルチャーと捉えて団地界隈以外にもその魅力を発信する。団地のなかでも特に好きな市街地住宅タイプを解説するブックレット『ゲタバキ団地観覧会』(八画出版部)も出版。「団地は日本の原風景だ」を合言葉に、団地啓蒙活動にいそしむ団地愛好家集団「チーム4.5畳」メンバーでもある。

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