【団地ちょっとレポート】MUJI×URの設計者と歩く「泉南一丘団地」

MUJI×UR団地レポート | 2025.9.26

すでに真夏の日々が続く7月下旬、今日も暑い一日となりそうな匂いを感じながら「泉南一丘団地」にて、7回目のお散歩レポートは緩やかにスタートしました。

MUJI×UR団地リノベーションプロジェクトに関わって10年余り、全国70団地ほどでリノベーションに関わってきたMUJI HOUSEの松本と、アンドデザインのプロダクトデザイナーの南出圭一さんと、大阪出身のデザイナー2人が大阪府泉南市に位置する団地のお散歩の様子をレポートします。


写真右から、MUJI HOUSE 松本、左はアンドデザイン/プロダクトデザイナーの南出圭一さん。

今回ご紹介する団地情報
・泉南一丘団地
大阪府南部に位置する、泉南市にある泉南一丘団地は、管理戸数約2,300戸の団地。JR阪和線「新家駅」から徒歩9~19分。

松本
それでは前回の「金剛団地」に引き続き、一緒に団地レポートして頂けるのは、アンドデザインのプロダクトデザイナー南出圭一さんです。

南出
まいど。引き続きよろしくお願いします。

松本
よろしくお願いします。改めまして2人の馴れ初めですが、南出さんは松本と同じく大阪出身で、岡山県立大学デザイン学部の先輩でかつサッカー部の先輩で全然頭が上がらない人です笑。

南出
前回の「金剛団地」でもそうでしたが、次の団地も楽しみにしています。

松本
今回の「泉南一丘団地」は松本も初めて行く団地なので、どんな団地なのかとても楽しみです。

松本
早速見えてきましたが、住棟妻側にかっこいいロゴのサインが見えます。京都の観月橋団地の頃からこのパターンをよく見ますが、横文字を入れるだけで一気に印象が良くなりますね。

南出
確かにオシャレな感じがする。
それに、前回の「金剛団地」と違って団地の建物高くない・・?

松本
ここ「泉南一丘団地」は高層棟がメインの団地になっていますね。
この時代の住棟のエレベーターは8階建てでも乗降階がスキップフロアになっていて、4階と7階にしか停まらないんですよね。外観からでも確認できますが、共用廊下が4階と7階にしか見えないです。

南出
本当だ・・!何でそんな風になってるんやろ?

松本
当時は乗降階を制限することで効率性を重要視していたんだと思います。

南出
本当だ、一つ上がるか下がれば必ずエレベーターに乗れる仕組みなんやね。

松本
あと、非停止階にもメリットがあって、共用廊下がないので、共用廊下側から覗かれることがなくプライバシーを保てることができます。人目を気にせず窓を開け放つこともできますし。

南出
「金剛団地」に続き、また新しい住棟の型を知ってしまった・・・色々あるんやね。

松本
それでは、団地の奥の方に行ってみましょうか。
この団地は緑が多くて今日みたいに暑い日も自然と木陰を作ってくれますね。

南出
午前中よりも午後の方が涼しく感じるのはそのせいかな。あと、海も近いせいか風も吹いて木陰の下は本当に気持ちいいね。

松本
あそこのちょっとした公園に黄色いメッシュのベンチがありますね。座面がメッシュだから下から植物が突き出しているのが面白い笑。リアル「座るのを拒否する椅子(岡本太郎)」ですね。

南出
でも、メッシュのベンチって座面や背もたれが汚れる面積が少ないから、汚れを気にせず座りたい気になるやん。やっぱり「座りたくなる椅子」なんじゃないの?笑

松本
確かに・・!座面の面積が少ないから真夏でもそこまで熱くならないですね。よくできてます。

松本
あっちに見える5階建ての住棟は各階共用廊下ですね。エレベーターがエキスパンションジョイントだったので、後から改修してエレベーターを付けたのかもですね。最初から共用廊下がある場合は、エレベーターが一箇所で済むので改修しやすいと思います。

南出
そっちのパターンもあるんや。ほんまに色んなパターンがあるな。。

南出
それにしても本当に木陰が多くて、暑い日でも散歩がしやすい。

松本
あの角にあるベンチもいいですね。
交差点に沿って円弧を描いたベンチは交差点に人を滞留させて、新しいコミュニティの場所になりそうな可能性を感じますね。井戸端会議的な。

南出
あっちの公園には木を囲ったベンチがあるよ。だいぶ年季が入ってるな、、やっぱりメッシュのベンチの方が圧倒的に座りたい気になるな・・。

松本
確かに。これは時間によって木陰の位置が変わるから360度ベンチなんですかね?笑。

南出
今度はすべり台。「金剛団地」にも同じようなすべり台があったな。

松本
住棟をバックにすべり台があるのは団地ならではですよね。ちょっと滑ってみましょうか。

UR
この先に、メゾネット住戸のお部屋が今回見学できるのでご案内できたらと思います。
高層階からのオーシャンビューの眺めも良いので是非。

松本
ぜひお願します。メゾネット住戸、大好きなんで笑。さらにオーシャンビュー!

南出
本当に眺めがいいね。確かにオーシャンビューやわ。
関西国際空港が見えるねー、連絡橋も。あっ飛行機も。

松本
反対側は山も見えますよ。だいぶ近いですね、高野山かな。
海と山、両方がこんなに近くに見えるのは大阪の南に位置するからなんでしょうね。

UR
それでは、メゾネット住戸の中にもどうぞ。

松本
お邪魔しますー。住戸のバルコニー側は目の前が森ですね。緑が豊か。
さらに海も見えますね。明るくて風通しがいい団地の良さに溢れる住戸ですね。

南出
あっリビングに階段があるよ。メゾネットって、そういう意味ね。
2階に行ってみよう。

松本
MUJI×URでもいくつかメゾット住戸のリノベーションを行っていて、名古屋が多いのですが、関西でメゾネット住戸を見るのは初めてですね。でも元型式の間取りはすごく似ています。

南出
階段を登った突き当たりはトイレかな。建具がかわいい。

松本
あの角が丸くなった建具はパネル工法の間仕切りでよく見るタイプのものですね。工場で間仕切り壁ごと建具を作っているから、現場での施工も効率的に行えたんじゃないですかね。

南出
団地ってそういう工場で作るプロダクト化したところがたくさんあるんやね。

松本
あっ!2階の収納の中、見てみてください!やばいですよ。こんなところに玄関ドアが・・!

南出
えっどういうこと・・!?

松本
もしかしたら元々、上階下階が別々の住戸として設計されていたものを後から設計変更しているのかもしれないですね、、名古屋のメゾネット住戸もそうでした。もしくは後からまた2つの住戸としても使えるように玄関ドアも残しておいたのかもしれないですね。いずれにしても、知らずに収納を開けて玄関ドアが出てきたらびっくりしちゃいますよね、、違う世界への扉みたいで笑。

南出
笑。なんかそういう雰囲気あるしね。

松本
メゾネット住戸、堪能できました。ありがとうございます。
それではまた改めてお散歩を再開しましょうか。

松本
あっ、外に出たらいきなり発見してしまいましたね。。

南出
マンホールがどうかした?

松本
団地マニアではよく語られる、URさんの前身の日本住宅公団時代のマークが入ったマンホールです。この風車マークは「住宅・都市整備公団」時代のものですね。

南出
へーそういうところを見てるんやね。

松本
あっちの角にはちょっとしたベンチが。
ここも井戸端会議的な使われ方がされてきたのかもですね。

南出
こっちの遊歩道はすごい雰囲気があっていいやん。
この時間はほとんどが木陰になっていて、本当に涼しい。

松本
いいですね。さらにこの先にはトンネルがありますよ。これも「歩車分離」が整備されている団地あるあるで、上は車だけが通り、下は人だけが通るので、この背の低いトンネルをよく見かけます。以前散歩をした「落合団地」にもありましたよ。

南出
この遊歩道があるだけで、団地全体の価値が上がっている気がするくらい良い道やね。

松本
あっ今日は屋上の工事をしているんですかね。屋上に職人さんが。電気工事かも。

南出
団地って屋上に上がれるんやね。どこから上がるんだろ、足場もないみたいやし。。

松本
階段室の最上階の天井にタラップがあって、そこから梯子で上がれます。ちなみに僕も屋上に上がったことありますよ。もちろん、ちゃんと許可を得てですよ笑。

南出
公園もたくさんあるし、良い団地やね。あの壁の横に絵が描いてあるのは?

松本
このお散歩企画の中でも良く見かけるのですが、実は、ある一定のルールを見つけまして、公園や広場の前にある住棟の壁によく描かれていますね。
さらに、あのカルガモの親子は特によく見かけます笑。ゾウとかキリンも。

南出
だいぶ歩いてきたけど、ここが団地の最終地点かな。
少し地形の作りが他とは違う感じがするな。。

松本
確かにこの小高い丘とか、まるで遺跡みたいですよね。大阪の南の方は特に遺跡も多いですしありえますよね。ここは違うかもしれないけど。

南出
ここに置かれているベンチはオフィシャルのものなのかな。これもまた他とは違うね。

松本
ほんとですね。明らかに現代のアウトドアに寄せているようなストリートファニチャーですね。
キャンプ場とかにあっても良さそうな。

松本
こういうストリートファニチャーがあると、団地の屋外空間と室内が切れ目なくつながっているように感じますね。MUJI×UR共同開発パーツでも「つながるベンチ」というものがあって、外に居ても家の中に居るように過ごせるような家具の設えにしています。

南出
アンドデザインでも家の中でも外でも使える家具のデザイン、ブランディングの仕事を行っているんだけど、どっちでもちょうどいい「家の中と外を行き来(イキキ)」するという意味で「IKIKI」というブランド名にもなってて。

松本
いいネーミングですね。団地の敷地もまさに、団地に住んでいる人にとっては、家の一部ですし、そう考えると家賃以上の価値がそこにはあるような気がしてきます。

南出
今回は本当に面白かったよ。団地にこんなに色んなパターンの住棟があったなんて・・

松本
楽しんでもらえてよかったです笑。ありがとうございました。最後にあそこの木陰の下にあるメッシュのインフィニティチェアで休んでいきましょう。それにしても暑かった。。

※夏場に団地を散歩する際は、こまめに水分を補給しながら、休憩をしながら行いましょう

<ゲストプロフィール>
南出圭一
アンドデザイン株式会社 / プロダクトデザイナー
1976年生まれ。岡山県立大学デザイン学部工芸工業デザイン学科卒。国内、海外メーカーで約17年間、通信機器や家電のデザイン開発に従事した後、アンドデザイン株式会社(http://anddesign.jp)に参画。プロダクトデザインを中心に素材開発やアウトドア家具ブランドの立ち上げなど幅広いプロジェクトに携わる。また2022年から自社発のオリジナルブランド「LIFEWORKPRODUCTS(http://lwps.jp)」の企画デザインも行っている。グッドデザイン賞ベスト100、IDEA賞、IF賞など国内外の受賞多数。

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