
【団地ちょっとレポート】MUJI×URの設計者と歩く「金剛団地」
MUJI×UR団地レポート | 2025.9.19
すでに真夏の日々が続く7月下旬、今日も暑い一日となりそうな匂いを感じながら、MUJI×URのプランもある「金剛団地」にて、7回目のお散歩レポートは緩やかにスタートしました。
MUJI×UR団地リノベーションプロジェクトに関わって10年余り、全国70団地ほどでリノベーションに関わってきたMUJI HOUSEの松本と、アンドデザインのプロダクトデザイナーの南出圭一さんと、大阪出身のデザイナー2人が大阪府富田林市に位置する団地でのお散歩の様子をレポートします。
写真右から、MUJI HOUSE 松本、左はアンドデザイン/プロダクトデザイナーの南出圭一さん。
今回ご紹介する団地情報
・金剛団地
大阪府富田林市にある金剛団地は、関西でも最大級の約5,000戸が管理されている大規模団地。南海高野線「金剛駅」から徒歩10分ほど。バスの利用も便利。
松本
今回一緒に団地レポートしていただけるのは、アンドデザインのプロダクトデザイナー南出圭一さんです。
南出
まいど。今日はよろしくお願いします。
松本
よろしくお願いします。南出さんは松本と同じく大阪出身で、岡山県立大学デザイン学部の先輩でかつサッカー部の先輩で全然頭が上がらない人です笑。
南出
まあ、キャンプ仲間ですね。最近は笑。
松本
ですね笑、よろしくお願いします。
松本
それでは、ここ金剛団地の「銀座街商店街」からスタートしたいと思います。
なんせ、この時期のお散歩レポートなので、完全にキャンプ仕様できました。
南出
半ズボンに帽子で仕事できるのはいい企画やね。
松本
早速、素敵なカフェがありますよ。
UR
ここは、地域住民の居場所づくりを目指して開設された、多世代が集い、活動ができる「わっくCafé」というコミュニティ拠点になります。こちらは日替わりでカフェを営むオーナーになることもできます。店内には、ボックス内で手作りの品などを販売するコーナーもあります。
南出
この棚ですね。確かに貯金箱もあるね。
ここに代金を入れることで販売することができる仕組みなんやね。
松本
こっちの棚には、QRコード決済の表示もありますよ。
こういう地域住民参加型のカフェいいですよね。運営を手分けすることで継続性が生まれる。
UR
商店街から少し離れた場所にも、富田林市とUR都市機構が共同で設置する金剛地区魅力向上拠点がありますので、そちらをご案内したいと思います。
UR
こちらが「∞KON ROOM(コンルーム)」と言います。地域住民の方や学生が、テレワークや自習室として使うことが可能です。子どもも大人も自宅以外で利用できる共有スペースとなっています。
松本
あっ、メダカも売っていますよ・・!ペットボトルでメダカ売れるんですね笑。
いい場所ですね。ではそろそろ本格的に団地お散歩始めましょうか。
南出
ほんと暑いね今日は・・・汗
松本
ちなみに今日は37度だそうです・・・汗
南出
向こうの方に特長的な建物が見えてきた。
松本
あれは、ポイントハウスですね。
このお散歩レポートでも毎度お馴染みの住棟です。
近くまで行ってみましょう。
南出
あれやね。確かにあんな形の団地みたことないわ。
松本
UR団地ではよく見かける住棟で、1フロアに2住戸だけなので、360度窓があって本当に風通しと日当たりがいいので人気がありますね。傾斜地に建てる上でも経済的な形をしています。景観のアクセントを目的にしているからポイントハウスっていう名称なんですね。
南出
団地って全部一緒だと思ってたけど違うんやね・・!初めて知ったよ。
松本
団地内を散歩すると、建設当初の設計者がランドスケープで表現したかった意図に気づいたりします。
それでは、ここからもう少し丘の上の方の住棟まで行ってみましょう。
南出
この住棟の1階の入口の横にあるのは何やろ?
松本
これは昔のダストシュートの跡ですね。昔は5階に住んでても階段を降りることなくゴミを捨てられたそうですよ。1階のここにバスケットが格納されていて。ある意味今よりも革新的だったんですよね。今はどこの団地も廃止されていますが。。
南出
向こうに見える住棟の壁についているのはなんだろ?あれもダストシュート?
松本
あれは、リアルに煙突跡だそうですよ。先端に焦げたような跡がありますね。。
昔はまだゴミ収集場に持っていく仕組みが都心部以外では整っていなかったので、住棟の横に小型焼却炉があってそこで燃えるゴミは燃やしていたそうですよ・・!
南出
まじで?今だと考えられないね・・!
松本
確かに小学校の頃とかは、まだ学校にも小型焼却炉があったような・・・昭和ですね。
さらにここから、あの上の方の住棟まで行ってみましょうか。
南出
だいぶ高い位置に住棟が見えるね。景色は良さそう。
松本
なんか楽しみですね。
南出
これはまじでいい景色・・!
松本
見渡す限り団地ですね・・!さすが約5,000戸を管理する大阪でも最大級の団地ですね。
一つの街を形成しているのがよく分かります。
南出
この丘の上はちょっとした公園にもなっていて大きめの遊具もあるし、気持ちいい空間やね。
松本
この階段の横のスロープにチェーンが付いてますよ・・!ここも公園の遊具の一部なんですかね?今だとこの角度と距離のスロープは作れないですからね。。
しかも太陽に熱せられて、鉄のチェーンがめちゃ熱くて持てない笑。
UR
この丘の上の住棟にMUJI×URの住戸のお部屋もあるので是非行ってみませんか。
松本
ちょうど募集中の住戸があるんですね。それはラッキーですね。
南出
MUJI×URの部屋は実物を見たことがないので楽しみやわ。
松本
久しぶりに金剛団地のMUJI×URの住戸にやってきました。金剛団地では2つのプランを展開していて、Plan12とPlan37ですが、このお部屋はPlan37の方になります。
南出
この半透明の引き戸いいね。アンドデザインでもこういう半透明の素材をよく使うんだけど、見た目からも素材の軽さや空気感を感じるよね。
松本
これは「半透明ふすま」と言って、光を通すふすまになっています。暗くなりがちな玄関などで使用することで玄関を明るく保つことができます。MUJI×UR共同開発パーツの一つです。
南出
このキッチンのシンクのディテールすごいね・・!
松本
はい、「組合せキッチン」というのですが、メラミン天板のキッチンでこれだけ洗練されたディテールで作れるのはなかなかないですよね。
南出
このシャープさ、良いよね。どうやって仕上げているの。
松本
通常メラミン天板の下にシンクがつく場合(アンダーシンク)だと天板の厚みが2cmほどになるのですが、組合せキッチンは、メラミン化粧板の2.5mmほどの薄い仕上材とステンレスをシンクの角で接合しているため薄く仕上がり、とてもシャープな印象になっているんです。このメラミンとステンレスシンクの角の接合部分は工場で一つ一つ、職人さんが手作りで磨いて作っています。
南出
なるほど・・!すごいね。
こっちにあるのは、ダンボールのふすま?
松本
はい、その名も「ダンボールふすま」です。MUJI×URの空間に欠かせないパーツの一つです。
松本
その他、建築的なところでは、この元々押入だった部分を光と風が通り抜けるトンネルにして、賃貸でも住む人が自由に使える余白として残すのもMUJI×URの設計手法ではよく行います。
南出
賃貸でも自由にできる部分欲しいよね。ふすまで閉じたらテレワークスペースになりそう。
松本
MUJI×URでは主に4階、5階の住戸をリノベーションすることも多いのですが、最上階の眺めはやっぱりいいですね。ここからも団地全体が見渡せます。
南出
住棟間隔も広いし、目線を気にすることなく窓を開けれるのもいい。緑が多くて、都心だとまずあり得ないような光景やね。贅沢すぎる。。
松本
団地の良さを全面に感じることができる眺めですよね。
UR
それでは次に、最近共用部が整備された街区の方に行ってみましょう。
先ほど散歩していた街区とまた違った印象になると思います。
松本
では行ってみましょう。
南出
ここからスタートですね。確かにサイン看板も綺麗に整備されている。街区内のサインに植栽の案内サインまであって、まるで団地そのものが公園のようやね。
松本
1Fエントランス前も全然違いますね。先ほど見たダストシュート跡はすっかり撤去されて、代わりに新しい苗木が植えられていますね。足元のグランドカバーも今っぽいですね。
南出
遊歩道もお散歩コースのように綺麗に舗装されてる。
松本
ここのベンチ周辺は意図的にデザインされていますね。雑草でボーボーにならないようになっているんですかね。
南出
遊歩道沿いにこういうベンチがあるのはいいよね。
南出
あっなんかすべり台があるね。上になんかサイン看板が、、なんだろう?
「PLの塔と花火が見えるスポット」みたいやね。
松本
あーほんとですね。PLの塔が見えますね。昔は実家の阿倍野からもPLの塔が見えててよく実家のマンションのベランダから花火大会を見てましたよ。すごかったなぁ。。
南出
すべり台の後ろにあるちょっとした広場にも足元に遊具?かな?
松本
けんけんぱ的な?新しく整備したのかな?元々あったものを活かしたのかもしれないですね。
南出
あっちの住棟も特長的な形をしてるね。階段室がかっこいい。
松本
これもよく傾斜地に建っているのを見ます。階段室が住棟と住棟の間にあって上下に少しずつずれながら雁行している住棟ですね。階段室の前後の空間が抜けているのが印象的です。
南出
ポイントハウスだけじゃないんやね。一つの団地にこんなに色んな形の住棟があるなんて。
松本
ですよね。団地好きじゃないとまずそこまで気にしないですからね笑。
最後に団地の中心部にある「金剛中央公園」に行ってみましょう。
南出
かなり大きい公園やね。緑もたくさんあって、階段を降りると野球場があるやん。
松本
ほんとですね。この野球場越しに団地住棟が見える景色がなんともエモいですね。
あの住棟の5階はきっと特等席なんでしょうね。
南出
俺らはサッカーしてたけど、昔は野球が不動の人気スポーツやったもんね。
松本
ほんとそうですよね。でも最近はメジャーでも活躍する選手も多いし、野球の人気は不滅ですね。日本の団地の普及は戦後だけど、日本の野球の歴史は戦前からですからね。この風景も、団地が先に建ったのか、野球場が先にあったのか分からないですね笑。
南出
最後にいいもの見せてもらった気がしました笑。
松本
それでは次の「泉南一丘団地」に行ってみましょう。
大阪の南、和歌山の手前の泉南市にある、海も山も見える団地だそうですよ。
<ゲストプロフィール>
南出圭一
アンドデザイン株式会社 / プロダクトデザイナー
1976年生まれ。岡山県立大学デザイン学部工芸工業デザイン学科卒。国内、海外メーカーで約17年間、通信機器や家電のデザイン開発に従事した後、アンドデザイン株式会社に参画。プロダクトデザインを中心に素材開発やアウトドア家具ブランドの立ち上げなど幅広いプロジェクトに携わる。また2022年から自社発のオリジナルブランド「LIFEWORKPRODUCTS」の企画デザインも行っている。グッドデザイン賞ベスト100、IDEA賞、IF賞など国内外の受賞多数。